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為になるお話その7
野菊考−1 (白いノギクに誘われて)

■ミヤマヨメナの咲く小道

QJY153号でノギクについてお話したことがあります。
秋はキクがいい、とはっきり言っただけあって近辺の山歩きをしているといろんなノギクを覚えることができます。
ノギクと言っても春の高原に咲くセンボンヤリやタンポポもノギクとすれば、その種類もたいへんな数になりますから、少し区別するべきかもしれませんが。絞り込むとすれば秋に咲くノギクについて、とすべきでしょうか。
しかし、実際は県民の森の春の登山道に咲くミヤマヨメナを語らずに広島県のノギクの話はできないでしょう。
まずはその1回目として白いノギクについてお話しましょう。

ミヤマヨメナ(牛曳山)
山道を飾るミヤマヨメナの群落には誰もが魅了されます。キクの仲間は小さな花が集まってできているのですが、普通はその小さな花の付け根にがくが変化してできた冠毛と呼ばれる密集した毛があることに気づきます。例えば見間違いやすいノコンギクとヨメナはこの冠毛の多さで区別することがができます。ヨメナは冠毛が少ないのです。
ミヤマヨメナをじっくり観察するとこの冠毛がまったくありません。もっとも春に咲くので見間違うことはありませんが、冠毛はノギクの種を分けるのに役立ちます。
しかしヤマジノギクでは冠毛があったりなかったりしますから、ちょっと困ることになります。

■ヤマジノギクを見つけよう

ヤマジノギク(池ノ段)
冠毛は花が終わった直後にはっきりと存在がわかりますから、観察して見てください。
ヤマジノギクは別名アレノノギクと言って草原の中の日当たりの良い小道、つまり乾燥した荒地に見られるノギクです。花が開いていない時は紫色が強く、どんな花が咲くのだろうと期待させますがなんだお前か・・・と反動も大きなノギクです。
しかしこのヤマジノギクも最近ではあまり見なくなって来ました。葉の形がスマートなことから覚えやすいノギクですから、ぜひ見つけてくださいね。

■香りの良いノギク

リュウノウギク(吾妻山)
白いノギクと言いながら、白い部分は舌状花といって花の集まりの外側に集中しています。白と言っても紫色を帯びているのが実情で、またほとんどの白いノギクの中央部には黄色い筒状花が集まっています。ひとつひとつが花と言われるキクの仲間の花としてのチームワークの良さには感心します。
写真のリュウノウギクの茎や葉は良い香りがするので有名ですね。龍脳のような香りと表現されますがノギクには良い香りがする仲間が多いのです。

セトノジギク(周防大島)
瀬戸内海沿岸部に多いノジギグもたいへん良い香りがするノギクです。咲いている場所がはっきり分かれていますから間違うことはないでしょうが香りの良いノギクと言えばこのふたつのキクは東西の、いえ山と海の横綱格ですね。
ノジギクとリュウノウギクの葉の違いをQJY140号で紹介していますから、再掲しましょう。


このように葉の基部が「くさび状」になっているのがリュウノウギク、ほぼ平行なのがノジギクと思って間違いないようです。

■広島県はノギクの宝庫

その他 ヤマシロギク、シラヤマギク、ゴマナなども身近に見る白いノギクと言えます。
ヤマシロギク(三原市)
ノギクは秋の山道を飾る優しい花です。
暖かい瀬戸内海の島にはアワユキセンダングサ(コシロノセンダングサ)、山の湿原にはゴマナ。広島県にはさまざまなノギクが咲いています。白いノギクの区別はそれほど難しいものではありません。図鑑には確かな見分け方が書いてあります。赤鉛筆でチェックを入れて、山歩きのリュックに持ちこみましょう。

ゴマナ(深入山)
タチアワユキセンダングサ(沖縄県)
秋の山歩きはこれほどまでにも楽しいのかと思わせてくれるのもノギクがそこにあるからなのです。この時期にはマツムシソウやウメバチソウなどに目が向くことでしょう、ノギクの一輪にも声をかけてやってください。蝶たちはノギクが大好きです。

イソノギク(沖縄県)

沖縄の夏真っ盛りの海岸部にはこのイソノギクがたくさん咲いています。岩場を歩くのに踏みつけそうなくらいです。
このようにノギクは日本のどこでも見られるのです。そのほとんどがいろんな特徴を持ったノギクなのですが、その割にはあまり見向きされませんね。図鑑とにらめっこすることが出来る植物の代表格でもある野山の野菊に、あなたもはまり込んでみませんか?
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