私は偽善者です。犬猫を飼ったこともなく、普段から動物愛護のために
何かしていたという訳でもありません。今回行きがかりで捨て猫を拾ってしまい
結局助けてあげることもできませんでした。
この猫達にとって、どうしてあげるのが最善だったのでしょうか。同じような
境遇の動物を再び見つけた時、一体どうすればいいのでしょうか。
今回ネットを通じて多くの人に助けを求め、色々な助言や意見をもらいました。
本当に、本当に感謝しています。
貴重なご意見を無駄にしないためにも、そして今後少しでも何かの役に立てばと
思いこのページを作りました。
2001/4/10 北田博之 (kitada@dp.u-netsurf.ne.jp)
4月6日金曜日、22時。
会社の帰りにいつも近道で公園を抜けて帰るのですが、何やら猫の鳴き声が
聞こえました。子猫で、何匹かいるようです。結構近くにいるようなのですが
見当たりません。
「ん、まさか?」と思いゴミ箱の辺りを見てみると、小さな手提げの紙袋が
置いてあります。恐る恐る覗いてみると、いました。それこそハムスターくらいの
大きさの子猫が4匹。まだ目も開いていません。
「見てしまった・・」という気分でした。私にはどうすることもできないのは
重々分かっています。これまで(飼えない環境だったこともあり)犬猫などは
飼ったこともなく何をどうするかなども全く分かっていません。ただひとたび飼うと
決めた場合、その責任が重大であることは承知しています。誰か飼い主を探すことが
難しいことも分かっています。
でもどうしたらいいのか分かりません。見なかったことにして立ち去るのが
一番なのでしょうか。とりあえずこの日は、ゴミ箱からは離して少しでも
目に付きやすいところに移し「誰かに拾ってもらえよ・・」と願いながら
帰りました。
4月7日土曜日、16時。
ずっと気になって仕方なかったので、公園まで見に行ってしまいました。
「誰かに拾ってもらってるのを確認して、安心しよう。」そう願っていました。
でも、猫はまだそのままでした・・・。ミーミー鳴いてるので通り掛かりの
人も気付くようで、ちらっと覗き込んではいるようです。でも、やはり誰も
拾ってはくれません。
私も、拾ってあげることはできません。でも、来てしまった以上そこから
離れることができませんでした。通りがかる人に声をかけては「何とかして
あげられませんかね?」と問い掛けました。
帰ってくる答えは「かわいそうやけどな・・・」「ホンマひどい飼い主やな」
そして「保健所に連絡するしかないな」でした。
その間心当たりに片っ端から電話もかけました。「知り合いで誰か生まれたての
子猫を飼える人を知らないか」と。
「どうにもできひんやろ。早く立ち去るべき。」「どうしてもというなら、
安楽死させてもらえるようにでも・・。保健所だとひねっておしまいやし。」
厳しいけれどもまっとうな意見です。
19時を回ったころから日も落ち、肌寒くなってきました。昨日よりも寒い
感じです。人通りもなくなってきました。
私には責任を負えません。でもどうしたらいいか分かりません。情が移るのが
怖くて子猫には触れませんし、極力見ないようにしています。
悩みに悩んで決めました。心を鬼にしてその場を立ち去りました。
「ごめんな」
でも少し落ち着いてから帰ろうと、小さな飲み屋に入り熱燗を
一本飲みました。全然酔えません。
「もしかしたら誰かが拾ってくれたかな」とおおよそ考えづらい
希望を持って、また公園に戻ってしまいました。
あれ?
紙袋が倒れています。
もしや、と思い近寄って覗き込んで見てみると、中身は空っぽでした!
「誰かが拾って帰ってくれた!」安堵の気持ちで一杯になりました。
でも、その次に見た光景に私は言葉を失いました。
子猫が路上に散らばっています。
誰かがぶちまけたのでしょう。
私はパニックになりました。時刻はもう21時です。冷たい地べたに
置かれた猫に触ってみると冷たくなっています。
か細い声で鳴いてるやつもいます。
「このままでは今すぐ死ぬ!!」猫を紙袋に戻し、もう何も考えられず
そのまま連れて帰ってしまいました。
途中で迎えに来てくれた知人が「気の済むようにしろ」と毛布を引いた
段ボールとミルクを用意してくれました。
とにかく暖めないと。
ペットボトルにお湯を入れて、4匹をひっつけました。それまで
動いていなかった2匹もピクピクと動いてくれました。4匹ともまだ
生きてる!でも瀕死の状況に変わりありません。
暖めながら、順番に脱脂綿でミルクをあげました。一応電子レンジで
人肌くらいに暖めたつもりです。
飲んでくれているのかいないのかもよく分かりません。比較的
元気なやつは舌でペロッと舐めたりしてくれるので飲んでいるようです。
ぐったりしてはいますが、2匹はしっかり動いています。だんだん
動きも大きくなってきたようです。
あとの2匹のうち1匹は体をよじったりはいずり回ったりと元気です。小さい
くせにでっかい声でミーミー鳴きます。こんな小さな体でよくここまで頑張った
もんだと感動しました。あと1匹も、か細い声ですが鳴き続けています。
4月8日、0時。
ぐったりしていた片方が死んでしまいました。
大きく口を開けて、苦しそうな表情で死にました。
4月8日、2時半。
もう片方も静かに死んでしまいました。
見たくなかった光景です。情けないけど涙が出ます。
残りの2匹は、30分置きくらいにしばらく鳴き続け、
また静かになります。鳴きやんでいる時間が長いと
死んじゃったんじゃないかと気が気でなく、一時も
気が休まりません。
鳴いたらミルクをあげます。
その間はとにかく里親探しです。夜中なので電話は
使えません。とにかく知人という知人にメールを書き
(携帯メールには勿論送りません)、関連する掲示板や
メーリングリストに里親募集をします。
あとはWebでの情報収集です。産まれたばかりの
子猫の世話をすることは想像以上に大変なことだと
いうことを思い知らされました。
3時間に1回ミルク。自分で排泄できないので手助け
してあげる。体温調整もうまくできないので保温に
気をつける。などなど。(母猫がいればぜんぶやって
くれます・・・・)
そんな子猫達が公園にあんな長時間野ざらしにされて
いたのかと身震いしました。
こうなると分かっていたんであれば、もっと早くなんとか
してあげたかったと悔やまれました。
でも、実際まだ飼う覚悟はないんです・・・。どう考えても
飼えません。でももうギリギリです。何かしないとこの子たちは
すぐにでも死んでしまいそうです。
私が子猫達を連れ帰ったのは間違いだったのでしょうか?
