
●概説
『忍者龍剣伝』は、1988年にテクモから発売された横スクロール型のアクションゲームです。 主人公は、若き忍者、リュウ。父の死をきっかけに悪の陰謀に巻き込まれた彼は、一族に伝わる秘伝の 龍剣を手に、たった一人で巨大な敵に立ち向かっていきます。
抜群の操作性に支えられた軽快でテンポの良いアクション、華麗なグラフィック、思わず口ずさんでしまう ノリの良いサウンド、という“良いアクションゲーム”の要素を完璧に揃えた、まさに傑作、と言っていい 作品ですが、何と言ってもこのゲームを特徴づけているのはステージ間に挟まれるムービーシーン(シネマDISP. )。今でこそ全く珍しくないストーリーデモですが、当時のアクションゲームにおいては、 エポックメイキング、と言って良いほど画期的な事でした。
現代アメリカ――というリアルな舞台設定にミステリアスなストーリー、そして鮮烈な忍者アクション。 良質のアクションとストーリーが見事な計算のもとに調和した結果生まれた、ファミコン史上に其の名を刻む (と管理人は勝手に思っている)傑作アクションゲームです。
STORY●
吹きすさぶ風の中、月光の下で睨み合う二人の忍者の姿があった。
走り寄る二つの影が空中に舞い交錯したその刹那、閃光とともに勝敗は決した。ハヤブサ家の党首、ジョウ ・ハヤブサの敗北だった。
父の死を聞き駆けつけたリュウ・ハヤブサは、父の置き手紙を見つける。
そこに書き残されていたのは、ハヤブサ家秘伝の龍剣を携え、アメリカに住むドクター・スミスを尋ねよ という言葉だった。
果たして、父を殺したのは何者なのか――?
ドクター・スミスはいったい何を知っているのか――?
数々の疑問を胸に抱きながら単身アメリカに渡ったリュウを待ち受けていたのは、渦巻く野望と、突如 襲いかかる謎の敵、そして、謎の美女。
宿命の戦いが、今、その幕を開ける。
現代アメリカと忍者のミスマッチ。
『忍者龍剣伝』の物語の“掴み”は、この一点に尽きます。「突然の父の死」や「謎の敵」、「秘伝の剣」 などの諸要素は、シネマDISP.の演出の巧さに光るものこそあれ、プレイヤーを物語に引き込むのにそれ程 インパクトのある物ではありません。
しかし、ここまで基本的な要素を揃えた所で、「忍者、アメリカへ」。
これは強力です。
更に賞賛すべきなのは、インパクト(うけ)狙いでも伊達や酔狂だけでもなく、物語の舞台がアメリカ である事が後のストーリー展開に活かされて来る事です。当時、中盤からのCIAの登場には度肝を抜かれ ました。そしてそこまでやってなお、近代兵器vs忍者、という構図にせずに敵に怪物や怪人を多く配置し、 物語をファンタジーの枠に留めているのも、見事。
忍者もの・現代・アメリカ・でも敵は闇の軍団
ミスマッチにミスマッチを重ねている事で、見事に『忍者龍剣伝』という世界観を成立させているのです。 例えば時代が現代でも、舞台が日本でならば、ゲームの世界では安っぽい印象になってしまうのが事実です (まあそれでも良質のアクションゲームにはなったでしょうが)。また、現代アメリカが舞台でも、敵が テロリストか何かでは、おそらく中途半端に冴えない物語となった事でしょう。現代アメリカを舞台にして おきながら敵が超自然の類に入るからこそ逆に、異質感が映えるのです。それは勿論、主人公リュウを含めて なのですが。
『嘘』という物はあるレベルを越えると、その世界観における真実味を増します。リュウの敵が怪物や怪人 であるからこそ、リュウという存在の強さがプレイヤーに受け入れられるわけです。そして忍者はやはり、 孤独に戦うものなのです。
物語全般においては、その諸要素の構成も見事ながら、洋画を意識したような“ちょっと大人の”展開が 目を引きます。バーに現れる謎の美女に始まり、CIAの登場やその長官とのやりとり、そしてちょっと苦味の あるエンディングなど。またその謎めいた物語は、先の展開へと興味を引く魅力充分。
知らず知らずにぐいぐいと引き込まれ、とにかく話を進めたくて必死にコンテニューを繰り返す事になります。
●簡素にして軽快なアクション
ゲームの基本アクションは以下の通り。
移動(十字ボタン左右)、しゃがみ(十字ボタン下)、ジャンプ(Aボタン)、攻撃(Bボタン)、忍術 (B+上ボタン)。
加えて、リュウは垂直な壁に貼り付く(ジャンプで壁に接触)事が出来ます。更にそこから壁蹴りジャンプ (A+十字ボタン壁と逆方向)でより高い位置へジャンプ可能。これを利用して、通常のジャンプでは届かない 位置へ移動します。
ファミコン時代ですから、操作方法が比較的簡素なのは当然といえば当然なのですが、特筆すべきはその 操作性・キーレスポンスの良さ。アクション、それも忍者アクションと来れば、何はなくとも動きが スピーディーで無ければ面白みは半減といって良いと思うのですが、実に小気味良く、しゅたっ、しゅたっ、 と動いてくれます。ついでに言うと、ジャンプや着地時の、効果音も良い感じ。
