QJYつうしん Web-04号       平成12年7月9日〜11日

再びサガリバナ、桃源郷に咲く花に魅せられて・・・

魅せられた花

沖縄フリークたちの集まる掲示板(インターネットの話)で大阪の女性が三線を下さると言う。一番に・・・の、つもりはなかったが、私も応募してみた。昔から弦楽器は好きでギター、バンジョー、ウクレレ、三味線など弦が一部切れていてもなんとか弾けるくらいの腕はある。

でも三線は初めてなので、欲しかった。

映画「ナビイの恋」をその前に見ていたのも影響したのかも知れない。テレビでもサミットのこともあり、最近は沖縄を特集することが多い。とかく沖縄の人の歌好き、三線好きは驚くほどだ。

そこで応募してみたら、すぐに送って下さると言う。それも全く知らない私にタダで。

その後、一歩遅れて申し込んだ女性がいた。神奈川県在住の女性。実は彼女とはその前から三線の話をしていたので、なんとも申し訳ない結果になってしまった。そんな出来事があって、彼女が沖縄に遊びに行くと言うことを掲示板に出していた。なんと私の計画と一日違い。

よし、彼女にあの素晴らしい花を見せてあげよう。

それぐらいしないと収まらない。

台風後の沖縄

神奈川の彼女は羽田空港で相当出発を待たされて前日の夕方着いたらしい。

その時は雨でどこにも出かけなかったようだ。私たち(妻と娘)はこの日の午後3時にレンタカーを借りる。広島便だといつもこの時刻になる。

到着した那覇空港は雨上がりでやや涼しい感じがする。これなら広島のほうが暑いぞ。

すぐに高速を走って向かうのは「ビオスの丘」、数ある沖縄の植物園の中で一番好きな場所でもある。今回はじめて同行した娘は農園勤務だったこともあって花屋さんの花に関しては専門分野でもある。もっともバンダやカトレアなど普通は温室で栽培されるランが露地で咲いていることに驚いていたが。
ビオスの丘にて

そう、沖縄の気候は亜熱帯と言うけれど感覚的には熱帯雨林のそれに等しい。道路にカポックが植栽されていたり、ナンヨウスギやモクマオウの大木、プルメリアやホウオウボクの花を見るにつけ娘の目が輝き始めた。植物園では着生ランが実際にヒカゲヘゴに着いていたりする。娘は着生させる木片のことを「へご」と呼ぶ訳が分かったようだ。

「なかむらそば」で夕食

万座ビーチホテルまでの交差点と言う交差点にはあきれるほどの警官の数だ。パトカーや白バイも多い。あげくはホテルの中にまで私服の警官が歩いている。もっとも私服はアロハシャツやTシャツで、腰にトランシーバがぶら下がっているのですぐ分かる。制服の警官は気の毒だ、必ず長靴で青い警官服。直射のもとでは相当暑いことだろう。

チェックイン時には夕方になったのでさっそく「沖縄そば」の店に行こう。「なかむらそば」は知る人ぞ知るそばのうまい店。万座ビーチのすぐ「そば」だ。

自家製麺を自慢するだけあって、たしかにうまい。ソーキもラフティも最高。

などと舌鼓を打っているうちに本日顔を合わせる彼女からの電話が鳴った。広島の天気が分からなくて飛行機が飛んだのかどうか心配して下さったようだ。今夜の「サガリバナ鑑賞会」が楽しみだと言う。待ち合わせ場所を決めて夜の8時過ぎに名護市真喜屋の近く羽地中学校の前で待つこととした。

午後8時を過ぎて、現れたGAL4人組は明るい若い女性グループだった。何しろメールでしか話をしたことが無いので、若い人達なのかおばさんなのか分からなかったのだから。

桃源郷

さて、昨年を思い出しながら真喜屋のサガリバナの場所へ向かう。

あたりはすっかり暗くなり、住宅地の街灯も無い道を5分くらい歩く。昨年初めて来たときのことが脳裏をかすめる。おや?ずいぶん明るいぞ、何人かの人達がベンチに座って我々訪問者を迎えてくれた。





