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為になるお話その3
春の妖精 スミレちゃん rev.b

■黄色いスミレ
私がスミレに興味を持ったのは道後山でダイセンキスミレに出合ってからだと思います。黄色いスミレがあるなんて!初めて見た時は大いに感激したものです。そして調べるうちに、それがオオバキスミレの仲間のひとつとして中国地方にあるものは皆ダイセンキスミレであることなどが分かってきました。図鑑を読むということで、その植物の知識が増えるのですね。

ダイセンキスミレは他のスミレ(例えばツボスミレ)のように長い期間見られるスミレではありません。しかし連休の頃、つまり人の目にはつきやすい時期に咲くので、見たことのある人は多いと思います。広島県の絶滅危急種として騒がれるのですが、中国山地の国定公園内のいたる所で見られます。
それも人に踏まれそうな山道の裸地で。
結局この種は案外したたかな、生命力を持ったスミレなのかも知れません。

図鑑ではナエバキスミレが近い種であると思われます。オオバキスミレに比べ小型であることや葉脈が赤っぽいことなどが決め手です。

一番好きなスミレは?と聞かれると「はい、アケボノスミレ です。」と私は答えます。好きな理由は名前の由来にもなった「色」の美しさです。スミレはバイオレットに代表される「紫色」が代表的な色なのですが、アケボノスミレは朝焼けの濃いピンク−曙の色なのです。

このスミレは深山の乾いた草原などで葉より先に花を咲かせる大きく美しいスミレです。サイシンの仲間ですから葉が筒状に丸くなっていて、だんだんと開いて、夏にはとても大きくなって光合成をして栄養を作る性質があります。群生地をいくつか知っていますが、どこも春先を過ぎると他の草が生い茂るため見られなくなるのです。

写真を撮るために寝転んでカメラを構えることがありますが、アケボノスミレはキスミレみたいに崖には咲かないので、いつも寝転んで撮らなければならない代表格でしょう。

早春のスミレとしては何と言ってもスミレサイシンでしょう。
県北の高山ではキクザキイチゲの咲く頃、と言いますと、まだ雪が残っている頃に大きな花をつけて咲いています。連休の頃に初めて山登りをする人はこの花の姿を見ることは出来ません。それくらい早い時期のスミレです。

サイシンの仲間は先ほど言いましたように、出始めの葉が縦に丸まっています。可愛らしい花の代表であるスミレですが、サイシンの仲間でさらに可愛らしいのがシコクスミレです。これは広島県内では吉和村あたりでしか見られません。そしてこのシコクスミレとスミレサイシンの雑種と言われるのがジャクチスミレです。名前から咲いていそうな場所を想像してみてくださいね。

■スミレの香り
スミレの香りを知っていますか?
ニオイタチツボスミレは名前のとおり香りがとても良いスミレです。しかしこのスミレが好きと言う友人は花の模様が最高だとも言います。普通のタチツボスミレは県内あちこちで見かけますが、共通して言えることは淡い色合いのスミレだと言うことです。しかしニオイタチツボスミレに限って言えばとても色が濃いという特徴があります。

花やさんで「ニオイスミレ」というのを売っています。これは全くの外来種で、正月に咲くので人気があるのです。今では結構野に脱出して咲いているニオイスミレを見ることがあります。
さて、ニオイタチツボスミレの香りを経験すると、どんなスミレに出合っても一応香りを嗅いでみるクセがついてしまいます。すると不思議、シハイスミレノジスミレなどは強い香りがあることに気づくでしょう。
しかしスミレの香りはお腹が出ている人にはちょっと辛いかも・・・。

名前に反して、全然香りの無いものも時折見つかります。しかし、強烈なバイオレットの香りを持つニオイタチツボスミレに出合うと、何か誘われているような不思議な気分になるから不思議ですね。濃い化粧の遊び上手なスミレちゃん、ニオイタチツボスミレの香りを体験して見てください。

吾妻山などで良く見るオオタチツボスミレは、その優雅さでは抜群の人気です。スミレの特徴のひとつである、距(きょ)と言って花の後部が白いのが特徴です。タチツボスミレはこれが紫色です。優雅なスミレと言えばサクラスミレの右に出るものは無いでしょう。ちょっと毛深いスマートなスミレです。

■スミレの分類
スミレの仲間は地上茎があるかないかで大きく2種に分けられます。
地上つまり見えている部分で、枝分かれして葉柄や花柄があるタチツボスミレの仲間とそうでないスミレサイシンの仲間。
これだけでも図鑑で捜す場合に楽になります。
山と渓谷社 いがりまさし著「日本のスミレ」より

地上茎がある:キスミレの仲間、タチツボスミレの仲間、ツボスミレなど。
地上茎がない:スミレサイシンの仲間、シハイスミレエイザンスミレの仲間。
■珍しいスミレ
ホソバシロスミレヒカゲスミレアカネスミレなどはどこでも見られるものではありません。これらのスミレが見つかるととても嬉しいものです。

良く観察すると珍しいスミレだった、ということは多くあります。
どこでも見るツボスミレ(ニョイスミレ)に混じってフモトスミレが咲いていることがあります。葉も茎も全然違うのに見過ごしてしまうのです。

スミレというスミレがあります。
ユリというユリやキクというキクは無いのに、スミレというスミレはあるのです。私が呼んでる別名はタダノスミレ。つまりただのスミレなんです。観察会で「これは何スミレ?」と聞かれて「はい、ただのスミレです。」と答えると「タダノスミレ」とメモする人があるのですから、仕方ないのかな?

スミレは亜熱帯に咲くリュウキュウコスミレや海岸に咲くイソスミレ、北海道にエゾタカネスミレがあるように全国北から南まで普通にある草本です。ケイリュウタチツボスミレは最近知られるようになったスミレですが、広島県では東部西部とも流れをかぶるくらいの水際で多く見られます。同様にヤエヤマスミレイシガキスミレは南国沖縄で滝の水をかぶるような岩の上で咲いています。

ケイリュウタチツボスミレ(帝釈峡)

■スミレを覚える
スミレに強くなりたいという人は多くいます。
まずはタチツボスミレを見極めてください。この仲間は地上に茎があり、つまり枝分かれするスミレです。広島県では一番多く見ます。
コタチツボスミレタチツボスミレオオタチツボスミレナガバノタチツボスミレが分かるようになったら、あなたも一人前。

ハート型の葉が特徴のスミレ類の中で、葉に切れこみがあるスミレに出合うと驚くことでしょう。西部に多いエイザンスミレ、よく似たヒゴスミレはあまり見つけることができませんが、群落は東部の山中で見かけました。

今年こそスミレに強くなりたいと思うなら、是非エイザンスミレを勉強してください。
カタクリの頃、山口県の右谷山に登ってみてはいかがでしょう。太鼓谷を過ぎてからはエイザンスミレがたくさん見られます。
夏にはその葉がキクバヤマボクチくらいに育って驚かせてくれます。来年の栄養を作るために葉が大きくなるのがスミレの特徴です。
ちょっとローカルな話になりましたが、全国にスミレの産地はあります。季節の短さを実感してしまう「スミレの旅」はどんな地域でも出来るはずですよ。
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