QJYつうしん第4号 平成7年9月27日

いっぱいあるよ、自然公園 おおの自然観察の森/大野町(広島県)

秋の楽しみは爽やかな空の下、ハイキングで食べるお弁当とおいしい空気。もちろん、それが手軽に楽しめる場所が有れば最高だ。広島市内からそれほど離れてなくて、自然を満喫できる公共の施設がたくさんあるのに、意外と知られていない様な気がする。


今日はそんな自然公園を一気に紹介しておこう。
これからのお奨め、第1番手と言えばここ、「おおの自然観察の森」。10月に入れば最大の呼び物「べニマンサク」の登場だ。シロモジと並ぷソハヤキ植物の代表格で、本名をマルバノキと呼ぶ。マンサク科の低木で、この時期が素晴らしいのは何と言っても、紅葉の美しさとマンサクの名でも分かるが不思議な形をした花、但しマンサクが細い花弁を4個持っていて春を告げる花であるのに対してべニマンサクは10月に咲き5弁である。そして足元には果実から飛び出した艶のある種、これらがすべて同時に見られるのだから、ベニマンサクは誰からも愛される。ちょっと時期は早いが先日「秋の芸術祭」参加作品を提出するため出かけてみた。

芸術祭とは自然に関する作品を展示して各自の活動をお見せする、いわば、文化祭のようなもの。私はここの会員でもあるので、昨年、一昨年と撮した写真の作品を出しに来たわけだ。題名は「山で出合った三人娘」、今年の春の分も加えて、一挙120点の公開だ。お暇な方はべニマンサクの季節、10月にどうぞ。


駐車場に着くと、なにやらここにふさわしく無い黒塗りの乗用車が1台。受付に入ると、いつも愛想良く迎えてくれるチーフレンジャーの東常さんの姿が見えない。代わりに初めてお目に掛かる斉藤さんが、その訳を説明してくれた。本日の見学者として高知県から橋本知事がご夫婦で来られているのだ。東常さんの交友の幅広さか。実は高知県では「ヤイロチョウの森」を作ろうとしている、とのこと、参考になるくらいここ「おおの自然観察の森」は先端を行っているのだ。ヤイロチョウとは八色鳥のこと、実際は何色有るかは是非調べてみて欲しい。

えっ?図鑑が無い?鳥の本は1冊あると便利ですよ。芸北町が昨年出版した「芸北の自然」にも写真が出ているから見て欲しい。もっともここに出ているヤイロチョウは県外での撮影とのこと、それくらい見ることの難しい鳥だ、ちなみに「県外」とことわった正直者は私の職場の同僚「保井 浩」で、鳥が大好きで「焼鳥」は絶対に喰わない「鳥追っかけ」人間だ。


ここのいいところは、鳥を間近に見られることと権現山と言う風光明美な山に代表される自然公園としてのスケールの広さ、湿原や森の生物の多様さ、そして何より東常さんのユーモア溢れる話ぶりだ。私のここの利用法として、文献の豊富さも魅カの一つだ。
小さな子供達にも読めるような絵本から動植物の専門書、各自然公園のミニコミ誌まで、長期休暇を貰えばここで何日か過ごしていたい程の資料の数だ。



ベニマンサクは当然の事だが、4月の桜も知られざる穴場である、いや冬の雪の季節に公園内に残るテンやウサギの足跡を追跡するのも面白い。つまり1年中面白い所である。


「おおの」以外のお奨めポイントは、
県の緑化センター(安佐北区福田)
市の森林公園(〃)
市青少年野外活動センター(安佐北区飯室)
三滝少年自然の家(西区三滝)




ちょっと遠いが、
県立もみのき森林公園(佐伯郡吉和村)
近くないと駄目と言うなら、
比治山公園(南区段原町)
ええい、遠くてもいい、と言うなら、
岡山県立森林公園(上斎原)
反対にあんまりオススメしないのが
中央森林公園(広島空港)
国営備北公園(庄原市)



四季折々にそれぞれ楽しめる良い所だ。日曜日、朝起きて天気がいいな、と思ったら、お弁当を持って是非出かけて欲しい。身近な自然観察をするのが一番だ。ちなみに備北公園以外は入場無料である、さらにほとんどの所で駐車料さえ無料なので安上がり。わが家では各地の公園までの周辺道路で無人市があれば必ず寄るようにしている。これをただの八百屋と思ったらおお間違い、農家で出来た作物には絶対にスーパーなどでは手に入らない珍しい物もある。例えば「ポポー」なる果実(バンレイシ科別名アケビガキ)、不思議な味だ。味噌、たくあん、吊し柿、よもぎもちなどいなかの母があちこちにいる様なもの。時にはわさびや舞茸など珍品も手に入る。購入のコツは出かけに寄ること、帰りに寄ってもまず残っていない。切花など車の中でしおれては困るものはバケツや新聞紙などを用意する対策も必要だ。