また、壁に貼り付き、そこから更にジャンプする、というのは実に忍者らしい動きといえ、操作に慣れて きてこれを軽快に出来るようになると、かなり気持ちよいのです。
忍術に関しては、ステージ中のアイテムを取る事で、4つの忍術を選択。各忍術に消費パワーが決まっており、 このパワーもステージ中のアイテムを取ることで増加します。敵を一気に蹴散らすも良し、速やかな攻略に 利用するも良し、かなりプレイヤーなりの使い方で自由に幅があります。
基本は簡素ながら、そこから多彩なアクション・攻略を導き出せる。それが、このゲームの大きな魅力の 一つと言えます。
なお、難度に関してはかなり高く、繰り返しプレイを要求される事になるでしょう。ただし、無限コンテ ニュー&敵の出現パターンを完全学習可能ないわゆる“覚えゲー”なので、クリアの可能性は、ある意味、 根性次第。絶対的な反射神経や極めて難解な操作などは要求されないので、パターンさえ極めれば、クリア する事が可能なのです。……その、パターンを極めるまでは、大変ですが。
とはいえ、敵の出現パターンといい落下すると即死の穴の位置といい、ステージ構成が非常によく出来ており、 必要以上に嫌な造りにはなっていません。スピードに任せた忍者っぽい動きで突き進む事が可能で、慣れて くればまさに“忍者と一体”の華麗なアクションを体感、自らの指で演出できるようになります。この 爽快感に到るまで、の造りが秀逸。
……結局それが、“良いアクションゲーム”の一つの要点なのですが。
面数は六つで、慣れれば1時間程度でクリアできるようになります。
華麗なるシネマDISP.●
ストーリーを重視し、視覚効果を追求した、より劇的なゲームシリーズ、と銘打たれたテクモシアター シリーズの第2弾である今作(ちなみに第1弾は『キャプテン翼』)。
その特徴の第一であり、この作品を最も特徴づけているのが、ステージの幕間に挿入される、絵と台詞に よるストーリーデモ、シネマDISP.です。上下をカットした横長の画面に、 キャラクターのアップやカメラ移動的なアングルなど、映画的な演出手法を取り入れたビジュアルが映し出され、 それに台詞と音楽が加わって、物語をより鮮烈に、より印象的に描き上げます。
もはやこれに関してはまさに“見てもらうしかない”のですが、とにかく演出のうまさが光ります。
突然の敵を倒して息をつくリュウのアップ。
動かした視線の先に謎の女。
そして女の顔を映していたカメラが下へ移動していくとそこに――!
魅力的なストーリーを、より魅力的にする演出で盛り上げる。アクションゲームの中に『物語』という 要素を強く押し出した本作のまさにキモ。そして、キモの名に恥じない、見事なグラフィック、 カメラワーク、サウンドの調和。それが、シネマDISP.なのです。
当時の『龍剣伝』スタッフの技量には、あらゆる面で驚異すら感じます。
それまで、ただステージを次々とクリアしていくだけの物だったアクションゲームに、“障害を突破し 『物語』を進めていく”という要素を与えた発想力、それを子供だましの付け足しに終わらせない映像美と 演出力、そして、アクションステージ→ストーリーデモ→アクションステージ、という繋ぎによって成立 するシステム的な緩急。
あらゆる要素が見事な調和を果たして一つの芸術とすら言える出来映えになっている本作の、屋台骨が硬派 かつ絶妙なアクションであるとしたら、その表面を決して派手すぎる事なく飾り立てるものこそが、この シネマDISP.なのです。
●総括〜1+1+1=10にもなる〜
出来の良いアクションゲームというだけでなく、美しいグラフィックシーンの入るゲームというだけで なく、演出の巧いゲームというだけでなく、全体としてのゲームシステム、ゲームの姿が見事に調和して 完成されている。
本作はそんな希有なゲームです。
例えばアクションシーン。かなり難度が高く、繰り返しプレイを要求される事になりますが、基本的には “覚えゲー”なので、何度死んでも立ち上がれば立ち上がるほど、確実に先に進んでいけます。そして、その 繰り返しプレイをさせる原動力になるのが、謎をはらんだ物語なのであり、アクションゲームの“解く” 楽しさを味あわせてくれる絶妙なバランスなのです。
また、物語をより興味深くさせるのがその見事な演出であり、その持続的な緊張の緩急が、アクションステージ とアクションステージの間を絶妙につなぎます。
そして、見事な名脇役を務める絶品のサウンド!
思わず口ずさんでしまうノリの良さと、場の雰囲気との調和を兼ね備え、アクションステージ・ビジュアルシーン、 そのどちらでも物語を盛り上げてくれます。まさに古き良きアクションゲームの奏でる名品の調べ。
このような完成度の高さを誇り、また、この後、多くのアクションゲームに“ストーリー性とビジュアル シーンの挿入”という形で影響を与えた本作は、まさにFCアクションゲームの一時代に燦然と輝いた傑作 と言って良いでしょう。
『忍者龍剣伝』
出来れば是非一度、手に触れていただきたい作品です。