おもしろ植物・園芸クイズ
第4回目:都市緑化やガーデニングに関する問題 真鍋節夫
緑・花文化の知識認定試験は11月18日(日)第3回目が行われました、こういった試験があることなども多くの人に周知され、毎回受験している人も多いと聞きます。この試験は合格,不合格を決めるものでは無く、獲得点数によって級位を決める認定試験です。
あなたのチャレンジ精神を奮い立たせて、さらにワンランク上を目指して見ましょう。
私達が日々の暮らしの中でかかわる植物と言えば、まずは庭の花。
庭が無くとも玄関の下駄箱の上にある花瓶には心安らぐ一輪の花が生けてありませんか。植物はそれ自体、私達の暮らしの利便性を向上させてくれているわけでは無いのですが、無ければとても味気ない殺伐とした空気に囲まれてしまいます。とても不思議なことですね。
私個人も目立たなくていいから、植物のように「いてくれるだけで嬉しい。」なんて言われて見たいと思います。
植物の名前を覚えるようになって、庭に生える雑草でも引っこ抜くことが出来なくなりました。せめて花を咲かせるまで待ってやろうとか、一輪だけ残しておこうとか、今まで無視していたものが少しずつ存在感を持ち始めることに大きな心の変化を覚えます。
植物を好きになってください。好きな人なら何でも知りたいでしょう?もっときれいになって欲しいでしょう?いつのまにか知識も豊富になってくるのです。
心がやすらぐことがどれほど大切なことか。殺伐とした世の中にあって、一輪の花が語りかけてくれる「平和」をじっくり味わいたいものです。
さて今回は「都市緑化とガーデニング」について。
とても堅苦しい話になりそうですが、それはあなたの近所の公園のことであったり、庭の話であったり、いえトイレにある一輪挿しのことでも同じなのです。要は植物が作ってくれる環境のお話。この試験で今後重要な位置を占めることは確かでしょう。
ガーデニングそのものの技法については本誌「ベルビ」の各専門分野にお任せするとして、まずは既出問題から。
【第2回試験の問42】
カイヅカイブキは公園などでよく利用されていますが、この植物を植えてはいけない場所があります。それはどんな所でしょうか。またその理由はなぜでしょうか。
1.病院のそば 花粉症の原因になるから
2.保育園・幼稚園のそば 毒のある虫がつくから
3.野菜畑のそば 害虫の産卵場所になるから
4.梨畑のそば 病原菌のすみかとなるから
5.水田のそば 鳥の隠れ場所となるから
いきなり超難問が出ました。分からなくても心配ありません、造園業に携わる方や特定の農家くらいしか知らない話ですから。
カイヅカイブキはヒノキ科イブキの園芸品種で、枝が密に出ていることから自由な剪定が出来る樹木として良く利用されます。このイブキの仲間はナシの赤星病の病原菌を媒介することで有名です。いきなり難しい問題でもありますが、これは山渓の発行する植物図鑑「日本の樹木」にも書いてあり、造園業者のみならず一般的にも雑学として知っていて欲しい知識のひとつでしょう。
【解答】4-梨畑のそば
まったく手のつけられない問題だけれど、病院、保育園だったら少しは話題になっていて自分も聞いたことがあるはず、と思いませんでしたか?野菜畑や水田という話もいなかの親から一度も聞いたことがないぞ・・・・、だったら梨園か?と、以前お話した消去法で解いてみて下さい。
梨という果物の種類が特定してあるのもクサイぞ、と、まさに推理テクニックの分野です。
公園緑化や自宅の庭の整備についての問題ですが、今後は多く出題される傾向にあると思われます。園芸ブームの昨今ですから、この分野は感心を持っている人が多いでしょう。
さて例題に入りましょう。
【問1】
「人間の心の安らぎは公園の緑から得られる」と説き、17〜18世紀、広大な公園の建設を提唱した哲学者とは誰でしょう。
1- ベーコン
2- レオナルド・ダ・ビンチ
3- モネ
4- フランクリン
5- アダム・スミス
【解答1】1- ベーコン
植物の問題として「この花は何でしょう?」形式の問題ばかりとは限りません。社会の発展、安定とともに都市の緑化計画は自治体のみならず国家レベルで策定されるようになりました。
「知は力なり」と唱えたイギリスの哲学者フランシス・ベーコンは自然科学の分野にもその見識を広げ、人間による自然の支配を学問の目的としました。そのためには正しい認識の妨げになるイドラ(偏見・先入観)を排除しなければならないと説き(イドラ説)、さらに実験と観察に基づく個々の事実から法則・結論を導き出す帰納法を提唱します。
その後スウェーデンのリンネなどが動植物の分類学を発展させたのです。
大航海時代から近世の人々は新しい食物としての植物を求めて来たのですが、近代に入ってもっと系統的に植物を研究する分野が広がったのですね。
【問2】都市緑化を推進するために設けられた都市緑化植物園の別称は。
1- フラワーセンター
2- ランドスケープガーデン
3- 国立農業試験場
4- ボタニカルガーデン
5- みどりの相談所
【解答2】5- みどりの相談所
自治体単位で植物公園などに設置されている「みどりの相談所」はあらゆる園芸相談に応じてくれる公的機関です。一般市民がもっとここを利用して欲しいものですね。
【問3】樹木を幾何学形、動物形などに刈り込み彫塑的造形物に仕立てた人工的な樹形のことを何と呼ぶでしょう。
