邪鬼王が倒れてより半年――。
事件の事後調査をしていたアイリーンが突如、消息を絶つ。
アイリーン殺人事件の犯人として指名手配された男の名は、
リュウ・ハヤブサ。
ヨミの一族が闇の中に潜み未だ時を待つ中――
もう一つの邪悪が、龍の忍者の前に姿を現そうとしていた。
これは、リュウ・ハヤブサのもう一つの闘いの物語である。
忍者龍剣伝3

●概説

 『忍者龍剣伝3〜黄泉の方舟』は、1991年にテクモから発売された横スクロール型のアクションゲームです。
 『忍者龍剣伝』・『忍者龍剣伝2〜暗黒の邪神剣〜』に続くシリーズ第3作であり、シリーズの完結編と 銘打たれています。
 システムは前2作と同じ。
 横スクロールのアクションステージと華麗なるストーリーデモが交互に展開し、ミステリアスな物語と ノリのいい音楽がそこに彩りを添えます。
 操作性、グラフィック、音楽、アクション、ストーリー。全てが高水準でまとめられた良作であり、 傑作シリーズの一本にふさわしい完成度となっています。

STORY●

 龍の忍者と邪神との戦い――通称『邪鬼王事件』が終結してより半年。CIAのアナリストである アイリーン・ルゥは、その事後調査として、ある研究所に向かっていた。
 山間に隠れるように建てられた謎めいた研究所。そこに忍び込んだアイリーンは、信じられぬ男の姿を 見る。青い忍び装束に身を包んだ男の姿……それは間違いなく、リュウ・ハヤブサ。
 「この研究所で行われている事を知られたからには生かしてはおけない」
 刀を振るい、襲いかかるリュウ! 必死に逃げ出したアイリーンは岸壁に追いつめられ……そして、崩れた 崖とともに彼女は遙か眼下の海上へと落下した……。

 ――それより数日後。
 リュウ・ハヤブサは、アイリーンが消息を絶ったとされる研究所を目の前にしていた。アイリーン殺害犯 として指名手配されたその網の目をかいくぐり、自らの手で事件の真相を突き止める為に。
 そして、アイリーンの仇を討つ為に。
 哀しみと怒りを胸に、今、龍の忍者が立ち上がる。
 その目前に立ちふさがるのは、忌まわしき闇の香りを身に纏った、新たなる異形の敵だった。


 突然のアイリーンの死。指名手配。そして秘密の研究所――。
 多くの謎をはらんで始まる物語は、オープニングからプレイヤーを引きつける魅力に溢れています。
 果たしてアイリーンを殺したのは何者なのか? 研究所で行われている実験の正体は? そしてリュウの 前に姿を現す、恐るべき敵。
 言うなれば、正調忍者ヒーロー物。
 そこに前2作の間を埋め、また『忍者龍剣伝』という大きな物語の基幹となっている設定が組み込まれ、 非常に骨太な物語を構成しています。『忍者龍剣伝』という物語を補完しつつ、新たな魅力の一面を見せてくれる ――そんなストーリーであるといえます。
 また、基本的にシリーズ物の一本であり、前作と関係しているキャラクターの登場などもありますが、単独でも 充分に魅力的な忍者アクション物の素地は持っているといっていいでしょう。

●その心は、シンプルにしてベスト

 操作方法は以下の通り。
 十字ボタンで左右移動・しゃがみ。
 Aボタンでジャンプ。Bボタンで龍剣による攻撃。上+Bボタンで、ステージ上でアイテムを入手し、 所定の忍術パワーを消費する事で使える忍術を発射。
 また特殊移動法として、壁に向けてジャンプする事で壁貼り付き。その状態から十字ボタンで壁に貼り付いた まま上下動する事が出来ます。そしてパイプに掴まった状態で、A+上で、パイプの上側に。また、その 状態からA+下で、再びパイプに掴まった状態に戻る事が出来ます。
 この特殊移動により、華麗かつ軽快に、そしてなにより“忍者らしく”上下の動きを行う事が出来ると いうわけです。本作のアクションはとにかく、この忍者らしさがポイントと言えます。 単純かつ明快な操作で、とにかく軽快に動き回れる。
 シンプル・イズ・ベスト
 そんな事を感じさせてくれるアクションです。

 リュウの攻撃をサポートする忍術は全部で5種類。
 真っ直ぐに飛んだ後にブーメランのように戻り、それを飛び越える事で更に後ろ側へも飛んでいき、また 戻ってくるという動きを繰り返す「風車手裏剣」
 衝撃波によって上下を攻撃する「真空波」
 前方斜め上へ向けて炎の波動を飛ばす「炎波の術」
 前方斜め下へ向けて電撃の弾丸を飛ばす「火龍弾」
 そして、自分の周囲の炎の輪を張り巡らして一定時間無敵状態になる「火炎の舞い」
 これらは全て道中のアイテムによる選択制で、同じく道中のアイテムによって増加する忍術Pを消費する 事で使用できます。

