おもしろ植物・園芸クイズ

第3回目:樹木や草花の人間生活との関わり                                                     真鍋節夫

  今年は、11月18日(日)に第3回目の試験がはじまります。前回は「植物名に関する基礎的な知識」と題して、例題をいくつか解いてみました。模擬問題で力試しをしてみることはとても有効な試験対策です。植物について知識を持つということは、前回のようにまず「植物名」を多く知ること、そして次にその植物に関するさまざまなエピソードを知ることで知識は広がって行きます。

 

  植物が人間生活に何ら関わりを持たないものであれば、私達はこれほど植物に興味を持つこともなく、ましてこのような認定試験など存在しなかったであろうと思います。

  私達は植物で作った衣服をまとい、食べ物としての植物を体内に取り入れ、樹木を切り倒して家を建ててきました。そう、衣食住すべてに植物は利用されてきたのです。そう考えれば植物の存在が私達を生かしてくれていると言っても過言ではありませんね。

  科学的には植物の呼吸とも言える炭酸同化作用は酸素の供給源として重要な立場にあります。

  さて、植物には有用な薬草もあれば害のある毒草もあります。

  ではそのような人間に害のある植物でもいくらか役に立っているのでしょうか。

  役に立っていない、などと誰が断言出来るでしょう。毒草の多くは利用の仕方ひとつで薬草にもなります。私は山歩きが好きで、苦しい思いをして山頂に立ち、そこで蝶が舞っているのに出合うととても嬉しいのですが、先日出合った白い蝶はウスバシロチョウというとてもきれいな蝶でした。図鑑で調べて見るとその蝶は幼虫の時にムラサキケマンやヤマエンゴザクなどケシ科のコリダリス(学名)の仲間の葉を食べるのだそうです。

  毒草のはずのムラサキケマンをごちそうにしている蝶がいるのですね。

  その時思いました、世の中にはムダなものは無いんだ。何でも何かの役に立っているんだ、と分かりました。そんなことを考えさせてくれるだけでも、植物とお付き合いをさせてもらっている自分をとても幸せに感じます。

  皆さんは自分の住んでいる街にハエやカがいなくなったら嬉しいですか?

  正直言って、嬉しいですよね。でも良く考えてみましょう、ハエやカのいない街にはトンボもツバメもやって来なくなるんです。トンボやツバメはハエやカを食べて生きています。これを食物連鎖と言います。

  自然はこの連鎖の頂点に立つ人間を生かすために、どんな小さな雑草も、どんな重要な穀物も分け隔てなく生かしてくれているのです。本当の自然保護は自分に都合のよい生き物だけを生かすことでは無いのですね。

●農作物

  さて私達が植物によって恩恵を受けているとしたら、一番に思い浮かぶことは野菜や穀物、つまり食物としての植物ではないでしょうか。

  【問1】

  1550年頃、スペイン人によってヨーロッパへ輸入されたといわれる作物で、それまで麦の表作のみしか無かった北欧にとってこの作物による麦の裏作がトウモロコシと共に飢えを救ったと言われる。

                            <<写真1>>

サツマイモ              ジャガイモ              ピーナッツ              カボチャ    ビート

  人類の飢えを救った植物はいくつかあります。なかでもイモは育てやすいことでナンバーワンと言えます。イモは解答例の中に二つありますね。サツマイモとジャガイモ、ひとくちにイモと言ってもイモ科と呼ばれる植物があるわけではありません。主に地下茎や根が大きく育ちデンプンを多く含む仲間をイモと呼んでいるのです。

  ちなみにナス科のジャガイモは地下茎を食べますが、ヒルガオ科のサツマイモは根を食べます。                                                                      解答:2 ジャガイモ

 

【問2】

  ボリビア原産の多年草ですが、栽培上は一年草として扱われ、長さ約60センチもある葉を互生します。重要なのはこの葉で一本の茎に30枚ほどついて、主に上部の葉が利用されます。昔は専売制であったため、生産農家では厳しい管理を受けていました。この植物は?

                            <<写真2>>

サトウキビ              ケナフ       タバコ       ケシ   イネ

  まさかイネと答えた人はいませんよね。

  でもイネ、つまり米は今でも政府の管理下に有る植物であると言えます。そういう意味では一種のひっかけが隠れています。

  スーパーや八百屋さんに並ぶ野菜も、畑での姿を見たことが無い人が結構多い時代になってきました。かく言う私も農家の出身では無いので、豆の花が咲いてもどんな種類の豆なのかピンと来なくて笑われることがあります。

  植物に興味がある以上、野菜だって豆だって詳しくなりたいものですね。最近は中国料理に使う野菜も普通に栽培されるようになって、ますます混乱しそうです。

  この問題では「専売制」がヒントでもありますが、ケシのように麻薬を連想させて、政府の管理下にあるようなイメージを持たせています。つまりこれも「ひっかけ」のワナを解答群に並べているのです。

  さて、タバコは嗜好品であり、問1のように飢えを救ったわけでは無いのですが、嗜好品ゆえに人類と深い関わりがあります。また「専売制」はタバコの歴史でもあります、このような植物を実際に畑で観察して見ることは有意義なことでしょう。