どうすれば良かったのでしょうか?
ただ無責任な飼い主を恨みました。
ペットを捨てた場合の罰則が最近かなり厳しくなったらしいですが、
まさかそれを知った上で、あえてゴミのように捨てたのか?
そうでなければ、目も開いていない子猫をタオル1枚入っていない
紙袋に入れてゴミ箱の横には捨てられないでしょう。
4月8日、7時。
か細い声で鳴いていた1匹の声がだんだん苦しそうになり、やがて
静かになりました。涙が止まりません。
でも、あと1匹は元気です。相変わらず小さな体に似合わない
大きな声でミーミー鳴いてバタバタしています。
この子だけは何としても生かしてあげたい。でも、もし里親が
見つからなかったら・・・。独り暮らしで仕事勤めの身で、3時間
おきにミルク、排泄、そして体温調整なんて世話が出来る訳が
ありません。
絶望、安楽死という言葉が頭をよぎります。
4月8日、正午。
近所のスーパーに、館内放送で子猫の飼い主を探して貰えるように
できないか懇願するが無理。それはそうですよね。
とりあえず脱脂綿、スポイト、ミルク等の買い出し。本当は子猫用の
専用のミルクが必要なんですが置いていないため、「猫の飼い方」の
本に載っていたというミルクを作る。
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牛乳250ccに、卵黄1個とティースプーン4杯の砂糖を加えたものを
人肌にしてスポイトで与える。子猫は敏感で熱くても冷たくても飲まない。
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「牛乳を与えると下痢をするので子猫用のミルクは専用のものを」と
あちこちのサイトに書いてありました。
専用ミルクはこの日の午後に調達。
とりあえず残った1匹は元気そのもの。箱の中をとにかくはいずり回り、
ミーミーと鳴いてはミルクをねだります。
手のひらにうつぶせに乗せて、ミルクを飲ませてやるとおとなしく
なります。そしてそのまますぅすぅ寝てしまいます。自分の手の中で
安心して寝ているこの子を安楽死なんてさせられません。完全に
情が移ってしまいました・・・・
しかし、今晩も夜通しでこの子の世話ができるでしょうか?明日は
仕事もあります。もちろん里親探しは続けていますし、1カ月でも
預かってくれる所があればその間に次の手を何とか・・・・
4月8日、15時。
見かねた近所の知人が翌日(月曜)の晩まで預かってくれることと
なりました。私も体力的・精神的にかなり参ってきていたので、心苦しくも
その申し出にすがりました。猫を飼ったことがあるというので心強いです。
4月8日、16時。
見晴らしの良い、近くの小高い丘に3匹の子猫を埋めてあげました。
4月9日、0時。
預かってもらった方から何時間かおきにメールを貰う。「鳴いたので
ミルクをあげたら手のひらでおとなしく寝てます。でも毛布に戻すと
また鳴きます」「クゥーと寝息(?)を立ててよく寝ています」「手のひらを
近づけると登ってきます。ママが恋しいんでしょうか」など。
少しでも早く里親に出さないといけないという気持ちと、できるなら
この子をずっと自分で育ててやりたいという気持ちが錯綜する。
とにかく思いつく限り里親探しの手を打ってこの日は寝る。翌日は
また徹夜になるだろうから備えないと。
4月9日、2時半
夜中だというのにミーミー鳴いてミルクをねだったとのこと。
4月9日、5時半。
苦しそうな鳴き声になり、ミルクを飲まなくなる。
(ここで動物病院に連れて行っていれば・・・・)
4月9日、9時半。
私の家に戻る。もうかすかに動く程度・・・。
どうして?昨日はあんなに元気やったのに・・・
4月9日、10時。
私の手の中で死んでゆきました。
知人の目もはばからず泣いてしまいました。
4月9日、11時。
先に逝った3兄弟に寄り添うように埋めてあげました。
残った粉ミルクをかけて土をかぶせ、墓碑の代わりにほ乳瓶を置きました。
助けてあげられなくてごめんね。
ごめんね。