 基本はシンプル、そしてオーソドックス。だがそれ故に、ゲームの忍者らしさ が追求されている。
 明快なる一点集中。
 それこそが、今作のアクションの特徴といえます。

アクション、そしてドラマ●

 アクションステージは全部で7つ。
 謎の研究所、足下をすくう流砂の海、風ふきすさぶ空中戦艦……と多彩なステージがリュウを待ち受け ます。
 難易度は比較的低く、アクションゲームが得意とはいえない方でも、それほど苦労せずにクリアする事 は可能だと思われます。
 各面を彩る華麗なグラフィックとサウンドは今作でも健在。
 “プレイしていて思わず口ずさみたくなるようなBGM”は、数多いアクションゲームのサウンドの中 でも、トップクラスの出来といって良いでしょう。

 また、ステージクリア後にはストーリーデモが挿入されるのですが、演出・画力ともにハイレベルで、 プレイヤーを物語の世界にぐいぐいと引き込みます。
 色数や画質こそ近年の作品に比べれば見劣りするものの、その“魅せる”演出の力は今でも十分な魅力を 持っています。

●目覚めよ龍神剣

 アクションの派手さに関してはシリーズ屈指を誇る今作ですが、その最大の特徴はなんといっても基本攻撃 のパワーアップ『龍神剣』に尽きます。
 ステージ中でアイテムを取る事によって、リュウの基本攻撃である龍剣がパワーアップ。刃の先にエネルギー 波のようなものが生じ、刀の間合いのちょうど二倍。更に、しゃがむ必要なく、下方への攻撃まで可能と します!
 もともと龍剣の攻撃範囲はそれ程広くないので、とにかくこの爽快感はかなり気持ちの良いものです。
 まさしく、ばったばったと薙ぎ倒す感覚を楽しむ事が出来ます。
 本作の攻略においては、この『龍神剣』発動アイテムを如何に確実に入手するかがポイントとも言えます。

パスワード制●

 システム的な大きな特徴として、パスワードが存在する事にも触れておきます。
 ゲームオーバー時に出てくるパスワード(記号4つの組み合わせ)をタイトル画面で入力する事によって、 ゲームオーバーになったステージの最初から始める事が出来ます。
 とはいえ、それ程長くもなく、また無限コンテニュー制で何度でもやり直せるゲームなので、それ程に 利用価値はないのですが……。ただ、慣れるまでは詰まった面があった場合、いつでもそこからやり直しが 利くという意味で、親切な設計とはいえるでしょう。

●総括〜進化の終焉、そして輪は巡る〜

 良く出来たアクション、良く出来た音楽、良く出来た操作性、良く出来たグラフィック、良く出来た システム、そこそこの難易度…………質の高いアクションに、プレイヤーを引きつける魅力的なストーリー の融合。
 その結果生まれた、完成度の高い良質のアクションゲーム
 本作を簡単にいえば、そうなります。
 テンポが良く操作も平易なアクションは爽快に進み、合間に挿入されるストーリーデモが気分と意欲を 盛り上げる。音楽もグラフィックも質が高く、アクションゲームが苦手でもどうにか進む事の出来る難易度。 それでも駄目ならいつでも詰まった所から再挑戦可能なパスワード制。
 FCアクションゲーム最後期を飾った、至れり尽くせりの『豪華幕の内弁当』
 アクションゲームを好きな方から初心者の方にまで、比較的安心してお薦めできる……それが、この ゲームの一つの姿です。説明書にかなり細かい前作のストーリー紹介が載っているので、例えばシリーズ 前2作をやらずにこれだけをやっても、それなり以上に楽しむ事が出来るでしょう。

 ……さて、このゲームにはもう一つの姿があります。
 『忍者龍剣伝』というシリーズの中における、シリーズ第3作、としての姿です。
 このゲームの面白い所は、そういった視点で見た時に、上に挙げてきた長所がそのまま短所に成りかねない 性質を持っている事です。“何処に出しても恥ずかしくない完成度の高いアクションゲーム”……しかし、 “ただそれだけ”
 そう、確かに完成度は高いのです。基本的に、ゲームとして文句をつける所はほとんどありません。だが それらは全て、過去のシリーズで積み上げられた物の踏襲であって、本作独自の要素はほとんどない。また、 難易度の劇的な低下により、やり込み要素も減じてしまっている。
 前2作をプレイした上で、更なる高みを求めるプレイヤーにとっては、何とも食い足りない作品。
 それが本作のもう一つの姿です。
 だが、面白くないわけではない……では、この“食い足りない作品”の位置づけとは、シリーズの中で どこにあるのでしょうか?

