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為になるお話その4
ひらひらひらり チョウは大好き

■ガよりもチョウ
日本には260種類のチョウがいると言われます。この数字はトンボよりはやや多い程度です。ではガの数はどのくらいかと言えば約4000種とも言われ、いかにガが多いか分かるでしょう。チョウもガも大きな違いは無いのですが、それにしてもチョウの美しさは、すべての昆虫の中でダントツであると言えましょう。

私達が子供の頃は、夏休みと言えば捕虫網を持って野山を駆け巡ったものでしたが、最近の子供が「網」とか、まして「三角かん」などを持っているのを見たことがありません。

チョウは噛みつくこともないし、鳴き声がうるさいわけでもありません。とにかく美しく優しい昆虫です。
もし皆さんの中でチョウに魅力を感じる人があったなら、是非チョウの図鑑をひとつ持っておかれることをお奨めします。植物と同じでチョウを覚えると山歩きがとても充実してきますよ。何しろ、見かけるやいなやビュンと飛んで行ってしまうわけでもありませんから、観察対象としてはとても優れた昆虫だと思います。

チョウにはまった人は、「迷蝶」との遭遇を期待するようになります。それは空を飛ぶ生物(例えば鳥)にありがちな行動パターンでもあるのですが、台風など気候の変化によって思いがけない場所で見られるチョウを必死で同定し、分かった時の満足感に酔いしれるのでしょう。
諸外国からやって来たチョウから、その国を思うロマンに満ちた空想は、体験した人でないと分からない不思議な魅力があるのです。鳴き声を覚えなくても良いということで、鳥よりも観察しやすいと言う人がいます。

■広島県のチョウ
チョウを分類すると、アゲハチョウ、シロチョウ、タテハチョウ、ジャノメチョウ、シジミチョウ、セセリチョウと大きく分かれます。中でもアゲハチョウの仲間は大型で縄張り意識が強いため、ひとつの空間では必ず1頭は見かけることが出来ます(チョウは1頭2頭と数えるのです)。
誰もがチョウと言えばギフチョウに関心があるようです。ちょっとした高い山なら5月の連休頃に見かけることができます。そしてウスバシロチョウはそのちょっと後くらいから出てきます。どちらもやや高い地域で見られるようです。

黒いチョウだけでも名前を頭に入れておくと、親近感があります。水たまりに群がるアオスジアゲハ、やタニウツギやクサギの花に群がるジャコウアゲハ、ヒヨドリバナにはヒョウモンチョウと花の時期に合わせていろんなチョウが舞っていることに気がつくことでしょう。

オオムラサキ

国蝶で知られるオオムラサキも県内では確実に見られるチョウのひとつです。
イチモンジセセリやチャバネセセリは茶色のまるでガのような地味なチョウですが、そのすばしっこさと精悍なスタイルは子供の頃から大好きでした。そしてシジミチョウの仲間がそっと羽根を開くと信じられない美しさです。まるで宝石箱を開けたような存在感を示します。

■食草を知ると
食草とはチョウの成虫が食べる花ではありません。成虫は水分の補給も含めて、花の蜜を長いストローを使って上手に吸っているのです。
つまり食草はチョウが幼年期(アオムシ、ケムシの時代)にムシャムシャ食べる草のことです。

ギフチョウの食草としてあまりにも有名なのが「カンアオイ」の仲間です。広島県ではミヤコアオイやサンヨウアオイが全般的に見られます。帝釈峡ではフタバアオイも食草であったという記録があるそうです。しかし残念ながら今では帝釈峡でギフチョウを見ることはありません。

ウスバシロチョウではムラサキケマン(ケシ科)が有名です。
しかしムラサキケマンに代表されるコリダリス(学名)の仲間は基本的には「毒草」です。タデ食う虫も好き好きと言いますが、チョウは平気で毒草を食べるんですね。

ウスバシロチョウ(吉本悟氏撮影)

モンシロチョウがキャベツやハクサイを食べることはご存知でしょう?チョウは熱帯から温帯にかけて分布しますから、暖かい広島県はチョウがたくさん見られるところなのです。島でチョウと言えばミカンの葉を食べるので嫌われてきました。害虫と呼ばれても仕方が無かったのですね。ミカンの仲間(ユズやサンショウも)が大好きなアゲハチョウは島ではトンでもない悪蝶呼ばわりされます。

このように特定の植物とチョウの関係を知ると、おのずからその保護の方法は決まってきます。
オオムラサキはエノキが大好物です。この幼虫は天使の羽根を背中に3対持って、とても可愛い顔(?)をしていますよ。チョウと食餌植物、幼虫の姿の3点をセットで覚えればあなたはすぐにチョウ博士です。

オオムラサキ(4令虫)とエノキの葉

■沖縄のチョウ
チョウを見るなら沖縄でしょう。
特に石垣島にはきれいなチョウがいます。代表選手は何と言っても「オオゴマダラ」、別名の「バカチョウ」「シンブンシ」はゆらゆらと風に任せて飛ぶ様子を表していますが、早い話、優雅に飛ぶと言うことです。特にサナギの美しさには圧倒されます、黄金色に輝いているのですから、最大級のチョウとしてその模様は抜群。

そう言えば、広島市森林公園のパピヨンドームの主役はオオゴマダラですね。次に多いのがカバキマダラ。
これはこれらのチョウが縄張り意識の少ないチョウであることを示しています。もしキアゲハやギフチョウ、オオムラサキなどを囲いの中に入れるとすぐ追っかけっこが始まるのです。

リュウキュウアサギマダラ
また石垣島で目につくのは「リュウキュウアサギマダラ」と「ツマベニチョウ」の美しさでしょう。年中花が見られるところですから、年中チョウも見られます。
沖縄にはチョウの博物館がたくさんありますから、是非出かけて欲しいものです。

■こだわりのチョウ
山野で見かけるととても嬉しいチョウと言えば、イシガケチョウでしょう。木の葉のような独特の姿は一度見たら忘れません。夏の信州ではクジャクチョウを良く見かけます。ギフチョウやオオムラサキはその中でも別格といえますね。
アサギマダラも花の蜜を吸っている時は、割とおとなしくしているチョウです。大型チョウばかりがチョウでも無いのですが、覚えやすいということでどうしても観察の対象になります。アオスジアゲハのように水たまりで良く見かけるチョウもいます。

深山で見かけるミヤマカラスアゲハは金属光沢の美しいチョウ、春の山頂ではヒオドシチョウが人なつっこく目の前を飛び交います。
運良く帽子にとまってくれたら、是非足の数を数えてみてください。タテハの仲間は4本なのです。昆虫の足は6本だと思いこんでた人は多いことでしょうが4本足のチョウはたくさんいますよ。
4本足のヒオドシチョウ

良く羽根がボロボロになったチョウを見ることがあります。縄張り争いのケンカの末のあわれな姿なのですね。外見からは想像出来ない気性の荒さを隠し持つタテハの類。
観察することで見えて来る物は昆虫の世界でも植物の世界でもとても新鮮です。
山歩きで出合うチョウの美しさがまた楽しみのひとつになることでしょう。

ミカドアゲハ
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