QJYつうしん Web-02号       平成12年4月22日〜24日

ユリの香りに包まれて 伊江島のタッチュー・城山(ぐすくやま)172m

初夏の沖縄

那覇空港に降り立つのは今年もう3度目だ。何度も来ていると、空港の通路に置かれたコチョウランなどの花に迎えられてふるさとに舞い戻ったような気になるから不思議だ。

いつものレンタカー会社で今回は大きな車を貸してくれた。ナビまで付いているが、慣れないものを使っているとよけい迷いそうなので使わない。

こうして車で空港を出発するのが午後3時だから、広島−那覇線はもっと早い時刻の出発にしてもらえないものかといつも思う。

すぐに高速に乗り、許田のICから名護の市街へ向かう。

事前に得た情報で、道の駅の先に旧道がありここにテッポウユリが植えられているという。

その場所はすぐに分かった。

沖縄の巨大な墓が並んでいる場所の所々にユリがたくさん植えられている。花は盛りまではあと一週間というところか。でもユリはつぼみの状態でも白が際立って美しいから見事と言うほか無い。

デイゴの花が咲き、アカバナやシマアザミも並ぶ。

北部ではちょっと道をはずれると、未開発の土地が多い。そのためクワズイモやヘゴの木がジャングルさながらに繁っているのが普通だ。南部ではもうあまり見られなくなった風景だ。

名護湾に沿って走ると、ダンプが多いのに悩まされる。サミットを控えて、高速もいたる所で工事中だし、前はこんなことなかったけどなあと首をかしげながらのドライブだ。

名護球場近辺のハスノハギリ林に車を停めて、海を眺めているとなんだかほっとするが。

結局、夕方までぶらぶらしていて、「夕焼け市場」というレストランを見つけて夕食とした。
豆腐がおいしいスクガラス、トンボフライ(トンボマグロのカツ)、ソーメンチャンプルーなど沖縄独特の料理をいただいて本部町のホテルに着いたのはすっかり暗くなってからだ。

伊江島ゆり祭り

翌朝は9時の定期便で伊江島に渡る。地元では伊江島はイージマと呼ぶから、とってもいい島だといいな。

夜の間に降雨があったらしく道が濡れていた。しかしこの日は薄日が差し雨の心配は無さそうだ。何度も沖縄に来ているが、雨が降ったことは無い。

さて、本日は「ゆり祭り」のイベントの日で、船は満員、着いた港でバスに乗り込み「リリーフィールド」へ送ってもらうわけだが、ついでに観光地を巡るバスがあったので、それに乗ることとした。

最初に寄ったのがアーニーパイルの碑、この地で戦死した従軍記者アーニーパイルの慰霊碑があり、先日慰霊祭があったばかりだ。サミットの折にはクリントン大統領夫妻にもここに来てもらおうと言う計画がある。

バスは葉たばこの畑の中をのんびりと走る。 葉タバコ

ニヤティヤ洞は火山岩で出来たこの島の聖域でいろんな言い伝えの残る場所。 ニヤティヤ洞

涌出(ワジー)は海岸で清水が湧き出る。周囲にはリュウキュウコスミレやナンゴクネジバナが足の踏み場も無いくらい咲いている。 ナンゴクネジバナ 湧出(ワジー)

どこを走っていても城山(ぐすくやま)の鋭い山頂が見えるのは嬉しい。それはこの島が平地であることを意味する。故に台風の被害を受けてきた歴史も想像がつく訳だ。

防風林として植えられたのだろう、モクマオウの木が多い。それに絡みつく青紫のノアサガオ。

そして最後に目的地「リリーフィールド」に到着。

バスを降りるなり、甘い香りが鼻をつく。今や30万本とも言われるテッポウユリの数、もっともここのユリは植えたもので品種もいくつかある。咲き具合は、と言うと、今年は予定通り5月連休にドンピシャリ合ったようだ。つまり今日は少し早すぎた。でも昨年は早すぎて連休より前に満開だったというから自然は思うようにいかない。 リリーフィールドのテッポウユリ

実は植栽のユリは旅の表向きの理由で、本命はここにある村指定の天然記念物「ハダの植物群落」を見ること。海岸に白い杭が立ててあり、その場所はすぐに分かった。

ヒメキランソウ、キケマン、シマアザミ。ちょっと早いがハマナデシコ。

ハマボッスやオニタビラコ、ソナレムグラ。海に向かってクサトベラが多く、ジシバリやウスベニニガナ、キキョウラン、クサスギカズラやイソマツが見つかる。

火山岩の海岸は歩きにくく危険だが、ハマナタマメやグンバイヒルガオの昨年の実を見つけては図鑑で調べているともう昼になってしまった。

会場の出店で買ったマーナウブシャは一種の蒸しパン、ゲットウの葉で包んである。 テントの売店
仲村柄節という琉球和歌が教育委員会の手で石碑に書かれていた。歌の意は「すだれがかけてあったらどうぞ忍んでいらっしゃい」という、意味深長な歌。え?教育委員会が立てたって?

