QJYつうしん 51号 平成8年12月20日

休日は山にいます

発行 QJY通信社

ナベヅルの里を訪ねて 熊毛町八代/山口県

水鳥のシーズン

山陰にいた頃、斐伊川の河口での冬の水鳥観察は楽しいものだった。オナガガモを筆頭にキンクロハジロ、ヒドリガモ、ウミウやシギ類、田んぼにやってくるタゲリなどが愛敬をふりまく。

白鳥海岸の異名をとる中海の意東地区ではオオハクチョウさえ混じりコハクチョウの大群が多かったのを覚えているが、その数が極端に減ってきた頃、斐伊川河口にはコハクチョウがどんどん増えていた。

のんびりカメラを向けてその姿を追ったものだが、ある日、松江の浜佐田という辺りにソデグロヅルが一羽やってきたことがあった。

人を全然恐れないため、どこかで飼われていたツルに違いない、と報道されたが、人々に愛され「おソデちゃん」と親しまれ、一ヶ月くらい撮影のモデルになってくれたのが懐かしい。

冬の厳しい山陰もこうしてアウトドアが充実していることを理解して欲しいものだ。

八代のツル

ソデグロヅルは群れになって日本に来る訳では無く、ほとんど迷ってやってくるのが実状のようだ。渡来の記録では約7種類が日本では確認される。

代表的なツルはマナヅル、ナベヅル、タンチョウで「真鍋さんて単調ネ」と覚えて下さると非常に嬉しくナイ。テレビで良くお目にかかるタンチョウは北海道にやってくるので、近くにやってくるナベヅルを見に出掛けてみた。

山口県は熊毛郡熊毛町、山陽道の熊毛ICを出て北に向かうと八代地区は案内板で普通は間違えることなくたどり着く。

岸信介、佐藤栄作の兄弟宰相の故郷、田布施町は「田布施川さくら健康マラソン」で昨年冷たい雨の中を走って健康を害しそうになった辛い思い出、伊藤博文生誕の地、大和町もあり熊毛郡はなかなか有名。最南端の上関町など5町からなり熊毛町はその最北端、キャッチフレーズはツルといで湯の里

ところが近年は極端にツルの数が減り、ひょっとしたらもう姿を見ることが出来ないのではないかと心配されている。

そんな予備知識も得るために、まずは「鶴いこいの里交流センター」に寄ってみることをお勧めする。次に歩いてすぐの「監視所」に行けば指導員の方もいて安心してツルを観察することが出来る。

map

 この日は途中に売店が開いてあって、吊るし柿が何と500円、それもたっぷり16個。

そんなことはともかく、今年は18羽が渡来しているそうな。で、双眼鏡や備え付けのフィールドスコープですぐにきょろきょろ捜すのだけれど、見当たらない。

群れになって飛ぶカワラヒワやカラスは確認したが。館内にはツル新聞が掲示され標本や写真、活動の記録などが並ぶ。

そして、収穫の終った田んぼに目が馴染んでくると、いたいた、首の白い、体の黒っぽい大型の鳥、ナベヅルだ。

2羽、2羽、3羽と全部で7羽が遠くに見られた。はじめて見るナベヅル、警戒心が強いのだろう、時折首を上にあげ、そしてまた地面をつついている。斐川平野のコハクチョウと動作は同じ。

ただ18羽という数は、もはや絶望的な数である。地元の人達の手厚い保護の歴史が空しく終る日が近いのだろうか。

監視所を出てすれ違う子供たちの黄色い帽子にツルのマーク。明るい声で「こんにちは」と向こうから声をかけてきた。この子達に続けてツルを守って欲しいものだ、が未来はそれほど楽観できる状況では無い。

美川町はすごいぞ

ツルの里を出て清流の里山風景に囲まれ北へと向かう。辺りの川の流れが素晴らしい。どこで車を停めても、清流のすばらしさを感じる事が出来る。

根笠方面の途中に国の天然記念物「岩屋観音窟」がある。

そして観音水車「でかまるくん」、直径12メートルの水車は日本一と銘打ってある。

ふたつとも以前看板だけは見ていたが、実際に見るのははじめて。こんな山中に、名所として町が力を入れている

弘法大師が木を刻んで造ったといわれる観音像に鍾乳石の水滴が落ち、木仏が石仏になったという仏像が安置されていた。

入り口に実をつけたベンケイソウ、周囲にはフユイチゴ、サクラの名所でもある。

そして驚いたのは地底王国の出現。

美川ムーバレー

道路を横切る高い斜張橋に「これはなんだ」と、不思議に思わない人はいない。

なにしろ両端には岩山しかないので車が通る橋では無い。人を通すには立派すぎるぞ、と思っていたら、現在一部はまだ建設中の観光スポットだ。入場料千円で入る地底探検。幻想的な地底は昔の鉱山の跡ということだが、何の鉱山かは一切説明が無い。

これは不思議だ。知らないのが悪いのか、それとも教えられない怖い鉱山だったのか。

ともかく、何も宣伝していないので誰も来ないが渡された地図一枚を頼りに入った地底はすべて岩を削ってまるで迷路だ。洞窟と言っても天井は高く、それなりに幻想的な照明もあり、ずっとディズニーランドのイベント館にいる気分。

もちろんここで何か出てきて、驚かされたら一瞬のうちに気絶しただろうけど。

夢とロマンに満ちた岩穴が神秘のベールに包まれて、石像、滝、檻や光の織り成す空間。コウモリが一匹イベントホールへ消えて行った。いったい誰がこんな洞窟を考えたのだろう。 пF0827-77-0111

錦グリーンパレス

途中に雙津峡温泉がある、とりあえず本日はパンフレットでももらって帰ろう。1泊2食ついて平日なら6千8百円、風呂のみは4百円。

労働福祉共済会の宿泊施設なので基本的には安い。 пF0827-73-0211

深谷大橋で雪道に

ここまで来れば帰りは佐伯町からとしよう。

そこで小五郎山の登り口を下見することとする。目的地は深谷大橋、ここから下を覗くと女は漏らし、男は縮み上がる(私の友人が言った言葉)。

つまり、相当高いということ。

見上げる小五郎山は雪をかぶり葉の落ちた樹林が冬の絶景を作り上げる。渓谷沿いの車道はすれ違う車も無く、初夏に来れば最高だろうと思わせる景色。

さらに寂地峡を通り広島県境の松ノ木峠までは道路に雪が残っていた。

峠で丁度、冠山から下山の人だろうか、雪の中を大変だったろう、リュックを背負って下りてきた。元気な人を見るのは気持ちがいい。 工事中だった広い道も完成していてR186と楽に接続されていた。