QJYつうしん69号
休日は山にいます 平成9年7月29日
オオキツネノカミソリの咲く山県郡豊平町/大丸峯(779m)
あまり知られていない山
このところの雨ですっかり増水し濁った太田川を加計町まで遡る。JR可部線安野を過ぎると澄合地区だ。ここから豊平町へ抜ける道はもう少し前だとホタルの飛び交う清流「西宗川」の田舎道でもある。
今日の目的地は豊平町「大丸峰(おおまるみね)」。名峰「龍頭山」に隠れてあまり知られていないが、「町内7割余りを眺望出来る。」と町教育委員会自慢のハイキングコースでもある。
名前から想像すれば、姿の良い山。
もっとも登山口を見つけるのに今回道路工事中で案内看板の反対方向へ走らなければならなかったのには参った。でも、分からないことは出合った人達に聞けば解決する。
狭い日本、耳と口があれば困らない。
まず豊平町に入るとすぐに長笹地区の案内図が目に入る。この道も現在工事中で悩むことになるが、とりあえず左折。すぐに水車小屋があり名所「鬼釜の滝」まで160mと名付けられた場所がある。これから登る大丸峯から流れているらしい。
ここから長笹地区のJAまで何とか行き着けばその向かい側に大丸峯への矢印が立ててある。今回はその矢印方向には道が無くて地元の人に確認したところ「逆走してJAの裏に回れば分かる。」とのこと、ぐるりと回って大丸峯登山口と表示した看板に出合う。
ここに数台の駐車スペースがあり、山の概要も説明してある。
何より心強いのは山頂までの道のりの表示があること。ここから「1710m」とある。
あたりはアキノタムラソウやミズタマソウが咲き、終りかけのウツボグサとともに小さな秋を感じ取る。
あと1650m [奉仕的活動]
60m歩くと登山口だ。杖が多数置いてありひょっとしてきつい山だろうか、と心配するが周囲の植生から、それよりここが豊富な植生を持つ山であると確信した。
イカリソウやシュンラン、シライトソウ、オウレン、キランソウなど春の花の名残の葉を見つける。
入り込んだ植林地はいきなり二手に道が分かれるが良く掘れた直の道が登山道である。
なお、[奉仕的活動]などのフレーズは距離表示と同時に看板に書かれた言葉だ。
あと1500m [初心を貫く]
いきなり足元にトンボソウが咲いていた。
かなり期待していい山だぞ。これから入っていく森に向かい深呼吸、そこに蝶のアサギマダラがゆったりと姿を見せた。今日は曇り空なので心配無いが、かんかん照りでも苦にならないほど樹木が高く覆う。
今は咲いていないがチゴユリやシュンランの葉が登山者に優しい。
あと1000m [根性を持とう]
顔の周りをアブや蚊がしつこくまとわり付く。尾根筋までの急坂は甘くは無い。現に、最初で最後の水場があり、看板に「まず一休み」、とある。
MAP
言われなくとも冷やした烏龍茶で喉を潤す。そして前方に群落化したオオキツネノカミソリがあった。
普通のキツネノカミソリつまりコギツネに比べると花の大きさは当然違うが、おしべの長さは花びらより長く突き出る点で異なる。
そう、この話は第37号で話したよね。
あと500m [逆境を越えて]
尾根筋に出ると急に虫達がいなくなった。風が吹き始めたからか。
[逆境を越えた]せいだろうか。
先程までの半ば植林の道が完璧な雑木林になった。嬉しい。
看板に地元の人のこの山に対する思い入れを強く感じ取ることが出来る。
山道の両側にツツジ類のオンパレード、来年はその時期に来るぞ。
あと300m [平和になる道]
道の真ん中にノギランが元気良く咲いていた。実はこのノギラン、良く観察していると見ている最中に音を立てて花がひとつずつ開花するのに遭遇できる。
ひとつの命の生まれるさまを見る様な気がして嬉しくなること請け合い。
あと100m [理論より実践]
[理論より実践]なんて、あらためて言われると少々「しつこいぞ」と言いたくなるが、なかなか面白い表示だと思う。
もっと山を人生の修練場として若い人達にも味わって欲しいから。
サワフタギが実を付けていたがもちろん色はまだ付いていない。いろんな季節で楽しめる山なのだろう。
途中に大岩を見る脇道もあり変化にも富む。前方に頂上の小屋が見えてきた。
トタン屋根の頂上小屋
何も格言が書かれていないとちょっと淋しいが、敢えて言うなら「論より証拠」、とにかく登頂すればすべて、目的を達する。
二等三角点の周囲に大きな記念撮影用の山頂看板、展望山図。
トタン屋根の頂上小屋は不意の雨宿りに便利だ。
こうして登ってみれば良く出来た山で、雑木林の山道、蝶やラン科の植生、水場と親切な標識など、何故今まで無名なのか不思議なくらいだ。
北に龍頭山、東に海見山がその容貌を見せる。昔は広島市内が見えたかもしれないが、今は樹木が繁って南方面の展望は遮られている。
従って近隣の山「百々山」「五輪山」などは見えない。
東の展望が無くなるのも時間の問題か。
深山峡のコギツネ
大丸峯ではオオキツネノカミソリを見たので昨年普通のキツネノカミソリつまりコギツネの群落を見た深山峡へと向かう。
加計町へは同じ道を返すのが良い。
深山峡は最近開発の手が入り、腹がたつことが多く、足が遠のいていた。車が入れるくらい道を広げ、あれほど見事だったウワバミソウ群落が無くなった。
そして養魚場裏手にあったコギツネの群落も今年は見られない。いや、咲いているのだが潅木が茂り、隠れている。今までは誰かが草刈りをしていてくれたのだろう。コギツネを隠すほどの茂みに、昨年の思い出がかすれてしまった。
ただ、喜ばせてくれたのは元気なフシグロセンノウの花、ガガイモの花。イワタバコのつぼみ。
水量が増し涼しさをくれた滝の水しぶき。
もう、変らないで。
{編集後記}
最近NTTのコマーシャルで大好きな曲が流れている。
ビーチボーイズのグッドバイブレーションだ。数あるポップスとしては最高の名曲。
ブライアンウィルソンは透き通るようなボーイソプラノで多くのヒット曲を作り、歌った。学生時代からずっと今まで、車で流す曲もいつもビーチボーイズ。
夏が来た。