1- ガーデニング
2- コニファー
3- テラコッタ
4- トピアリー
5- コンポスト
【解答3】4- トピアリー
ヨーロッパの宮廷庭園には幾何学形のものが多くみられます。わが国にも「鶴亀」、「宝船」など庭師の腕の見せ所もあったようです。こうして植物の形を自由にあやつることができるようになったのも文化と平和のあらわれだったのでしょう。
【問4】針葉樹の総称ですが、主として欧米で育種改良された針葉樹をさす言葉は何でしょう。
1-ガーデニング
2-コニファー
3-テラコッタ
4-トピアリー
5-コンポスト
【解答4】2-コニファー
最近、花屋さんの店頭にも横文字が多くて、すべてを憶えるのも大変ですね。花の名前はもちろんのこと「ガーデニング」くらい「土いじり」と言わせて欲しいなあ。
さて最近の花屋さんにはコニファー・コーナーがあって、特にミニ・コニファーが人気のようです。観葉植物的な人気もあって、今年のクリスマス・シーズンにはブレークする(流行ること)かも知れませんね。
【問5】わが国のほとんどは酸性土壌と言われます。土壌の性質に合った植物が育ちやすいことは言うまでもありません。アカザ科の植物はアルカリ性土壌を好むためその繁殖域は限られた場所に限定される傾向があります。それはどのような地域でしょう。
1- 湿原
2- 砂漠
3- 淡水湖
4- 海岸
5- 高山
【解答5】4-海岸
アルカリ性土壌は石灰岩台地もそうですが、アカザは塩分などに含まれるアルカリ性ミネラルと相性が良い植物です。
写真のホソバノハマアカザ(アカザ科)は塩性植物と呼ばれ、河口に近い場所で満ち潮の時に塩水がかかりそうな位置で見られます。このように植物は住みやすい場所を捜し求めて、やっと今の場所にたどり着いたのだと言えます。
植物と土壌の相性についてはとても奥が深く、ひとつの場所で多くの種類の花を咲かせようとする園芸家の悩みのタネでもあります。
【問6】
公園などによく植栽され、葉がカエデのように5〜7裂、丸い実が冬枯れの大木にぶら下がっています。良く見ると小枝にはコルク層の翼がついています。この植物は次のうちどれでしょう。
1- スズカケノキ
2- フウ
3- ポプラ
4- モミジバフウ
5- ユリノキ
【解答6】4- モミジバフウ
公園で良く見かける樹木をいくつくらい知っていますか?
解答例の植物はどれも植栽に使われるポピュラーな樹木です。ポピュラー?そうポプラ(ヤナギ科・ヤマナラシ属)の語源もポピュラーも同じで、西洋ではこの木に人が集まることが多かったことからついた名前と言われます。
スズカケノキの鈴懸けとは修行に勤める山伏の首から下げてあった房をさします。ユリノキはハンテンボクあるいはチューリップの木とも言い、葉や花の形からその名前がついています。
公園樹は多くが西洋の木で、それ自体ちょっと残念なことですが、育ちやすいこと、冬には葉を落とし陽射しを呼びこむこと、また樹形の美しさなどから選定されているようです。
モミジバフウは別名アメリカフウとも言い、日本には大正時代に北米あるいは中米から渡って来ました。フウは漢字で「楓」と書き「かえで」とも読みますが、フウという植物はマンサク科です。カエデの仲間は葉が対生しますがモミジバフウは互生です。
【問7】心身に障害を持つ人や高齢者が植物に接することで身体的・精神的健康の回復または向上を促す療法のことをホーティカルチャーセラピーと呼びます。日本語では?
1- 園芸療法
2- 農地療法
3- 植物療法
4- 公園療法
5- 草花療法
【解答7】1-園芸療法
園芸セラピーとも言います。私達がこれほど花に魅せられるのは、花に何か特別な力があるに違いないと考えるのも不思議はないでしょう。
【問8】エアプランツとも言い、特にパイナップル科(アナナス科)・ティランドシア属の植物のうち、根がほとんど発生せず、培地に植え付けなくとも空中湿度だけで育つことのできる植物を日本語で何と言うか。
1-吸収性植物
2-無根植物
3-気生植物
4-着生植物
5-空生植物
【解答8】3-気生植物
着生植物は着生ランなど他の樹木などの場所を借りると言う意味で分類されたものです。
都市緑化やガーデニングに関しては名称・定義などが重要ですので、覚えておいて欲しいものをいくつか挙げておきましょう。
国際園芸博覧会:1990年大阪で開催された「花と緑の博覧会」、1992年オランダで
開催された「フロリアード」、1999年は中国の昆明で開催されている。
樹木医:実務経験が7年以上無ければ受験資格すら無い公的な専門家試験。(樹医は雑誌や
新聞広告で募集している民間の資格。
森林インストラクター:森を訪れる人達に動植物にまつわる知識やマナーを伝える「森の
案内人」農林水産大臣が認定する。
ランドスケーピング:本来の意味は風景や景観を意味する英語ですが、花屋さん用語とし
ては造園を意味する。
バイオ植物:1977年に売り出された「青いカーネーション」に代表される、遺伝子組
替え技術による植物の繁殖方法。
越年草:秋に芽を出し、春に花をつける草本。
みどりの日:4月29日
ビオトープ:生産性一辺倒の農業への反省から、河川や山里の自然をそのままに保全し、
自然共生型地域づくり事業を展開し形作られた一空間。
コンポスト:園芸用培養土、配合土または堆肥のこと。