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為になるお話その12 湿原の持つ意味と自然保護

■湿原てなあに?

湿原の定義を自分なりに考えてみてください。
そう、水がなければいけません。そしてその水が絶え間無く供給されることも必要です。
ここまでは誰でも想像できたことでしょう。では、その土壌は養分豊かな恵みの大地なのでしょうか。いえ、人工のため池ではありませんから湿原は栄養分の乏しい環境であることを認識しなければなりません。これを「貧栄養」と呼びます。もし栄養豊かであればいろんな樹木が制限無く育ってしまうことでしょう。そうして長い年月のうちに落ち葉が堆積し更に豊かな土壌を供給し、湿原ではなくなるのです。
つまり湿原とは貧栄養で湿原の状態を恒久的に保つことのできる、大型樹木の生育しない環境が続く条件が必要なのです。
それでも湿原は貧栄養でも育つ植物のもとで新しい土壌を形成し、発達していく可能性があります。それを阻止しているのが「気温」です。そう、湿原が湿原でありつづけるためには、低温で微生物の発育が悪く、枯れた植物が容易に分解されない劣悪な条件も必要になるのです。それを「泥炭」と呼び泥炭は湿原の存続に関係する重要な要素となります。
ここまでで、おわかりでしょう?湿原は温暖で栄養豊かであればすぐに湿原でなくなるのです。そこで微生物の分解が行われにくい「泥炭」となることも大事なのです。

キーワード:貧栄養、泥炭

泥炭は寒い地方(ツンドラなど)で堆積されると分解されにくいのでそのままの形や性質を残し易いのです。従って「湿原」は寒い地方のものということになりますね。では泥炭が分解されずに堆積を繰り返すとどうなるでしょう。
当然、泥炭の層が発達し周囲の高さより高くなって行きます。またこれに水が絶え間無く流れ込んでいる状況では酸素不足も重なって強い酸性土壌となり、ますます分解されにくくなります。
これを繰り返すと湿原は泥炭の乾燥がもとで森林へと変化してしまいます。

<鯉が窪池 7月 ミソハギ>

■湿原の種類

◇低層湿原
泥炭が水面より下に出来る湿原。
流入する水により、栄養分に富んだ状態になりいずれは泥炭の層が厚くなるため高層湿原へと移行する。

◇高層湿原
泥炭が水面より上に出来る湿原。
雨水や露により育成する植物のみ育つため貧栄養の状態になり、湿原の中央部が盛り上がった形状になる。

◇中間湿原
低層と高層の間に位置する移行過程の湿原。
富栄養でありながら貧栄養の涌き水により養われている。暖地の湿原はすべてこれにあたる。

しかし湿原のサイクルはとてつもなく長いことも知られています。
上高地の田代湿原は過去1000年間大した変化もなく現在とほぼ同じであったと言われています。従って湿原が低層湿原から高層湿原へと変化する様子を人が確認することは出来ないのです。

■湿原の植物

貧栄養の湿原では生育する植物に限度があり、これに過剰な湿度の条件が重なってあまり豊かな植生とはならないのです。これにより雑木林的な樹木の繁殖も押さえられ、日照も確保されるためデリケートな湿原特有の植物が負かされて衰退することもないのです。
言い替えれば湿原植物は日照が不足すると衰退してしまうことでしょう。
また湿原の周辺には通常森林が存在しますが、これが針葉樹の植林地であった場合はその樹高の増大にともない日照を確保できなくなるため、湿原が湿原でなくなる可能性があるのです。
このように湿原の保全は周辺の植物の高さにまで左右されてしまいます。よほど大規模な湿原(尾瀬沼や北海道の湿原9では影響がないようでも中国地方の湿原では「植林」や「雑木林の放置」ですぐにもその一生を終えてしまうようなミニ湿原が多いのも事実です。

・低層湿原ではヨシ、ガマなどが育ち、イネ科やカヤツリグサ科の植物が多い。
・高層湿原ではミズゴケ、モウセンゴケなどが育つ。

■湿原の保護

湿原を田畑にしようとする「開発事業」は日本中で行われてきました。流れ込む水路を絶ち、湿原の周辺に植林すること環境を変化させる試みがなされてきました。湿原の規模にもよりますが、人為的に湿原林を伐採し土壌の乾燥化を計ればたやすく農業用地への転換ができます。
岡山県の鯉が窪湿原では開発業者があきらめざるを得ないほど困難な状況で、採算も取れないと判断され自治体に返還されました。しかしこの時代の流れもすべては人間次第。湿原を保護するか開発を優先するか、いつも選択肢は人間の手にあります。

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