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学校に到着すると、コートの入口には真田が腕組みをして立っていた。
柳が軽く手を上げながら声を掛けると、真田はものスゴい早足でこちらに向かって来る。
「守備はどうだ、弦一郎?」
「ああ、蓮二…、こっちが幸村 だな…?」
柳への挨拶は程々に、真田の視線はすぐに幸村へと絞られる。
「やぁ、真田」
幸村はニッコリと挨拶を返した。
ふわりと花が咲いたような笑顔。
その瞬間、バチン!という大きな音が響く。
…真田が自分で自分の頬を叩いた音だった。
「どうやら現実のようだな」
確かめるような真田の独り言がもれ、柳と幸村は顔を見合わせて苦笑する。
「ところで、弦一郎。指示した件はどうだ?」
「あ、ああ。学校への届け出は蓮二の言う通りに済ませてきた」
例の『表向き、幸村をマネージャーとして参加させる』という届けは受理されたらしい。
良かったなという意味をこめて、柳が幸村の肩をポンと叩いた。
その反対側の肩も真田が同じように触れてくる。
それに気付いた幸村は部長としての表情で言った…
「ご苦労だったな、真田」
その一言を発した幸村の雰囲気は何ともいえず。
可愛い姿と顔をして、燐とした表情を向けるのだ。
たまらないそのギャップ。
耐え兼ねた真田は、しゃがみこんで地面をバンバンと殴り始めた。
その様子を見た幸村は不思議そうに首を傾げる。
「なぁ、蓮二。真田…どうしちゃったの?」
「そうだな。老けて見えるが、弦一郎も中身は多感な少年だったということだろう」
地面を叩き続ける真田を横目に、二人は顔を見合わせて笑った。
「そろそろ他の連中も来る頃だな」
柳がそう言って腕時計を見ると、ちょうど柳生がやってきた。
「お待たせしました。合宿施設をもうひと部屋確保して参りました」
念のため幸村の部屋を別に用意しておこう、という任務を柳生が受けていた。
しかし、それを聞いた幸村はまたしても自覚なく不満気で。
「俺はみんなと一緒でいいのにな…」
「何を言っているのですか、幸村くん!あなたは今、女の子なんですよ!」
柳が口を出すまえに、柳生から軽いお叱りが飛び出す。
その言葉に『自覚を持て』と言われたことを思いだして、幸村は少し反省した。
同時に『もし、元に戻れなかったら…』
という想いも出てきて、幸村は俯いてしまう。
スカートを握りしめ、口唇をギュッと噛む。
その姿は可愛らしく、しかも頼りなくて男心を擽った。
「いや、あのっ、責めているわけではないのですよ、幸村くん!」
さすがの紳士も胸が高鳴ったのか、慌てて幸村を慰めようとする。
そんなオロオロとしている柳生の背後から冷やかす声がした…
「惚れんなよ、柳生」
声の主は、仁王。
髪をかきあげながら面白そうにニヤリと笑っている。
「なっ、何を言っているのです、仁王くん!ほ、惚れるだなんて…」
柳生は更に慌てた様子で眼鏡を上げ下げしながら振り向いた。
…が、既に人影はそこになく、仁王はあっという間に幸村の側に移動していた。
「ずいぶん可愛らしくなったのぅ、幸村」
そう言いながら幸村の姿に上から下まで視線を巡らせる。
絡み付くような、射ぬかれるような視線…
幸村は何故だか恥ずかしくて堪らなくなる。
「仁王っ、面白がってる場合じゃないんだよ!」
恥ずかしさを誤魔化すように幸村が声を上げた。
頬を赤く染め、困ったように眉を寄せる。
女の子なその反応には、いつもの迫力は見受けられない。
「そうじゃったの、スマンスマン」
仁王はそう笑いながら謝ると同時に…
「しかし何じゃ、こっちは随分
色気ないのぅ」
そう言って、幸村のスカートを遠慮なく捲った。
「!!!?…なっ、何するんだよ!」
幸村は慌ててスカートを押さえる。
幸村が穿いていたのはボクサーパンツ。
下着にまで気が回らなかったので、そのままなのだ。
すると、そこへ柳が口を挟んだ。
「安心しろ、手配はしてある」
「?…手配って、何を?」
いやな予感がして、幸村が恐る恐る尋ねていると、後ろから駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。
「わりぃ!遅くなっちまった!」
やって来たのはジャッカル。息を切らせて額の汗を拭う。
「ジャッカルか、ちょうど良かった。調達出来たか?」
「ああ、何とかな。でもキツかったぜ〜。いくら彼女にプレゼントとか嘘ついてもよぉ…」
ジャッカルはため息をつきながら、声をかけてきた柳に小さな荷物を手渡した。
そして、その荷物は幸村の元へ渡される。
「蓮二、なにコレ?」
「見れば分かる」
そう言われて幸村が荷物を開けると…
入っていたのは、女物の下着類。
しかもフリフリな可愛らしいものばかり。
唖然とした幸村は下着とにらめっこ状態で固まってしまう。
そんな幸村の姿を見て、ジャッカルが仕舞ったという感じの声を上げた。
「幸村!オマエ…む、胸、でかいな…買ってきたヤツ、サイズあわねぇかも」
女の子になった幸村は巨乳ちゃんだったのだ。
巨乳好きなジャッカルは心配しながらも、幸村の胸を凝視してしまう。
「なっ、なにジロジロ見てるんだよ!」
幸村は反射的に胸を隠すように、両手を交差させた。
その仕草は完璧に女の子である。
可愛い顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに胸を押さえる…
その様に、周りに居た一同は思わず息をのんだ。
「ちょっと…なんだよ、みんな…」
怪しげな視線を一斉に浴びた幸村は思わず後ずさる。
そんな幸村の手を仁王がさっと掴んだ。
「サイズが合うか試してみんといかんのぅ」
そう言って仁王は笑うと、幸村の手を引いて部室の方へと歩き出す。
歩きながら振り向いて、残ったメンバーに一言釘を刺した。
「オレが許可するまで部室には近づかんようにな。済んだら参謀に知らせるぜよ」
先手をうった仁王。
不適な笑みを浮かべると、早足で幸村を連れて行ってしまう。
この状況に真田は「けしからん!」と興奮していたが、柳が自分の指示であると話し何とか納得させた。
「弦一郎、柳生、ジャッカル。お前達は練習が始められるように整備を進めてくれ」
さらに指示を出し、柳は三人をコート内に入らせる。
そしてまだ連絡をしていない残りの二人、ブン太と赤也に電話をかけた。
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