「おおの」の次なる紹介は県の緑化センター(安佐北区福田)、県立広島緑化植物公園とも言う。園内の広さは抜群、樹木に名札も付いているので植物名を手早く覚えようとする向きには絶好の場所だ。ウィークデーなどではがらんとして自分の山みたいに独占できる。鳥の観察もでき温室もありちょっとした小山もあるのでおそらく1日では回りきれない。ただ残念ながら交通の便が悪く自家用車が必要となる。また休園日が12月から2月の間だけ日曜日であることを知っておかないとがっかりする。


ここから府中の呉娑々宇山(682m)まで山道が続いていることをご存じだろうか、藤が丸山を経由するルートで、実はまだ歩いたことが無いのでこれ以上は説明出来ないけれど呉娑々宇山3ルートの一つである。他のルートは良く知られた府中の水分峡、もう一つは私の大好きな水谷峡ルートだ。大好きな理由は滝の多い変化のあるコースで入り口はJR安芸中野駅近くから入る。新緑の季節は本当に気持ちが良い。


続いて、市の森林公園 昆虫館(パピヨンドーム・有料)が目玉であるがデイキャンプ場まであることは意外と知られていない。県の緑化センターに比べるとスケールが小さい。小さい子を遊ぼせるには最適か。
青少年野外活動センターはより自然に近いアウトドア生活の出来る条件を備えている。
牛頭山(689m)の短いけれど急峻な登山もあり、隣接のこども村では農場や工作館などの施設を利用する子供達の歓声がたえない。ここが広島市であることはちょっと気付かない。


三滝少年自然の家は間違いなく最短距離の施設であるが、個人的に利用する所ではない。駐車場も狭いし、研修施設と言う名目の場所である。ただアスレチック遊具などもあり個人的に利用する人はあるようだ。ここを起点に宋箇山(356m)をまわり三滝寺に降りて来るコースはハイキングコースとしての価値は高い。武家の茶道である上田流にちなんだ宋箇山は縮景園の借景とされた山だそうだが、ビルの乱立した現在の広島市にはその面影も無い。ただ頂上からの眺めは悪くない。


ちょっと遠い、と奮いたもみのき森林公園はその不便さを凌ぐに十分な魅カを備えた自然公園の王者でもある。冬のスキーも含めて1年中遊べる所。年間を通じてイベントも企画されている。レンタサイクルを利用した園内の自然観察も可能だ。民族資料館ありオートキャンプ場あり、真夏の広島を抜け出して何度ここに涼を求めて来た事か。秋のビッグイベント、ファミリーマラソンの完走後のぜんざいの味は抜群で有る。


比治山公園は車で手軽に行けるため、車道を歩いているとちょっと危ない。黄金山、絵下山もそうだがマイカー族専用の小山は自然観察の場所としては、少々いらだつこともしばしば。排気ガスも多く、ベンチでお弁当を、と思うのは変人なんだろうか。しかし自分が子供の頃、比治山の木の一本一本を覚えていた思い出もあって、候補地からはずすことが悪いような気がする。どの木にはニイニイゼミが、どの木にはアブラゼミが、昆虫少年だったあの頃を忘れ去ることは出来ない。
あおの以外の紹介が簡単すぎ、またお奨めしない理由を述べるスペースが無かったが、これらは分かりやすい場所でもあり、一度は訪れてほしい場所である。



<<写真撮影ワンポイントアドバイス>>
風のある日の撮影
いくら三脚でカメラを固定しても花が風に揺れていてなかなかシャッターを切れないことがあります。花の写真の難しさを実感するのはこんな時。特に陽があたらない薄暗い場所だとどうしようもありません。
ここで威力を発揮するのが「ストロボ」。ストロボのシャッタースピードは数干分の一秒ですから少々の風なら関係なし、ただ花のアップを撮るときは近付きすぎて、花が白く飛んでしまいます。
ストロボに薄いガーゼをかぶせて発光力を落としてみましょう。あとはどの距離ならどれくらいの明るさになるか自分のカメラの特性を知るのも重要なこと。