QJYつうしん 30号

     休日は山にいます

 平成8年7月6日

 初夏の遅れを究JYする  芸北町/高岳(広島県)1054m PART2

定点観測

観察の基本中の基本、定点観測にはいくつかパターンがある。代表的には特定の植物などを対象に時節の変化につれてどう変わっていくかを観察するもの、夏休みのアサガオの観察記録などは覚えがあるだろう。

今回実施したのは、ちょっと違って、同じ山に前年と同じ日に登ってみること。

だから記録を残しておくメモ帳「フィールドノート」は大事だ。

春の訪れが2週間遅かったといわれる4月の山の花、それが初夏の7月に入ってどれくらい戻ったのだろう。

残雪の山は間違いなく2週間の遅れを見せた、NHK昼の特集では尾瀬は6月でも雪原のまま、三原のエヒメアヤメも2週間の遅れ。

鳥の専門に問い合わせると、コルリは2週間、アカショウビンは1週間遅れたということ、全般に2週間の遅れと言って過言は無いそうだ。

これらの遅れはコブシやマンサクでは影響大で結局開花をあきらめた木がほとんどだ。

北方系の植物と南方系の植物が混在する広島県の植生には特に厳しい異変だったのかも知れない。

今回の定点観察は、この時期に来て昨年の開花状況と比較することによって、自然の営みを身近に感じ取ろうというもの。

昨年の高岳

QJYつうしん第2号を見ていただくと良いが、登ったのは昨年7月8日、ここの目玉はイチヤクソウ、目が慣れてくるとあちこちに咲いているものが見つかった、と書いている。

それだけでは無い、かわいいウメガサソウもあって、喜んだのを覚えている。

さらに記録では、ヤマボウシ、ネジキ、ソヨゴ、ヤマアジサイ、ササユリ、イワガラミ、ノギラン、オカトラノオ、ウツギ、リョウブ、ヒサカキ…

ほんでもって今年は

結論はそう急ぐことはない。

なにしろこの日は絶好の山日和。梅雨の合間の土日がこのところ面白いように晴れてくれる。絶好の山日和というのは、前日まで雨で当日晴れるパターン。澄み切った空気で山頂からの眺めが期待できる。

登山口は手前に良く似た雰囲気の場所があり間違えやすい。実際間違えるところだった。高岳登山口の標識があるのでそこを入って行く。

早速われわれを迎えてくれたのがコアジサイとヤマアジサイ。うーん、ここまでは昨年と同じだな。杉林に沿って雨で水量の増した流れがとてもきれい。ちっとも濁っていない。

湿地植物であるクサレダマ(サクラソウ科)が小さな蕾をつけて立っていた。ちょっと不思議だぞ。葉が対生(2枚)のもの、3枚4枚と輪生のものがある。観察の面白さだ。図鑑でも確かにそう書いてある。杉林の中にアカショウマ、足元にチジミザサを見ながら進む。

水場(昨年は流れに沿って歩いているのに、わざわざ水場の案内を見て笑ってしまったが。)まで来るとイチヤクソウの調査だ。

残念、見つからない。2株蕾があっただけで、ほとんどが葉のみか花芽状態。ウメガサソウなどかけらも無い。

この場所から登山らしい坂が始まる。ネジキやソヨゴはまったく花を付けていない。

コナラやミズナラ、ナナカマドの雑木林の道は快晴の太陽を遮ってくれる。登りやすい山道だ。昨年蕾を確認したノリウツギは全然気づかなかった。

鳥の声はウグイス、ホトトギス。ま、これは山では定番の音。もちろん、昨年も今年もセミの声は聞いていない。カエルも湿地があるのに鳴いていない。

観察をしながらの山歩きは約2時間で頂上をきわめる。ここまでが展望のきかない山道だったのに頂上は最高の眺め、眼下の聖湖はもちろん360度パノラマ。雨上がりの奇麗な空気が心地良い。

 

一級品の山

高岳の魅力は何と言ってもその頂上。山好きの人は誰もが頂上は展望のきく山が良いと言う。それはそうだ、せっかく尾根伝いに展望が良いのに頂上は生い茂った潅木で何も見えない山がある。がっかり山と呼ぶ。

この山は三角点が中央にあり、その上に地図を広げ、コンパスも置いて周囲の名だたる山々を確認する作業も頂上での楽しみのひとつ。

広島県の地図を開いてみたが、島根県との境でもあり、あまり役に立たない。5万分の1の地図を何枚も必要とするのか。山登りもたいへんだ。

近くのブッシュの中からウグイスの声がする。

姿を見せない注意深さはたいしたものだ。参加者が一様に感心する。

本日、呼応して下さった全9名のパーティはしばし、山からの眺めにうっとり。

すれ違った他のパーティーは2組、この山の良さは知れ渡っている様だ。

おっと、定点観察を忘れてはいけない。山頂の楽しみにササユリがある。香り豊かな夏の高原の女王、登り切って会えるところがまたいい。

昨年はジャストのタイミングだったが今年はやや終りに近いぞ。数も少ないし。

外見とはうらはらに

今まで紹介した花がすべて遅れ気味なのにササユリだけが先行していたようだ。

さて、その理由は。

なかなか春にならず、つまり気温が上がらなかった4〜5月にくらべ6月は広島カープ、じゃなかった、気温は急に平均以上に上がってしまった。球根から6月になって地上に出てくる植物だからむしろ一気に成長してしまったのか。

気品の高さを誇る「女王ササユリ」の意外なあわて者ぶりを発見したような気がする。

うーん、そんな人いるよね。

ますますササユリが気に入った。




県の代表 その5 鳥取県の巻

県木ダイセンキャラボク(イチイ科)

基本的にはイチイの変種と言われている。自生種は大山と氷ノ山にしか無く、大山では特別天然記念物となっている。

県花二十世紀ナシ(バラ科)

この木は恐らく誰でも納得するだろう。5月の連休の頃、鳥取県をドライブするとナシ畑の白い花が目に入る。一帯に匂うナシの香りはこの地方の風物詩。

県鳥オシドリ(ガンカモ科)

鳥取県の水鳥と言えば、中海の白鳥などが思い浮かべられるが、オシドリは渓流の近くや湖に冬やってくる。特に日野郡日野町の鵜ノ池が有名。美しい雄の羽の色は一度見たら鳥が好きになる。