予報とは裏腹の雨模様に、一度は退却を決めるが、西から近づく青空にほだされて再び楽古林道へ。生々しい台風の爪あとを、通りすがりのパジェロに導かれて乗り越え、なんとか山荘到着。
コイボクシュメナシュンベツ川に沿って、しばらく造林道跡を行く。渡渉すると夜半の雨の影響か、水勢が強い。出発の遅れを取り戻そうと、知らず知らずのうちに急ぎ足になってしまう。
曇天のもと、くすんだ紅葉を見せる広い河畔林の巻き道を進む。530二股にはテープがあるが、不覚にも下流部分の地図を忘れた為確信をもてない。上方は何も見えないが、40m登ると二股に分かれているので安心する。左股が今日のコースだ。
楓の鮮やかな赤が映える。コイボクシュメナシュンベツ対岸斜面の上空では、低い雲が凄い速さで東へ流れている。雪崩か洪水が多いのか、細いカンバばかりが目立つ沢に沿って淡々と標高を上げる。
雨の後だからだろう、枝沢にも水が溢れる。
760から800までは赤茶けたゴーロの下に伏流の音が響く。840からは、源頭まで一直線に刻まれた谷が見上げられる。樹林が一切見られない、海外を思わせる珍しい谷だ。青空ならさぞかし気持ちよかろう。が、今日は1200付近から上はガスで隠れ、おまけに谷底から烈風が吹き上げる。
900過ぎで一箇所美しい滑滝を越える。夏なら直登しても楽しそうだ。風が水しぶきを下から体中に叩きつけるので、冷えて仕方がないし休む余裕もない。
1040では水量豊富な右股に入り、1200で水を汲む。詰めは丈の低いハイマツとササを縫うのでさしてきつくはないが、風から身を隠す術がないので登り続ける。南東コルからハイマツをかき分け、十勝ピークに立つ。少しは風を除けられる。朝よりはましだが、相変わらず雲は低く、楽古は見えたり隠れたり。北の眺望はピリカまでがようやっと。
南下を始めても次から次へと低い雲。カンバ主体の低潅木に混じって1200程度でも見られるハイマツは、冷涼な稜線の環境を物語っている。トレースは途切れ途切れで、適当にかき分けて進む。
1268手前で、やや尾根が細くなり、岩混じりとなる。冬は油断できないだろう。1200を切ると背丈を越えるササ原で、登りだったら苦労しそうだ。
1080の最低コルは風の通り道。強烈な西風に煽られ、傾いた裸地に幕営する気にもなれない。かと言って他にあてはない。思案した結果、行動停止を17:30に決め、前進。最悪ビバーク覚悟だったが、登り返して間もなく1150にわずかな緩傾斜地を見つけ、安堵のため息。風もなんとか除けられる。
鹿の鳴き交わす物悲しい声が風に乗って耳に届く。低い雲は結局、日没まで切れなかった。満点の星空はその報いか。
背中が一番高い体勢だったが、暖かかったのでよく休めた。今日も薄曇り。朝焼けは外したが、風が止んでくれて有り難い。
D沢源頭付近まで、低いササ帯だが、鹿道のお陰で比較的歩きやすい。
1230には昨日よりは平坦な適地がある。最後はハイマツの中をだらだら登って1285へ。雲行きが怪しい。下山までもつかどうか。
1231まではこの標高にして高山気分満点の岩稜帯。気分を良くして登りにかかるが、1300辺りまでハイマツを主体とした低い薮が結構鬱陶しい。札楽古尾根Jに至る最後の登りは少し楽になる。振り向くと、ピリカに雲がかぶさりそうだ。
4年ぶりとなる楽古の頂きから、南望を満喫する。標高が落ちてもハイマツが続いているのはさすがだ。カンバ、ミズナラ、カエデと下るに従って樹種が遷移し、紅葉に追いつく。広い河畔林を逍遥しながら、山荘に戻る。秋空にくっきり十勝岳が聳えていて、少し悔しかった。
('02/10/5〜6)
写真上:秋色の滑滝 中:無風の幕場から 下:十勝の勇姿