緑・花文化の知識認定試験について <<この原稿は2回目の試験が終わってから書きました>>

2000年3月26日に第1回目の「緑・花文化の知識認定試験」・通称「緑花試験」(りょっかしけん)が行われました。全国の総受験者数15,728人と言いますから、植物に関心のある方がいかに多いか、驚くばかりです。

この年は続いて11月26日にも第2回目の試験が行われ、受験地も13都市から23都市(32箇所)に増え、植物・園芸ファンの知識の高さを測るバロメーターとして、またひとつの勲章として定着しつつあるようです。

まだお馴染みで無いこの試験ですが、試験が始まった背景や受験を目指す方への参考になるお話をしてみましょう。

【試験の目的】

  日本は豊かな自然と世界に誇る植生に恵まれ、衣食住に植物を用いるのはもちろん伝統的文化の基盤に植物を取り入れ行事や祭事にもおおきな関わりを持って暮らして来た事はご存知と思います。

  一方で、国際的な課題でもある環境問題を解決するためには、国民ひとりひとりが自然の生態系を理解し積極的に保護して行かなければなりません。緑花試験はこのような観点のもとに、子供から大人まで年齢や資格を問わず、植物に関する知識を問うための試験として生涯学習を推進し、楽しく学ぶきっかけとなるよう考えられたものなのです。

【受験すると言うことの意味】

  植物・園芸ファンの年齢層は小さな子供からおじいちゃん・おばあちゃんの年代まで非常に幅広く、実際二回の試験を受験された方も小学校低学年から高齢の方まで、資格試験としては異例の受験者年齢層を構成しています。

  その中で中高年女性の受験者が多いのも特徴のひとつでしょう。一般的には資格試験とは縁の無かった人達が机を並べて受験することは大変なことかもしれません。中高年、まして家庭の主婦となると普通は「受験」には縁が無くなります。準備段階からの緊張感、試験中の時間との戦い、様々な思いが受験する人たちにはあります。

これを「試験」でクラス分けすることの意味はあまり無いかもしれませんね。しかし「受験」は自分の能力を客観的に判別するひとつの方法でもあります。

  私が個人的に受験を奨めた人達は一様に「受験なんて・・・」とためらっていましたが、その後の感想を聞くと「次回もチャレンジしたい。」とか「もう1ランク上を狙うぞ!」と新しい目的が出来たことに喜びを感じていたようです。そう、生涯学習とはチャレンジする心意気を持つことなんですね。

    筆者の娘は花の農園に勤務していますが、受験会場ではたくさんの知り合いである「花屋さん」で働いている人達と挨拶していました。プロとして「腕だめし」で受験されているのでしょう。将来はこの試験の結果が園芸界ではひとつのシンボルになるかも知れないとその時感じました。

 

【緑花試験の特徴】

  受験者の年齢層も特徴的ですが、この試験は採点結果で級位が決まるのが嬉しいところです。つまり特定の級位を目指す試験ではそれの合格・不合格の通知を受け取ることになるのですが、緑花試験では受験者全員が同じ設問を受けて答え、その正解率で級位が判定されます。

 ○試験時間:1時間   設問数:80問                回答方式:マークシートによる5者択一

 ○受験料:¥2,500− 但し受験案内の入手に¥250−必要(国営公園でも配布)

 ○出題内容:以下の各区分ごとの出題と区分をまたがった複合的な出題

1)科学と植物

樹木・草花の名前や特徴など植物の基礎的知識に関する問題

2)環境と植物

都市緑化やガーデニングなど環境づくりや、動物と植物のかかわりなどに関する問題

3)生活文化と植物

料理に使う植物や薬草、行事・祭事に用いる植物、ことわざに出てくる植物などに関する問題

4)芸術文化と植物

文学・美術・音楽などに表現された植物、生け花など芸術と植物に関する問題 

○受験地:札幌・秋田・仙台・茨城・千葉・埼玉・東京(8箇所)・横浜(2箇所)・新潟・金沢・静岡・名古屋・岐阜・京都・大阪(2箇所)・神戸(2箇所)・広島・米子・高松・北九州・福岡・沖縄

