QJY62号 平成9年5月5日

     休日は山にいます     発行 QJY通信社

これからもずっと うちの裏山  ヒメヤマツツジの 広島市東区/牛田山 261m

 


この山があるから牛田に住む

引越してきた所は前に住んでいた場所から牛田山の反対側、余り変わり映えしないのだが、良く考えてみると広島で一番良く登ったのはやはりここ牛田山だろう。

マンションばかりの住宅地でこれだけ静かで緑がたっぷりあるのは感謝しなければならない。

あらためてこの山と我が家を取り巻く縦走コースを皆さんに紹介したい。

今日は端午の節句、ゴールデンウイークの最終日だ。思えばこの時期今までは遠い所ばかり出かけたものだ。引越しでくたびれて遠出したくない気分もあって、近場の牛田山の山歩きでリフレッシュしてみよう。

昨日夕方、近くの公園で見事に咲いたマツヨイグサがあった、今朝は全然元気が無いではないか。アレチマツヨイグサの荒々しさと比べてマツヨイグサは愛らしい。

上を見るとシナサワグルミの雌花がたくさん垂れ下がっていた。

牛田早稲田口

牛田早稲田小学校の向かって左端に目立たない登り口がある。駐車場の奥になっていてこうして紹介されないで自分で探すとしばらく迷うことになる。

一番ポピュラーな牛田旭口より奥になり、牛田山頂上へは最短のコースだ。

辺りはニセアカシヤの白い花が咲きはじめ珍しいものではヤマナラシの木も確認できる。登り口は狭くて滑りやすいが、自然豊かな落ち着ける道が続く。

クマバチが嬉しそうに飛び回っていた、山全体が虫達のレストランだ。クサイチゴはすでに終り、ニガナの黄色い花が咲き始めた。イヌビワ、サルトリイバラの葉が美しい。

まだツツジが?

良く見るとコバノミツバツツジはすべて終っているぞ。それに葉が違うし花のオシベの数がコバミツは10本だがこれは5本、ヒメヤマツツジだ。今までフジツツジと呼んでいたいわゆるメンツツジ、これを最近東大の先生がヒメヤマツツジと同定したそうだ。かつての隣人石井さんの話。

牛田山の縦走路はコバノミツバが終るとこの花で全山彩られる。花のつきかたも三つ四つと輪生するので区別できる。まるでレンゲツツジかゲンカイツツジのようだ。

ヤマウルシが黄色い花をつけていた。岩場があって振り返るとライオンズマンションの高層ビル。ここの高さはまだ5階程度。

妻が目聡くシュンランを見つけて教えてくれる。久しぶりに写真助手として同行してくれたが女の勘は鋭いものだ。今まで何度珍しい花を見つけてくれたことか。特にラン科にはうるさい。

遠くからもうセミの鳴き声が。

足元でカナヘビがガサガサっとさせる音で、妻がきゃーきゃーと楽しそう?ナツハゼがつぼみを開きかけている。アセビは終り、シロダモは新しい葉に代わろうとしている。

ゆっくり歩いて30分、足元のコシダの新芽を見ていたら白い花が地面一面落ちていた。径7ミリくらいの5弁の花びらと長いオシベでサクラの仲間と分かる。さあ何だろう、と期待しながら見上げる瞬間の楽しさ。

イヌザクラだ。

ウワミズザクラに比べると花穂が小さいのと枝からの付きかたの違い。

あらためて下を見ると花のじゅうたんを敷きつめたみたいだ。ツツジは絶え間無く続く。

山頂の航空ショー

早い人なら30分あれば登れるか。山頂の松林に出れば、もう先人の話し声が耳に入る。

県内に多いソヨゴに多くのつぼみが付いていた。今年のソヨゴはとても花が多いぞ。

山頂のコナラの木の下には7〜8人の人達、丁度昼の時間に合わせたので、多くの登山者の昼食が始まった。

それぞれの山の話に花が咲く。見知らぬどうしの社交場として山頂がある。上を見上げればコナラの大木が花穂を垂らしている。

ビニール袋を持った人がやってきた、それに呼応するかのように上空にトビが舞う。毎日同じ時刻に登ってくるのだそうだ。

木の板で作ったエサ台にドッグフードを練ったボタモチ風の大きなダンゴを置くと待ってましたとばかり一羽のトビが急降下してきた。一度失敗したあとしっかり足で掴んで舞い上がる。近くの木の上にハシブトガラスがとまっていたが、トビの持っているエサを横取りしようと飛び込んできた。

次のトビも来る。華やかな航空ショーの開幕だ。頂上の人達は皆、トビがうまくエサを掴むと拍手する。

市街地の山の動物だからこのくらいの人間とのふれあいも許されるのかもしれない。

牛田東口へ

下山は元の道を返すのではなく、牛田東口(女学院大学正門)へ廻ろう。つまり我が家

の周囲の北側を半回りすることになる。

ゆったりとした道を徐々に下るコースだ。

コバノミツバとヒメヤマの二種類のツツジが時期を分けて咲き、長い間楽しめる市内の山が他にあろうか。色の濃いもの薄いもの、背丈の高いもの地面に這いつくばって咲くもの、飽きない間隔を保つ。

最初にあるのが戸坂への道、次に中山口、大内越えコースと続く。ササバギンランの葉が確認できた。かつて女学院大学の構内へ私有地を経て入るコースもあったが、今はバリケードで閉鎖されている。

常緑のシャシャンボの木が花を付けるのはあと二ヶ月後か。

コバノガマズミとミヤマガマズミが一部花を残しているのも見られた。葉の出てしまったタカノツメ、コシアブラがやはり交互に出てくる。

自然観察には格好の山歩きだ。

東に呉娑々宇山の全容が手に取るように入ってきた。目に入る府中方面も随分開発されてしまったものだ。

すぐ前には市の焼き場のある高天が原だ、妻の家の墓はそこにある。手を合わせ先に進もう。次々と登ってくる人達にすれ違う山だ。コースはそれぞれ、若い者、高齢者グループ、連休に遠出しない愛すべき人々。

山歩きを精神安定剤にしている私達金の無い人種は、こうして心地よい足の疲れを感じながら住み処である「里やまのしぜん」を味わっているのだ。

今回は牛田東口に出るが、もっと先に行けば仏舎利塔のある二葉山に向かうこともできる。もっとも長いルートは二葉山から神田山荘ルートだろうか。

最初の人家「山崎さん」の家から牛田東四丁目の松風園団地に入りイルカフォトスタジオの前を通り女学院大学の交差点に出た。

八丁堀、本通り経由の江波行きバスがひんぱんにやってくるバス停もあり、登り口の牛田早稲田終点と合わせ非常に利用し易いコースでもある。