究JYお勉強ページにようこそ。

為になるお話その8
野菊考−2(黄色いノギクと秋の夕陽)rev.a

野菊考−1では白い野菊のお話をしました。
野菊と言って想像するキクの色は何ですか?キクは黄色でなきゃと言う方も多いはずです。タンポポの仲間は別にして、秋咲きの野菊の代表はシマカンギクでしょう。葉の形、花の色。とてもキクらしいキクだと思いませんか。名前の割には山間部に多いため、ミスネーミングの感じが否めませんが、西日本の黄色い野菊の代表はこのシマカンギク以外にありません。
頭花も舌状花も黄色、そして大型。その自生地のひとつやふたつは知っていなければキク博士にはなれません。

シマカンギク(広島市)

■海岸部に多い秋の野菊

とはいえ、秋のノギクの中でも特に海岸部に咲くものが印象的です。
関東地方の野菊ファンならイソギクの人気は衰えるところを知りません。

イソギク(伊豆半島)
イソギクは主に関東から東海地方で見られる海岸性の野菊で、伊豆半島を旅すると10月〜11月にかけて良く咲いているのを見ます。これに対して高知県室戸岬で見られるシオギクが良く比較材料にされます。咲く時期は丁度同じ頃、花の姿はまるで同じなのですが、並んで咲くわけでは無いので比較しようがありません。
もっとも「野菊」の紹介でイソギク、シオギクを出しても、何か野菊らしくないことで違和感がありますね。そう舌状花が無いのです。
シオギクのほうがやや頭花の大きさが大きいですね。それでもこのふたつのキクは兄弟のようです。このように野菊の中には舌状花を持たないものがあるのです。舌状花とは素人っぽく言えば「花びら」のこと、どうして花びらをつけることをあきらめたのでしょう?季節はだんだん寒い時期に向かっていますが、それと何か関連があるのでしょうか。密集して咲く「頭状花」のほうが寒さをしのげるからなのでしょうか、シオギクやイソギクに聞いてみたいところです。

シオギク(室戸岬)

シオギクを探して室戸岬を散策していると、アゼトウナも見つかります。こちらのほうがノギクと呼ぶにふさわしい姿をしています。

アゼトウナ(室戸岬)
いわゆるタンポポのような咲きかたで、花の部分だけ示されたのでは同定することは不可能でしょう。これが春に咲いていても違和感はありません。しかしヤクシソウなどが意外と海岸近くに咲くことに気づくようになれば、あなたも野菊に魅せられてきたと言えるでしょう。

ヤクシソウ(安浦町)

そんな中で野菊でもないのに、ツワブキは大きな顔をして海岸に咲いています。もうあまり花の多くない時期だから、仲間に入れてやっても良いのかもしれませんが、この大きな葉は野菊とは認められませんね。
珍しいところで、山口県光市の虹が浜海岸に咲くニジガハマギクはいかがでしょう。サンインギクとノジギクの交雑種ということです。
でもこれは一般的ではない。

ツワブキ(広島市)ニジガハマギク(光市)

■山にはどんな野菊?

そんなこと言ってると、黄色い野菊はシマカンギクしか無いということになりますね。これは意外です。たくさんあると思われた黄色い野菊、少ないじゃありませんか。
キク科の黄色い花はニガナやアキノノゲシ、コウリンカも含めてけっこう多いのですが、白い花ほど「野菊」扱い出来るものは多くありません。
でも、秋の夕陽に照らされた黄色いキクはすごくあったかいのですよ。

コウリンカ(吾妻山) ノニガナ(西城町)

栽培品種に多いからと言って、自然のものは多いわけじゃないのですね。
ちなみに関東地方にはアワコガネギクが代表格です。西日本のシマカンギク。この両横綱を的確に覚えることが野菊博士の必須項目です。
分類学的には黄色いキクはキク属、青いキクはシオン属です。それぞれに白いものがあって、最初に白いノギクの話をしたためにちょっと混乱させたかも知れません。
そもそも「野菊」という表現は文学の上でのあいまいな表現で、分類をしているわけではないのですから、こうして解説するのも無理があるのかなあと反省しています。でもこうやって自由に研究してみることができるのもシアワセです。
<<目次>>