QJYつうしん 45号     休日は山にいます 発行 QJY通信社 平成8年10月12日

ちょっと天気の悪い日は 近所を歩く 太田川の河川敷(広島市)

 


小雨模様の国体開催日、選手やイベント参加者のことを思うと、これくらいの雨で家の中にいては申し訳ないぞ。

と、いう訳で、おにぎりを持って近くの河川敷に出掛けた。普段ジョギングで通過して時々足を止めて見ているので、一度じっくり観察して見たかった場所でもある。

オオヨシキリであろう今はギョギョシ、ギョギョシと鳴かないが、アシの穂のてっぺんにとまっている。ノビタキかな?鳥も良く覚えなくては、と反省。

イシミカワ(タデ科)

花は終り独特の青い実がブドウのように連なっている。河川敷全般で見られ、トゲがあるので厄介なツル性植物。

奇妙な名前は「石実皮」だという説、ちょっと名前が浮かんでこないのは仕方ないが、あまり山ではお目にかからない。

茎の途中に一種の托葉だろう丸い襟巻きがある、本葉は三角なのに面白い。

同じタデ科のママコノシリヌグイと絡み合っていた。

イヌホオズキ(ナス科)

河川敷というとついツル性植物を連想してしまうからこれもツル性のヒヨドリジョウゴとばかり思っていた。こうしてじっくり観察すると実がヒヨドリジョウゴのように赤青に変化せず、最後は黒くなっているのが分かる。

従ってこれはイヌホオズキ。河川敷の花はもうごちゃごちゃと絡み合ってツルでないものもツルに見える。

白いモンシロチョウがまだ飛んでいる。こうして良くみればたくさんの花、荒れ地性の雑草と蔑まされても、したたかに生きる。

マメアサガオ(ヒルガオ科)

この花は初めて見る。帰化植物らしいが出身地ははっきりしないらしい。

花の径が1.5センチと可愛らしい。

図鑑で確認するまで名前が分からない。ややピンクがかった白い花はどちらかというとキキョウの仲間か、と思ったが葉はヤマノイモふうでツルギキョウとも違う。

そして種子を見て普通のアサガオと変わらないのでルコウソウなどと同じヒルガオ科であると確信した。

ツル性でも地面を這う。間からコオロギが勢い良く飛び出してびっくりさせる。何かが出てきそうな悪い予感、河川敷は、だから足が遠のく。

ハッカ(シソ科)

河川敷に本物のハッカがあるなんて!、香りも本物、図鑑で調べても間違いない。

花満開の時期は香りもいい。スペアミントほど高貴な香りでもないが、どうして河川敷で虫もつかないで育つことが出来るのだろう。

虫のタマゴらしきものがついてはいたが、庭のスペアミントはもっと葉が虫の餌食になるから、ふしぎでならない。

夏から秋遅くまで花が見られ、葉をつまむと良い香り、ナギナタコウジュを思い出す。同じ仲間だ。花の時期もこの頃。但し花のつきかたは全然違う。

葉の裏を10倍程度のルーペで見ると、腺点らしき色違いの丸い点が確認できた。

ぶつぶつと凸状かと思いきや、平面だ。

触ると芳香を放つ仕掛け。

兎にも角にも野生のハッカは太田川に存在する。

ハッカ

メハジキ(シソ科)

別名を益母草(ヤクモソウ)と言う。つまり民間薬の名前、母さんに利益になるのだ。分かりやすく言えば産前産後の薬である。

しかしこのメハジキという名前は何だろう。

色々調べてみると、シソ科特有の角張った茎を子供が瞼にはさみパチンとはじいて遊んだのが由来らしい。ちっとも理解できないところが面白いが、花の形はもっと面白い。

良く似た花にオドリコソウがある、いやチョロギにも似ている。湿原のシロネにも似ている。

野山では見たことがない、河川敷の特殊な植生にうっとりしてしまう。

茎の上部と下部では葉の形が随分違うぞ、花瓶に挿して楽しむならこれ以上面白い花は無い、花屋さんで売っていても不思議は無いほど楽しい形の花。

 

 

カナムグラ(クワ科)

カナは金属を意味する茎の強さを表わし、ムグラはその茂る様子を示した。

思ふ人 来むと知りせば八重葎(やえむぐら) おほえる庭に珠敷(たまし)かましを

万葉集の作者不詳のうた。

好きな貴方が来られるのが分かっていればヤエムグラの茂る(手入れの行き届いていない荒れ放題の)庭に珠を敷いてお迎えしましたのに…

「荒れた庭」と言うのは謙遜の表現か、彼氏の来訪を喜ぶ女性の歌と思える。ヤエムグラは今のカナムグラ、あるいはヤブガラシと言う説もある。「珠敷かましを」は実際に敷物を敷く訳ではなく、客を歓迎する意味の枕詞。

独特の葉の形、株に雌雄あり雑草の代表だが万葉の花ということで親しまれる。女性にこんなに喜ばれたことが無いので、単なるお世辞としか思えない私は不幸な男。

ヨメナ(キク科)

山では圧倒的にノコンギクと出合う。その違いは花の間にある冠毛。ヨメナはそれが無い。こうしてやや水気が好きな花なんだと言う事が分かれば、次から見つけやすくなる。

河川敷と言う事で遊びに来た人が気軽に持ち帰る花でもある。うす紫の優雅な姿は廃棄物の多いこのあたりには可愛そう。もっときれいな場所で咲かせてやりたい。

ヨメナは嫁菜。植物で「菜」が付くと食べられる植物であることは確実、食べられて花嫁のように優しく美しい。

例えばノコンギクはちょっとざらついた感じが有り、ヨメナは柔らかい女性の肌。

ちなみにムコナは今山で見られるシラヤマギクのことだそうだ。ちょっと可愛くない白い菊。同じ食べるならヨメナの方がいいに決まっている。

その他もろもろ

遠目に見えるはセイタカアワダチソウ、近づいて見えるは先月まで元気良く咲いていた実を付けたヒガンバナ。

オナモミやイノコヅチはこうして訪れる人達にオミヤゲを付けてくれる。

アキノノゲシ、オオマツヨイグサ、ヨウシュヤマゴボウも紹介してよ、と咲いていた。

秋の河川敷は意外と山では見ない花を見せてくれる。セイタカアワダチソウしか見えなかったら、とにかく出掛けてみること。

目からウロコの河川敷でした。


{編集後記}

庭のシュウメイギク(秋明菊)が咲き始めた、別名を貴船菊又は秋牡丹。同時にツワブキも。名前や姿から考えればシュウメイギクはツワブキと同じキク科の花かと思う。

ところがキンポウゲの仲間と聞き、驚く。実がならないと思ったら八重咲きなのだ。

つまり栽培品種で、野山にあってもそれは庭からの逃亡者。