そして目に入ったのが樹齢150年と言うこの場所のシンボル、サガリバナだ。

見事に咲いている。大木の全体を覆うように、テニスボール大のふさふさの毛玉が何十、何百、いや何千と・・・。その名のとおり垂れ下がって咲いている。


昨年は同じ時期に来たのだけれど、早く咲いた年だったのでこれほど豪華に見られなかった。今年は遅れ気味なのでどんぴしゃり満開。とりあえず、神奈川の4人には面目が立ったかな。

「どちらから?」この地で「舞香花(モーカバナ)を守る会」の会長をしている金城さんから声がかかった。「広島と神奈川から、この花を見に来ました。」
甘い香りにうっとり

この一言はどれほど金城さんを喜ばせただろう。

本当に私たちはこの花を見に来たのだから。

金城さんはひとつの花に200本以上のおしべがあることや、長い穂では1メートルを超すものもあることを話してくださった。

あたりに漂うおしろいのような甘い香り。次々やって来るカメラを持った訪問者。金城さんは忙しく説明しながら沖縄の家の構造などを説明してくださる。

サガリバナ科サガリバナの別名「舞香花」はここだけの呼び名だそうだ。「沢藤(サワフジ)」は西原町での呼び名。それぞれの地でそれぞれの呼び名がある。つまりそれだけ人に愛された植物である。

ここには他に数本サガリバナの木があり、すべてピンクの花をつける。(西原では白花の木があった)

どれも満開でまさにここは桃源郷、ずっとここで語り明かしていたいほどだったが、気がつけばもう夜の10時だ。そろそろ引き上げなくては。

いつまでもこの木が素敵な花をつけてくれることを願って、帰路についた。

いつもの沖縄

二日目以降は万座ビーチ、ブセナビーチ、やんばる亜熱帯園、伊豆味パイン園、ゴーヤパーク、ネオパーク、東南植物楽園といつものコースを忙しく回って沖縄の自然を満喫した。

今回は娘がはじめてついて来たので、植物園の数を増やしたが、特にゆったりした東南植物楽園、放し飼いのフラミンゴがいるネオパークが良かったと言う。私は万座ビーチのサブマリンJr.などは自然の魚が水槽のように横から見られるわけだから貴重な体験と思うのだが。たった30分でも船酔いしやすい人は苦しいかも。
向こうは万座毛

晴天の沖縄の紫外線の量は半端じゃ無い。

海には夕方5時を過ぎてから入った。
サブマリンJr

万座ビーチホテルは屋外にプールとジャグジー風呂があり、そちらでも楽しめる。そばを警官が歩いているのを除けばいつもの沖縄だが、最終日には報道陣だろう、大勢の背広を着た外人さんグループのバスが出入りしていた。万座ビーチホテル

サミットの期間中(20日前後)に来るつもりは毛頭なかったが、想像以上の厳戒態勢だ。

今年に限り7月の沖縄は止めたほうがいいだろう。 広島に帰ると雨上がり、涼しい気がした。

結構うるさい

それでも沖縄

旅が好きになると沖縄のようにゆったりとした場所は、日頃の社会生活からの逃避行をしているように思える。

那覇の近辺は都会だから、広島とあまり変わりが無いようだが、北部の自然たっぷりの海や山は今やふるさとのように感じられる。

ヒロシマと同じような運命をたどったところ。

今も米軍との共存が数々のマサツを起こす。

中国の脅威を千年以上も耐えて、今本土からの観光に生きなければならない。沖縄全体が歴史的にも風俗的にもチャンプルーなのだ、それもゴーヤのたっぷり入った苦い味のチャンプルー。

しかし黒砂糖の甘さを隠し持つがゆえに曖昧な立場をとらされ続けた現代の沖縄。

今、サミットの幕が開かれる。が、それが何をもたらすのかは期待しても仕方の無いこと。

楽しみだったビアフェストも中止になり、ビーチは制服を着た警官が立ち並ぶ。

終わればただの騒動だったと誰もが思うだろう。自分たちの県でまかないきれないイベントを敢えて受けなければならない小さな地方都市は今も通り過ぎてゆく台風に翻弄されている。