 初代『忍者龍剣伝』は、極めて緻密で完成されたアクションとエポックメイキング的なストーリーデモの 融合により生み出された歴史的傑作でした。その流れを受けた『2』は、アクションゲームとしてのマニア化も 恐竜的進化のどちらも否定し「演出」をクローズアップした傑作でした。
 そしてこの『3』は、『2』同様の流れの中でアクションの複雑化をする事無くこれまでのシステムを 完全に踏襲した上で難易度の大幅な低下という選択肢を取りました。
 そこにある意図は、「間口の拡大」ではないかと思うのです。
 初心者に優しいパスワード制、説明書における詳細な前シリーズの解説……第3作にしてそれをする意味 があるのかどうかはわかりませんし、あくまでもシリーズ作品ですから前2作をクリアしていないと楽しみ きれないのも確かです。
 けれど今作のストーリーは前2作の間を埋めるという形式である事も含め、本作独自の流れの中 で完結しており、また、楽しむ事が可能であると言えます。
 シリーズのファンにとってはサービスおまけであり、初めてプレイする人にもそれなりに楽しめる物語。
 この意味する所は、今作の本質が、二重の意味での『忍者龍剣伝』の補完に あるのではないかと私は考えます。
 すなわち、ストーリー的補完と、プレイヤー拡大という意味でのゲーム的補完。
 個人的な話になりますが、実は私がシリーズ3作の中で初めてクリアしたのはこの『3』です。それから 遡って『1』と『2』をクリアしました。難しくて投げ出していた『1』と『2』を再び プレイする気にさせてくれたのです。
 物語のあるゲームであるからこそ、今作をクリアした時に、やり残した前シリーズの物語が気になって 仕方がなくなった。そして、難易度が下がっていようがどうしようが、一度でもクリアした、という実績 は人に自信と意欲を持たせます。そしてまた……自分自身で買っていなかったとしても、かつてどこかで 触れて記憶に残っていたゲームを、もう一度手に取る事が今よりも簡単な時代でありました。
 ファミリーコンピューターという、長いスパンで起動していたハードが背景にあったからこそ出来た、 シリーズの補完的作品。それが、今作の第三の姿なのではないかと、私はそんな風に考えます。

 それが、ゲーム造りの姿勢として正しいのかどうかはわかりませんし、全ては私の推測に過ぎません。 ですが、難易度を大幅に低下させたこの『3』が、シリーズ全体に与えた影響は決して少なくなかったと、 私は信じたいのです。

 最後にもう一つ、シリーズそれぞれの特徴を簡単に言うと……『1』は「緻密さ」、『2』は「演出」で ないかと思うのです。とすると3は何かといえば……「娯楽性」なのではないかと私は考えます。 難易度を大幅に減じる事で生まれた、これまで以上の突き進む爽快感。そこに見た目も威力も派手な龍神剣 が加わり、ストーリーも加速的な盛り上がりを見せて最後はいかにもな大勝負。
 制作当時の意図がどうかは知りませんし、今、この時になって振り返って言える事なのですが……そう 考えると、この『忍者龍剣伝』のシリーズ3作はお互いにお互いのゲーム性を補いながら、好きな部分を プレイヤーの意志で選んで出来るゲームなのではないかと。
 私はいつもどうしても、シリーズの中で「どれが一番好きか?」という質問に答える事が出来ないのですが、 それはひとえに3本全てが『忍者龍剣伝』でありながら、それぞれ独自の魅力を持っているからに他なり ません。
 先に『忍者龍剣伝』の紹介文の総括で、ゲーム中に盛り込まれた要素を取り上げて「1+1+1=10になる」 と書きましたが、このシリーズ総体にも同じ事が言えるのかもしれません。
 3本の作品それぞれが一流のゲームでありながら、全てを通してみる事で、より大きな魅力を持つ。
 仮に意図的ではなく、結果的にそうなったのだとしても、その意味は大きいと思います。希有な傑作 アクションゲームであると同時に、希有な傑作アクションシリーズであるという事は。
 ……最後に長々と、シリーズ全体の話になってしまい、失礼しました。『忍者龍剣伝3』というゲームが そういう事を書かせるゲームだという風に、御理解御寛容いただければ幸いです。また、今作だけをプレイ した事があるという方には、是非ともシリーズの前2作を、手にとっていただければ非常に嬉しく感じます。 3本全てに触れていただきたい、そんな、ゲームです。

よろしく哀愁

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