- 小麦粉
小麦粉の一番大切な役目は、パンの骨格を形成することです。
小麦粉は、小麦に含まれるたんぱく質の量によって、強力粉、中力粉、薄力粉の3種類に 分けられます。このたんぱく質が水を吸って捏ねられることにより、粘りと弾力性が 出て、網状にのびたグルテンという網膜組織が生まれます。たんぱく質が多く含まれると グルテンの量も比例して増えるため、それだけ強い組織を作ることが出でき、生地の膨張 も大きくなります。このグルテンを形成するたんばく質が小麦粉特有の成分であり、ライ麦粉や米粉、 大麦、トウモロコシ等にはないため、それらだけではふっくらしたパンはできないのです。
パン作りには主に強力粉が使われますが、ソフトなタイプのパンにはたんぱく質の少ない薄力粉を混ぜて 口当たりを柔らかくすることもあります。
注意:小麦粉は匂いを吸いやすいので、保管には注意が必要です。温度は、20℃が 最適ですが、風通しのより日影に置いたほうがよいでしょう。
- イースト
イーストは、パンを作るときには不可欠のものです。イーストは、植物に 属する菌類の微生物で、生地中の糖類(でんぷん、砂糖、ブドウ糖など)をアルコールと炭酸ガスに 変えます。これがパンの「発酵」で、このとき発生する炭酸ガスによってパン生地が膨らみ、アルコールや副産物 は香りとしてパンの風味になります。
イーストは、生イースト、ドライイースト、インスタントドライイーストに分けられます。
生イーストはパン用酵母を純粋培養して圧縮したものです。冷蔵庫で約2週間くらい保存できます。
ドライイーストは、生イースト製造の最終段階で乾燥させて顆粒状にしたもので、使用前に5〜6倍の水でもどして 使います。使用量は生イーストの半分の量でよいでしょう。
インスタントドライイーストは、粉に直接混ぜ込んで使用できる細粒状のドライイーストです。発酵力が強いので、 使用量はドライイーストの8割、生イーストの4割でよいでしょう。
イーストが活動できる適温は、25〜35℃で、4℃以下では活動を停止し、60℃を超えると死滅するので、発酵時の 温度監理や仕込み水温に注意が必要です。
- 食塩
パンを作るときの食塩の役割は、特に重要で、適度の塩味と香味を与えることや、 生地を安定させる効果、また生地中の雑菌を抑制する効果もあります。食塩を入れなくても パンは作れますが、香りが悪く、無味でまずいパンになってしまいます。
- 水
水は、パンを作るときの基本材料の1つで、水がなければパン生地を作ることができません。 パンを作るのに適した水は、やや硬水で、弱酸性がよいとされています。アルカリ性の強い水で パン生地を作ると、パン生地発酵や秒長に直接的に影響を与えてしまいます。イーストは、弱酸性の 環境下で、自らの活性を最大とするからです。また、酸性の強すぎる水でパン生地を作ると、パン生地の 酸度を増し、発酵を著しく促進させてしまいます。日本の水は、パン生地に影響を与えるほど、鉱物質を 含んでいないので、ほとんど使用できます。
- 砂糖
砂糖は、パンに甘味をつけるほか、イースト自身の栄養源となるので発酵を助け、パンに焼き色をつけます。 焼きあがったパンは、砂糖の保湿性によって水分が蒸発しにくくなるため、老化防止の 効果もあります。上白糖はグラニュー糖よりも保湿性が高いのでパン作りに向いています。
- 油脂
パン作りに使われる油脂は、バター、マーガリン、ショートニング、ラード、オリーブオイル等が ありますが、バターやマーガリン、オリーブオイル等のように個性の強い油脂を入れた場合、油脂の 味や風味がパンに直接反映されます。油脂には、生地に味や風味を加えるだけでなく、伸展性ををよくする 役割もあります。伸展性のよいパン生地は、オーブンの中でもよく膨らむので、パンのボリュームが大きく なります。そしてボリュームが大きくなれば、オーブンの内でのパンの火通りも良くなり、焼きあがった パンがふっくらと香ばしくなります。また、でんぷんが含んでいる水分が蒸発する(パンの老化)のを防ぐため、 油脂の配合が多いパンは比較的日保ちがします。
- 乳製品
牛乳に含まれる乳頭の糖質が、パンの表面に鮮やかな焼き色をつける働きをします。また、パンの香りや風味を よくする作用もあります。
種類としては、以下のものがあります。
・全乳:一般に牛乳と呼ばれるもの。低温殺菌のものは、加熱してから使うこと。 ・粉乳:粉乳の製法には、牛乳を濃縮して130℃の加熱空気の中にスプレーする方式と、 100℃に加熱したローラー、またはドラムに流す方式がある。 ・全脂粉乳:牛乳から水分だけを除いたもの。 ・脱脂粉乳:牛乳から脂肪と水分を除いたもの。 牛乳の代わりに使う場合は、牛乳の約1割の量でよい。 ・ホエ―パウダー:牛乳からチーズを取った残りを乾燥させたもの。 ・練乳:牛乳の水分を一部除いたもの。無糖練乳(エバポレートミルク)、 と加糖練乳(コンデンスミルク)がある。