QJYつうしん 35号

     休日は山にいます 平成8年8月11日

 秋はまだかい、残暑はつづく  芸北町/三つ滝(山県郡)

とごうち花街道

R191を芸北方面に走ると、土日には青空市が出ている。車で走っているとつい通り過ぎてしまうので、立ち寄る所はだいたい決めていて、戸河内方面では土居駅高架下にある小さな無人市がいい。種類が多く安いのだそうだ。

今の時期、本命はトマト。熟したものを3〜4個で100円だからタダみたいなもの。これを滝巡りで水の中につけておいて食べる。

トマトだからトマトの味がする。当たり前のことに感謝、つまり、うまいと言う事。

三段峡駅を過ぎて松原の左カーブを曲がると、とごうち花街道が始まる。はっきり言ってあじさい街道。芸北町までのR191を道の両側のあじさいがドライブの友になってくれる。

時期的には当然もう遅いのだが、3年前の冷夏の時など秋まで楽しめた。

今は日陰の地域で青い花が美しい。日当たりが良い所はもう終っている。

駐車は日陰を考えて

聖湖は青々とした水をたっぷり貯えていた。

道は狭いけど窓を開けて車を走らせる。風が心地よい。真夏の広島市内を抜けて来たのだが、ここだって一年で一番暑い時。

低木の枝の先端に白い花をつけたノリウツギが今を盛りに陽を浴びていた。他には走行中の車内からは、咲いている花は見当たらず。

花も少ない時期だ。

太田川の北部の源流は八幡湿原からこの聖湖に流れ込む。樽床ダムに仕切られた柴木川はこのあと三段峡を経て瀬戸の滝の立岩からの水系と合流し加計町で太田川となる。

樽床ダムの堰堤を渡ったところがちょっとした駐車スペースとなっている。

先客は7台くらいあっただろう強い日差しを避けて木陰は占領されている。太陽は真上にあり炎天の駐車は仕方ないか、と思われたが、それでもポケットからコンパスを取り出しこれからの太陽の動きを想像する。

予想ではクリの木の下がこれから陰になるぞ。みんな知らないのかなあ、帰りが楽しみ。

三段峡の五大壮観

原始林の中の渓谷美、と言えば東の横綱帝釈峡に対し三段峡は西の横綱と表現して間違いない。広島県を代表する渓谷だ。春から秋までハイキングの名所でもある。あまりに俗っぽいので観光地化したと嘆く人もあろう。実際はここまで残された自然の雄大さを実感出来る最後のリゾートかも知れない。

戸河内町と芸北町を延長約13キロに渡る峡中に五大壮観という景勝地が指定されている。

戸河内町の猿飛二段滝三段滝そして今日これから歩く芸北町の三つ滝竜門だ。

人造湖である聖湖がこれほど奇麗なら秘境三段峡を形成する三つ滝がつまらない筈はない。

何度も訪れているが、暑い時期だからこそ清流の山歩きは涼しくて楽しいものだ。

自然観察とは、じっくり見ること

すれ違う人達は皆家族連れ、緑の中の清流の山歩きを楽しんでいることだろう。ただ服装や足回りを見るとちょっと危なっかしい。滑りやすい渓流沿いの道はサンダルでは無くせめて運動靴、出来ればトレッキングシューズをはいて欲しいものだ。

コバノミツバツツジとダイセンミツバが並んで立っていた。ミツバ系ではもう一種類あるようだ。サイコクミツバなのかも知れない。もちろん今花が咲いていないが三種類の葉の感じは全然違う。

こういうことでフィールドノートをしっかり取る心掛けが重要となる。

そう、自然観察とはじっくり見ること。

時間をかけて観察することで興味が広がる、意識が高まる。覚えやすい。

クサアジサイとヤマアジサイの違いもそうだ。結構並んで咲いているが、ヤマ・・はもう終っている。クサ・・は今が旬の花盛り。

木本と草本の違いは茎をじっくり見比べれば分かる、がクサ・・の花がこれほど奇麗とは。

観察してみて分かることは、クサ・・の葉は互生、ヤマ・・の葉は対生である。

装飾花はクサ・・のそれが3枚の花びらなのに対してヤマ・・は4枚が多い。

じっくり観察は足を止めて見る余裕から生まれる。


例年なら実を口に入れながら歩くはずのヤマボウシが全然実をつけていない。足元にはキンミズヒキ。大きなムラサキニガナ、タキナ(ウワバミソウ)やシモツケソウも見られた。

赤い実のムシカリ(オオカメノキ)が多いが、実を付けていない木は既に冬芽を付けているのに驚かされる。そう、あの宇宙人の手というかカモシカの足がついているのだ。

オオイワカガミやコアジサイを見つけると花の時期に来なければ、とメモに取り掛かる。ミヤマママコナは花を付けている。

おっと、ネズミノブラジャーがあった

これは私が名付けたヌスビトハギの別名。可愛い花なのにヌスビトハギはちょっと気の毒な名前だ。だから私はネズミノブラジャーと呼ぶ。その訳は実の形を見てもらえれば分かる。

実際にはオオヌスビトハギとかヤブハギかも知れないけど細かい話はどうでもいい。

植物の名前は所詮人間がつけたもの、自分流の呼び名で問題無い、もっとも他人には分からないので問題有りか。

あまり気品の無い名はこの際変えてやったらどうだろう。ヘクソカズラやボケ、ブタナやハキダメギク。ヒトリシズカのアイドルぶりは許さんぞ。


え?ブラジャーのどこが気品があるかって?

ついでに三つ滝周辺に名も無き滝が多くあるので、皆さんこれは、という名前を付けてみたらどうだろう。将来認知されるかも。

竜門で食事としよう。渓流の中の岩に腰を下ろし足元を見るとスミレが実を付けていた。どんな花か、来年の予定がここで出来上がる。


周りにはブナの実もたくさん、ダイモンジソウらしき葉が多い。これでは秋にも来なければならない。ハスノハイチゴの大きな葉。大きな葉と言えば、ヤグルマソウが花を終え実を付けていた。ヤブデマリか赤い実の木が。ダンコウバイやトイレットペーパーの木(ハクウンボク)もある。


昨年来たときに印象に無かった倒木が竜門橋を過ぎた所にあった。その時はソバナの花に感激したものだが今年は一株見つけたのみ。

ここのソバナは名前のとおり岨(ソマ:切り立った崖)に多い。

日陰が多く夏の散策には絶好の三つ滝、

キャンプしてる人達も一日中焼き肉してないで、たまには歩いてみればいいのに。

さてこの後は長者原のサギソウでも見に行こう。ミソハギの咲く頃でもある。

はたして駐車していた車は?

クリの木の木陰で涼しく待っていた。大正解、側溝にはおたまじゃくしがたくさん。