  なお、タバコにはいろんな銘柄がありますが、これはいろんな産地(産出国)のタバコや品種をブレンドしている結果です。

                                                                                    解答:3 タバコ

 

上記2問では写真だけで植物の名前がわかった方も多いことでしょう。いずれも日本ではどこの田舎でも見慣れた畑の作物でした。今では農村の都市化に伴いそんな農作物が普通に見られなくなってきたような気がします。だからこそ出題者の立場になれば面白い問題が作れそうな気がします。

このように野菜や農作物、園芸品でも、さて何科だったろうと考えると大変難しい事がわかります。その場合は花の形が何に似ているのか思い出すことが重要です。

前述のジャガイモの花はナスに似ていますね。サツマイモの花はあまりお馴染みではありませんが、日当たりのよい太平洋側では見られることがあります。特に産地でもある鹿児島やもっと温かい沖縄では普通に見られる花で、そのことからもこの植物が暖かい地方のものだと分かりますね。

ちなみにサツマイモはアサガオのような花をつけます。そう、ヒルガオ科の植物なのですね。

典型的な農作物を科名で分類して見ましょう。

ウリ科

スイカ

メロン

キュウリ

カボチャ

アブラナ科

ダイコン

カブ

ハクサイ

キャベツ

ユリ科

ネギ

ニラ

アスパラガス

タマネギ

キク科

レタス

ゴボウ

シュンギク

チコリー

バラ科

リンゴ

イチゴ

アーモンド

ウメ

 

日本人の食べる野菜の種類はおよそ150種ほどあります。世界的には多い方でしょう。もともと野菜は長く保存できるわけではありませんから、ビニールハウスなどの施設を利用して季節の先取りや遅らせなどで、年間を通して供給が可能になりました。

野菜は穀類や肉類と異なり、カロリーとしてではなくビタミン、食物繊維など健康に大切な食物であると言えます。

1・葉菜(ようさい)・・・茎や葉を食べる                         キャベツ・レタスなど

2・根菜(こんさい)・・・根や地中のイモを食べる              ダイコン・ゴボウなど

3・果菜(かさい)・・・・実を食べる                                          ナス・キュウリなど

興味を引くのは果菜の中には果物のように成熟して食べるものとナスなどのように未成熟の時に食べるものがあると言うことです。このような観点から植物を見るのも面白いでしょう。

●環境

【問3】ケナフについて間違った記述は。

-種子を油料として利用できる   -和名をヨウマ(洋麻)と言う   -茎の高さ2〜3メートルとなる   -クワ科の植物である   -アフリカまたはインド原産と言われる 

 

新聞や雑誌などで話題になっている植物は要チェックです。問2の解答例のなかにケナフが入っていましたのでちょっと考えてみました。

ケナフを取り上げた記事は皆さんも良く見られることでしょう。上記の問題は5つの解答群の中にひとつだけ誤りがあるのですから、問題形式としては難しい方でしょう。

ケナフはアオイ科の一年草で、パルプの材料として良く知られています。また最近の話題としてこの植物が光合成をする時に発生させる酸素の量が多いとか言われたこともあります。あるいは無制限に繁殖させてしまった結果、在来種に与える悪影響を嘆く記事も読まれたことがあるでしょう。

いずれにしても人間生活に関わる植物・ケナフについて正しい知識を持っていなければならないわけです。そういった情報源としてまず新聞記事の切り抜きが有効と言えます。

皆さんの近所にもケナフを植えておられる庭があることでしょう。近くの小学校などでも良く見かけます。花はちょうどオクラのようです。この仲間には一年草が多く、花が咲いても一日でしぼんでしまうことなども知識として知っておく必要があるでしょう。これはアオイ科の仲間の特徴でもあります。

なお、一年草とは、発芽して花が咲くまでの期間が一年以内であること、二年草とは翌年花が咲く植物のことです。アサガオはどちらですか?

そして毎年芽が出てきて花をつける草花は、地中の根が冬でも枯れないで残ることから宿根草あるいは多年草と呼ばれています。

オクラもケナフもアオイ科の植物ですので、

                                                                                    解答:4 クワ科が間違い

●薬草

【問4】

  中国や日本に自生するメギ科の植物で、漢方では強壮・強精剤、発汗剤として利用される。主成分はフラボノイドなど。

                            <<写真4>>

-シャクヤク   -トリカブト   -サンカヨウ   -ドクダミ   -イカリソウ 

漢方薬あるいは民間薬の分野で、植物は多いに人間の生活に役立ってきました。植物の持つ不思議な魔力?とでも言いましょうか、全世界の高等植物の中で10〜15%は薬用植物であるとも言われます。

薬用植物の歴史はそのまま人間の歴史である、と言っても過言ではありません。

何しろ薬用植物と言えど、用法を誤ると毒薬になることもあるのですから、いにしえの民の努力は命がけの人体実験でもあったはずです。

貴重な山野草が激減しています。

中でも薬草は栽培して利用するべきものですが、一部の製薬会社が農家に採取を委託し、それが農家にとって大きな現金収入となるため、こぞって採取、伐採が行われたことがあります。

