QJYつうしん Web-05号 平成12年9月10日〜13日(+1日)
台風まで歓迎してくれた、南の島の夏休み
おなかいっぱいの旅
沖縄・宮古島
プロローグ
遅まきながら今週は夏休み。
いつもの全日空トラベルで格安の¥48,000−、宮古島でこの値段は嬉しいよ。
ただこの時期、安い訳がある。宮古島は台風の通り道として余りにも有名、出発前から14,15,16号と三つも歓迎委員会が出来上がっていて、どれかに直撃を受けそうな気配だ。ただ、今週は休みにしたので足止めを食うのは全然問題なし。同行の娘なんかは、何日いてもいいよと情けないことを言って励ましてくれる。「おまえ、予定っちゅうものは無いのか?」
私にとって宮古島は、実に32年ぶり。
初めての沖縄旅行が宮古島だった。
その頃は大きなリュックを背負ってこの地に来る本土の人は非常に少なかった。
まだドルが流通していた頃のこと。
広島からの直行便は無いので、那覇で飛行機を乗り継ぐ。
4日間と言っても、行き帰りの2日はほぼ移動日のみということになる。
実質2日の旅だから見てまわる場所は、十分吟味して決めておかなきゃ。
一日目(9月10日)
広島を定刻12:35に出発したANA277便は青空の徳之島上空を通過した。島がきれいに見える。
たぶん2日程度は快晴の日々が待っていてくれそうだ。
那覇で乗り継いで、宮古島に到着したのが10分遅れの16:00。しかしレンタカー会社の手続きで30分ほどムダになる。明るいうちにいろいろ回りたいのに。
快晴の宮古島は緑豊かな島だ。農地は例外なくサトウキビ畑。半分は刈り取りの時期、半分は植付けの時期でもある。
娘の運転で今回は楽をさせてもらおう。
到着したのが「砂山ビーチ」。狭いけど海のきれいな、また細かい白砂が自慢のビーチだ。宮古島のビーチはどこもシャワーなどが整っていて、無料なのがいい。ビキニの女の子が多いぞ。ただ、海は多少荒れ気味で大きな波がどど〜んと打ち寄せ、そのたびに歓声が湧き上がる。
【後日談】
沖縄の新聞をwebで読んでいたら、9月16日砂山ビーチでサーフィンをしていた男性がサメに襲われて死亡したと出ていた。おーこわ。
花をつけているモンパノキやクサトベラ、タイワンソクズ、オオムラサキシキブが目に入る。
オオハマボウ(ユウナ)はどれも実を付けているから花の時期はとっくに過ぎたようだ。
南西諸島に多いアワユキセンダングサは普通に見られる。おやランタナまでが雑草だ。花に群がるシロオビアゲハは黒い蝶。
さて夕陽が沈む時刻は18:40だ。あまりにもこの時刻の差に驚く。広島では一ヶ月早いか。
北端の西平安名崎(にしへんなざき)から池間島へ大橋を渡ろう。この島には湿原があり、野鳥や水生動植物の宝庫として名高い。
風力発電の大きなプロペラが4基、岬にはソナレムグラの小さな花。満月の今日あたりは池間島名物のカニがうろうろしている。
春にはこのカニの産卵のため車の通行が制限されるのだそうだ。
夕陽を見たあと、夕食の心配をしなくては。とにかく「宮古そば」を食べてみたいものだ。
ちょっと走るとゴルフ場があった。本土のゴルフ場のように気取らないから、食事だけでも中に入れる。
三人でソーメンチャンプルーや宮古そば、ゴーヤチャンプルーなどたらふく食べてしかもびっくりするほど安いから沖縄は大好き。
ちょっと量が多いのが気になるが。
二日目(9月11日)
朝のホテルのロビーは、掲示されている白板に注目だ。台風の動向が地図とともに示してある。こんな小道具があることも宮古島のホテルならでは。
15号、16号はどうも南の方へ消滅したようだが、14号は南大東島に近づいて来ている。速度が遅く(毎時10〜15キロ)、どんどん発達しているのが気になる。テレビで言う波高13mの波とは・・・。当然、船便はすべて欠航。
台風と沖縄の関係はとても深い。テレビを見ていると、その対策も進んでいると思う。ガラスを使ったビルの周囲にネットを張り巡らし、飛んでくるものを受け止める。植木の保護もスマートだ。この宮古島でも道路上の工事看板も倒して石が乗せてある。台風慣れとでもいうのかなあ。
宿泊のホテルは「ホテル・ブリーズベイ・マリーナ」、2月にオリックスのキャンプの宿舎になっている。ここは朝のバイキングの種類の多さに驚く。本島の「万座ビーチ」あたりよりはるかに多い。
朝食後はホテル周囲の遊歩道を歩いてみる。自然のままの浜辺と磯に沿って20分も歩けば、隣接している「ドイツ文化村」の施設に行ける。
ホテルのプライベートビーチは海岸性の植物でいっぱいだ。
咲いているのは、ハマゴウ、クロヨナ、グンバイヒルガオ、イソマツ。アカバナ風のかわいい花をたくさんつけるイソマツの花の時期は今だったのか。ソナレムグラ、アメリカハマグルマ、アワユキセンダングサはもちろん咲いている。
ブッシュの中を見て驚いた!巨大なジョロウグモが巣を張っている。南西諸島特有のオオジョロウグモだ。体長は5センチ以上、足を広げると大人の手のひらくらいの大きさになる。
足元にはヤドカリが歩き回る。大きなオカヤドカリがプラスチック製のキャップに体を入れていた。
モンパノキ、クサトベラも咲いている。テッポウユリの咲きがらもある。
タイドプールとなっている場所ではパンを持ってばら撒くと、青い熱帯魚がたくさん集まってくる。