  ○認定級:特級・1級〜5級・認定外

特級の正解率は90%以上、1級は80%以上、・・・の順ではないかと思われます

○受験案内の配布

    第3回の試験に関してはまだ発表されていませんが、問い合せ先などは

    105-0001              東京都港区虎ノ門4−1−12 葺出(ふきで)第2ビル3階

              財団法人公園緑地管理財団内 「緑・花文化の知識認定試験」事務局

              電話:03−3431−6875           (土日祝は休日です)

    ホームページ  http://www.prfj.or.jp/midorihana/info.html

  前回は第1回の試験結果の郵送と同時に次回の試験日が発表されました。その間、4〜5ヶ月ありましたから、第2回目の結果発表が2月ですので次の試験日が3月になることは無いであろうと思われます。

 

【試験の解析と勉強のポイント】

  過去2回の出題について傾向を分析してみましょう。

  出題の9割は植物名を当てる問題となっています。その他は植物の特徴や用途、関連した事項を当てる問題です。植物名を当てる問題もその半数は写真や絵が付属していますので見たことのある植物であれば正解率は上がります。

受験した人の話を総合すると、前半40問はやさしい出題なのに後半40問では難しかったようで、これは2回の試験に共通する傾向ですから受験者は時間配分を考えながら、出された問題の順に解いていくほうが良いでしょう。

 

「園芸・農作物」に関しては身近で出題されやすいのは当然でしょう。「用途・故事・昔話など」「俳句・歌・文学」の分野はむしろ一般常識的なクイズになります。もちろん最近の出来事で植物に関する話などは要チェックですね。

園芸の肥料に関する問いがあるかと思えば「国連の旗に描かれた植物は何?」「マラソンで勝者の頭に載せる冠にする植物は?」というふうにあらゆる分野で設問が可能ですから。

  多くは分かりやすいカラー写真付きの出題で、見れば分かるという人には有利かもしれません。

  また、試験が終わるとその場で解答が配られるのも大きな特徴でしょう。受験者は正解の数や難問の解答が家に帰ってからじっくり復習できるようになっています。問題と解答はそれぞれ40ページを超す量で、百科事典なみの解説書と評される保存板資料にもなります。

 

実際の試験問題を見てみましょう。

  第1回目試験の問52、問57、第2回目試験の問52、問62は家紋についての出題があり、日本や世界の伝統的な文様に関しての出題は意外と多い気がしました。出題を担当する人の中に、この分野の専門家がおられるのでしょうか。そんなことも想像しながら図書館で専門書に目を通すのも良いかもしれません。

「人は誰もただ一人旅に出て・・・」で始まる、はしだのりひこ&シューベルツの歌う「風」というフォークソングの2番の歌詞に出てくる植物の名前を当てる問題(2回目試験,問57)などが出るのですから、試験勉強も何をすれば良いのか途方に暮れますね。

ひとつ言えることは、植物図鑑を見るときは正式和名だけでは無く、別名、科名、和名の起源、書いてある記事もすべて目を通すことにすると植物のいろんな知識が増えると言うことです。書店では「万葉集に出てくる植物」や「蝶の食草」について解説した本も多く出ています。植物の知識を広げると言うことは植物に関わるすべての知識(昔話や逸話、小説も含めて)を知ることなのです。

数え上げればキリがありませんが、植物園に出かけても今まで以上に説明板を詳しく読んだり、植物名にもこだわりを持って由来を探ってみる気構えが必要ですね。

 

第1回試験・問57

植物をデザインした紋所のうち,次にあげる紋所は単純な曲線美のデザインのために、多くの人に好まれました。 この植物はどこの道ばたにも生える小型の多年草で、葉は3小葉で雨が降ったり夜になると閉じ、黄色で小さい花が咲きます。葉をかんでみるとすっぱいのが特徴で、スイモノグサの名もあり、昔は鉄製の鏡などを磨くのに使われました。 この植物名を下記の中から選び番号で答えて下さい。

1.シロツメクサ

2.ムラサキツメクサ

3.チドメグサ

4.カキドオシ

5.カタバミ

第2回試験・問39

1957年に「国蝶」に選定されたオオムラサキは初夏から夏にかけて雑木林をすみかにし、樹液を吸いに集まります。オスどうしはなわばりをつくり特定の空間を占有する行動をとります。 このオオムラサキの幼虫の食草となる植物名を下記の中から選び番号で答えて下さい。

1.ドロノキ

2.ヤナギ

3.エノキ

4.アワブキ

5.ハルニレ

 

正解は 5.カタバミ  3.エノキ
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