企業の儲け主義が日本国内のみならず、アジアの近隣諸国の自然を破壊してしまう恐れも十分あるのです。

ドリンク剤などの成分表にイカリソウの名前を見ることがあります。強壮剤に利用される植物は多いのですが、この問いの「メギ科」で該当するのはイカリソウとサンカヨウです。中でもイカリソウは「淫羊かく」と呼ばれ、イカリソウを食べた雄羊の後を追って見ると100頭もの雌羊がいたという故事からその名がついたと言われています。

それにしてもイカリソウの花の姿を見ると、よく名前をつけたものだと思いませんか?

                                                                                    解答:5 イカリソウ

1・漢方薬・・・江戸時代に西洋(オランダ)医学のことを蘭方と呼んだことに対し、当時日本で行われていた伝統的な療法に基づく。それらが中国から渡ってきた手法であることからついた呼び名。

2・民間薬・・・漢方との分かれ目として、医者が用いる療法では無く、それが一般的に広まり伝えられてきた生薬。

  つまり漢方薬の経験があります、と言っても、センブリやドクダミを煎じて用いたことを言っているのは実は民間薬のことなのです。民間と漢方は一般的に利用の容易さと安全性で区別されます。

  また「医食同源」の言葉のとおり、食物として身体にいいものを取り入れることを基本にすれば、特に漢方・民間の区別をする必要性もないでしょう。

●香辛料

【問5】

春の深山で見かけた白い花、渓流に沿って生えていることが多い。栽培種も多く、病害に強い改良種も多くなった。きれいで一定温度の冷水が条件と言われる植物は?

                         <<写真5>>

-ワサビ   -コショウ   -ショウガ   -サンショウ   -ドクダミ 

                                                                                    解答:1 ワサビ

ワサビはアブラナ科なのでダイコンやクレソンなどと同じ仲間です。野生種では市販の太いワサビの根は出来ませんが、うまく調理すれば独特の辛味のある葉を味わうことができます。

 

植物に興味のある人は植物園に出かけることが多いのではないでしょうか。

中でも温室のある植物園では、年中熱帯,亜熱帯の果実を見ることができます。過去の問題にも沖縄地方の植物がよく取り上げられています。

主に暖かい地方に産する植物に「香辛料植物」があります。香辛料とは料理や飲み物などに風味を与えたり、食欲を増進させる作用のあるものの総称です。利用される部分はさまざまで、根から葉まで、もちろん果実(成熟していても未成熟でも)、花、木皮、茎など部位は選びません。

薬草も大事ですが、かつてヨーロッパの国々が香辛料を求めて戦争までしていたことを考えると、馬鹿にならないものだと言えます。

最近のハーブのブームでセージ、タイム、ローズマリーなどお馴染みになって来ました。本もいろいろ出ていますから知識としては吸収しやすい分野でしょう。実際に咲いている花も植物園で観察できますから、楽しみながら覚えてみましょう。

  ハーブは若い女性に人気がありますが、昔からうどん、そばに利用した七味ももちろんハーブのことなのです。またネギを添えるのも「薬味」という表現からわかるように、香辛料は薬草の利用法のひとつでもあります。

●その他

【問6】

四国徳島県の観光名所「かずら橋」はつる性の植物を利用して橋を組み立てています。別名をシラクチヅルと言い、初夏に咲いた白い花が実るとキウイーフルーツを小さくしたようなおいしい実が出来ます。川を下るいかだを編むのにも利用されたマタタビ科のこの植物の名前は。

-ゴトウヅル   -サルナシ   -ハンショウヅル   -ハナイカダ   -シラキ 

                                                                                   

【問7】

アセボトキシンなどを含む有毒植物で、食べると足がしびれることから付いた名前の植物は。

1-   アセロラ     -アシタバ         -アセビ      -アッケシソウ           -アケビ

 

【問8】

カマツカ(バラ科)が別名ウシコロシと呼ばれる訳は。

-材を牛の鼻輪に使った       -材の堅さが牛を倒すくらい強い                      

-毒性があって「うじ」を殺す殺虫剤に使われた

-主に牧場のフェンスとして使用したため            -アメリカで牛肉の料理のための火を燃やすのに使われた

 

【問9】

ワラビを牛馬が食べないのは「毒」だから、と言われる。実際はそれほどの量を食べるわけではないのだから心配することも無い。では、このワラビに含まれる成分で酵素の一種「アノイリナーゼ」はどんな栄養素を壊す働きがあるのか。

-ビタミンB2       -ビタミンD               -カルシウム               -ビタミンA -脂肪

この酵素は熱には弱いので調理法によっては安心出来る

 

【問10】山菜で「コゴミ」と言えば何のこと。

-キランソウ                        -コシアブラ              -クサソテツ              -ヤブカンゾウ              

-フタリシズカ

 

解答

問6:2              問7:3    問8:1    問9:1    問10:3

<緑花試験ページ>