ホテルの廊下側、すなわち島の内側には途方も無く広がるサトウキビ畑。ザワワンザワワンと強い風にしなやかなキビの茎が曲がっている。
ここのホテルは宮古島を三角形に見立てると、その底辺の中央位置にあるのだが、今日の予定は東方面である。
ゴルフ場を抜け、イムギャーマリンガーデンなる場所に行こう。
沖縄独特の岩礁に囲まれた静かな海とそれを見下ろす公園の施設がある。
ここでスキューバの初心者は講習を受けている。海の中からプクプクとあぶくが上がってきて、下に人が潜っているのがわかる。
遠い海原にはリーフがあり、白い波頭がきれいだ。
一日ぼけーっとしていたい場所だ。
さらに東には風力発電施設と太陽光の発電施設。折りしも、夜のニュースで沖縄電力が値下げを発表していた。このような従来からの代替発電施設の充実が値下げの理由らしい。
そして一気に宮古島最大の観光名所「東平安名崎」(ひがしへあんなざき)に向かう。途中には断崖絶壁。
白い灯台と雄大な海。もっともその先端まではずいぶん距離があるが、断崖になっているので海を見下ろして散策できる。海の雄大さが一段とひきたつわけだ。大きな波が岩にぶつかり、クリームソーダのような白い波が美しい。台風の余波で大荒れなのだが、空はまだまだ青く、日差しもきついぞ。
ここで昼になり、帰り道の「宮古島海宝館」で食事と世界の貝の展示を見る。
宮古空港で入手したパンフレットに割引券があったので、トロピカルフルーツのサービスや入場割引をしてもらう。
シャコガイやオウムガイ、ベニオキナエビスなど。おっ、西表島で拾ったクモガイも。猛毒を持ったイモガイによる被害もあることなど勉強になった。
名物「オッパイ山」を見て、島の中心部にある「みやこパラダイス」に向かう。
ここでは蝶を放し飼いにしているのと、植物園的な公園などがあり、のんびりできるのだが、いつ雨が降り出すのか分からない状況になってきた。風は強くなりあまり屋外の散策する気持ちにはなれない。早朝から動き回ったので早めにホテルに戻り、夜のヤシガニツアーに備えよう。
夜8時半にホテルの周りの歩道をあるいて、ヤシガニは見られるという。
懐中電灯を持って、海岸に出ると昼間は見られない大型のオカヤドカリが歩き回っていた。
ヤシガニは小さいものでも握りこぶし大、大きなものは30センチ幅もあり料亭などで売れるため、獲られてしまうと言う。
ヤシガニ
すぐに海岸を歩いている両手くらいの大きさのヤシガニが見つかった。結構機敏で後にすばやく動く。ヤドカリの貝を持たないやつだと思えばいい。大きなハサミは指など挟まれると大変だそうで、手をだすわけにはいかない。ここではココヤシの木は無いので食べるのは主にアダンの熟した実。いたいた5メートルくらいの高さに実ったアダンの実にくっついているヤシガニ。
結局4匹見ることが出来た。ガサガサという音で見つけるのが一番だと言うことがわかった。
ちなみに、雑食性のヤシガニは煮て赤くなるものは食べられるが、そうでないものは食べると毒があるそうだ。
三日目(9月12日)
【台風14号】
これほどゆっくり来られると待っているほうもいやになってしまう。(いや別に待っている気は無いが)
さすがにホテルはしっかりしていて窓を閉めると風の音がしないのだが、見下ろす海面は突風で波が立っている。と言っても、ここのビーチはリーフからかなり離れているせいか、スキューバの講習グループは朝から活動しているぞ。
雨は降らないが、風の中を歩いて「うえのドイツ文化村」に出かける。
ここの象徴である「マルクスブルク」(城)の中には中世のドイツの城の中を再現してあり非常に興味をそそる。続いて隣接している「キンダーハウス」ここはグリム童話の世界、昼食はドイツのビールというのは当然か。
酔ってしまってホテルで寝てしまう。
夕食は平良市内の中華料理店で。
そこで市内で一番大きな本屋を紹介してもらい、地元出版の植物関係の本を買い込む。これはいつものパターンだ。
今回買った本に「沖縄民俗薬用動植物誌」ニライ社¥2,100−がある。薬用にした動植物と用法が記述されていて興味深いが、動植物以外にも面白いものがあって、「やけどに女のパンツを使用する」などもある。う〜ん、長寿のひけつか。
夜の10時。今夜は旧暦8月15日、十五夜だ。あちこちで豊年祭りが開かれている。
上野村野原地区の「マストリャー」を見学に行った。男女30名位が踊る、男は棒を振り回し、女は竹を手に持って鳴らす。テレビ局は何社か来ていたが、本土の観光客は我々くらいだ。もっともこの祭り、9時始まりのはずだがやっぱり沖縄、時間を守ってはくれない。マストリャーは一種の豊年祭で、漢字では「升取屋」。人頭税の時代に貢租を納めた祝いに、部落の男女が酒を酌み交わし、また来年の豊年を祝ったという。
四日目(9月13日)
来間大橋を見て、東急リゾ−トホテルに寄って見ることとした。おみやげの店に寄るためだ。朝、空港に電話した時点では飛行機は飛んでいるという。台風は名護市を通過してもう東シナ海を北上しているのだから。
昼食は平良市内の「バナナキッチン」、例によってチャンプルーや宮古そば、タコライスがうまいぞ。何より500円の定食には驚く。
さて、レンタカーを返し空港のカウンターに向かって、あ然!