ギンネムの林のそばにアワユキセンダングサが咲き、モンキアゲハが飛び交っていた。ムラサキカタバミやボタンボウフウ、ハママンネングサも満開状態。

城山(ぐすくやま)

リュウキュウコスミレの種を拾って、歩いて会場を出た。2キロくらい歩いて伊江島のシンボル「立塔(たっちゅう)」とも呼ばれる城山に登るためだ。それはここを初めて見た30年前からの願いだった。そして歩いていればいろんなものが見えてくる。だから後からやって来る車がおせっかいにも「乗っていかない?」と声をかけてくれても困るのだ。

それはたった1台きりだったのが、実はちょっと寂しかったが。

畑のタバコの花をまじまじと見るのは初めてだ。ピンクの優雅な花、葉の生育には邪魔なので次々と摘みとられていたが。

飼われているニワトリはレグホンでは無く、ウコッケイだ。それも皆放し飼い。食肉の伊江牛やヤギを飼っているうちも多い。知念さんや古堅さん、宮城さんの表札。宮城さんは沖縄風に言えばニアティヤグスクさんか。

電照キクの産地であることはすぐにわかる。ゴーヤ(ニガウリ)の畑もあった。もうかぼちゃが丸く実っているぞ。トウガンも転がっていた。


この島に1500戸ある家の1000戸は農家だそうだ。

野生のテッポウユリはいたる所で出くわす。テッポウユリはおしべの葯(やく・花粉の袋)が黄色であることで他の白いユリと区別がつく。

アメリカフウロやツクシメナモミ、ルリハコベやナワシロイチゴが真夏のように咲く。 タッチュー

さて、城山(172m)への登山口はしばらく舗装道路を歩くこととなる。ガードレールに沿ってハイビスカスやハナチョウジが咲き乱れている。モクマオウとハスノハギリ、ユウナの大木が繁っている。その間を美しい蝶「リュウキュウアサギマダラ」が飛んで行く。

中腹のレストハウスまで15分、下の販売機でサンニン茶の缶を買っておいて良かった。日が差してきて暑いくらい。さらに10分でもう頂上なのだが、とにかく急勾配で休み休み登る。

シャリンバイの咲く頂上は島全体が見渡せる。

こうして見ると、小さな島だ。
三角点

伊江島と広島の接点は?と言えば牛の品評会が広島であり、毎年出品されるとのこと。そしてもうひとつ、大事なことがあった。広島と長崎に飛んだあの爆撃機B29は米軍に占領されたここの飛行場から飛び立ったのだ。

頂上を吹く爽やかな風とは違う、なにか重いものを感じながら、私は飛行場のまっすぐな線を見下ろしていた。

アーニーパイルよ、もう少し長生きしてあの悲惨な出来事を伝えてほしかったなあ。

3時の臨時便で本部港に戻り、やんばる亜熱帯園のヒカゲヘゴを久しぶりに見てみよう。

夕食は名護の「ブラジル食堂」に寄る。

瀬底島のビーチ

三日目の天気予報は雨だったのに、朝から快晴で気持ちがいい。

本部町から橋が架かっている瀬底島へドライブしてみる。旅行中の若い男性が海に入っていた。停めてあった車のナンバーが「わ」なのでレンタカーである。白い砂と青い海。この海の色がたまらない。

火山岩が浜辺に突き出し、テッポウユリが崖の上に咲く。

前方は伊江島。間をタンカーが横切る。

砂の上を歩くヤドカリと私。

男性に「冷たくないか?」と声をかけると「ちょっと冷たい。」と返事が返ってきた。波打ち際を歩くけれど足が気持ちいい。
水納島(「みんなしま)を見る瀬底ビーチ

浜辺にハマダイコンが咲いていた。

ビーチサンダルのまま、車に乗り込む。

7月のサミット会場になるブセナ岬にも寄ってみた。さすがに警備が厳重だ。

海中展望塔で魚の群れを覗く。

帰りの昼食では雑誌「るるぶ」で紹介されていた恩納村・瀬良垣ビーチのレストラン「ル・ソレイユ」で780円のランチに驚く。
1200円取ったって文句言わないよ!これにスープとコーヒーがつく

最後はいつものとおり、那覇の漫湖で鳥の観察をしながら時間調整、今回も天気に恵まれ楽しい旅を終えた。