予定便が「欠航」と書いてあるではないか。欠航だよ、ちっとも結構ではない。同じようにかばんを持った女性がこの案内を見て、ドサッとかばんを床に落としてしまった。
そんな時はすぐ電話してくださいと、広島の「全日空トラベル」で言っていたのを思い出した。結局、何もしてくれないで「カウンターで手続きしてください」だって。それなら自分でホテルもとるよと電話を切る。
ANKのカウンターでは1日遅れの同予定で航空券の変更をすぐ対応してくれた。そしてホテルは適当に1軒目「アトールエメラルド」に電話してみる。台風の特別値段で一泊朝食つきで5、000円でお願いしますと言う。違うホテルもいいもんだ。こちらとしても今週休みにしているので、全然問題なし。ホテルでは欠航の昨日と今日は大広間に無料の卓球台を準備していてくれた。
台風の特別割引があることを初めて知った。
ちなみにブリーズベイでは¥8,000−と張り紙があった。でもこう天気が悪ければ海のそばのホテルの意味が無いので、アトールのように市内で便利な所がいい。
さて、市内の散策をしよう。風は強いが雨も降っていないのでこれも問題ない。どうして欠航なの?と思うが、那覇はひどいのかも知れない。東京―宮古島の飛行機は発着しているのだから。広島は直行便がないもんなあ。
市内の民家の庭先でバナナがなっていた。すごいよね。
垣花恵子さんの恵子美術館(入場:一人500円)に寄ってみる。ちょっと暗いが刺激的な作品が多くもなし少なくもなし、ちょっと寄るには適当な美術館だ。やはり飛行機が飛ばないので来たというカップルも一緒だった。
夜は歩いて市内に飲みに出た。「串屋」で沖縄料理を満喫する。
【メニュー】
ジョッキ×4、串×10、ゴーヤの天ぷら、あつあげ豆腐、地鶏のにんにく串、春巻き餃子、親エビの串焼き、スクガラス、メンタイコのサラダ、ソーメンチャンプルー
これだけ食って飲んで、¥7,100−でした。量が多くて、本当に安い。
五日目(9月14日)
こうして予定外のもう一泊の夜が明けた。表題にある「+1日」の始まりだ。
雨が降っていて、風も昨日よりひどいのだが、結論は「飛んでいる」のである。
午前中には平良市総合博物館にタクシーで向かう。
人文科学の分野と自然史の分野の大きく二つに分けられていて、見るものすべてが珍しい。ここに来て台風に感謝したくらいだ。
台風と言えば、博物館に台風に関する展示があるのも宮古島らしい。昭和41年、のちに「コラ台風」と名づけられた18号台風は、何と最大瞬間風速85.3メートル/秒を記録している。上には上があるもんだね。
オオジョロウグモの名前もここの人に教えてもらった。珍しい写真も見せてもらう、メジロが巣にかかってジョロウグモの餌食になっている写真だ。学芸員の人も「ウソかも知れない。」と言っていたが、ありえる話だ。
昼食を空港で、と思い出かけてみると、よかった、今日は飛んでいる。
ANKの那覇―宮古は4便あるが、予定便よりひとつ早い便に換えてもらって那覇まで帰ることとした。何故って?この便が30分遅れとなっていたから。予定便が遅れると広島便に乗れない可能性がある。
台風の東急ホテルにて
結局、見るべきものは見られたし、台風ハプニング、祭りやヤシガニのオマケもあってとっても充実した旅でした。それにしても食べ過ぎたよ〜。