QJYつうしん81



     休日は山にいます     発行 QJY通信社   平成9年11月24日

 稜線縦走・アップダウンの面白さ  天狗岩の 佐伯郡大野町 河平連山 (555m)

 


秋も深まると低山の山道を飾っていたイタドリの花や実も見られなくなり、陽射しの弱まりを肌に感じていよいよ冬の様相に変っていくのが分かる。晩秋の山歩きもできれば春以降の山歩きの参考になるべく、植生を意識した観察を心掛けたい。

快晴の青空を見ながら西へドライブ。R2をJR玖波駅で右折し県道42号を10キロばかり北上すると大竹市飛び地の松ヶ原地区に入る。

再度大野町に入る峠に駐車スペースが作ってあり、すでに6台の車が停めてあった。ここからが河平連山東登山道となる。

2台の車ならここに1台置いて、もう1台で馬ヶ峠登山口に向かえば良い。もっとも田舎道のトレッキングも楽しいから、元気な人は歩け歩け。

天気が良いので早く登りたい、で、この東登山道から登ることとした。

8号峰

足元にツルリンドウの赤い実がころがっている。おや、紫色のリンドウの花が一輪。

三段滝への道標があり、それに従う。

カンアオイの葉がたくさん。落ち葉のほとんどがシロモジであることに驚く。春は楽しみだぞ。

左の方から水の音がして、ここが樽川の三段滝。このところ降らないもので水量が少なく、ちょろちょろと落ちる優しい滝だ。

背に朝日を受けて登る急坂はアカマツやリョウブの瀬戸内海沿岸地域らしい植生。

ヒサカキの実にまぎれてナツハゼの熟した実が多い。ジャムに少しいただくこととする。

城の跡だろうか、石垣もあった。そしてトイレも建っている。明るい稜線の山道は春には最高だろう。宮ヶ谷の大滝と看板にある、右前方に見える岩肌のことだ。

北に見える林道のついた山は上勝成山だろう。
その手前は愛和広島西の二つのゴルフコース。

足元のシュンランは春の超目玉。五月になればダイセンミツバツツジも多いぞ。

長い急坂が終わるとそこは8号峰。三倉岳と遠く羅漢山が見える。

7号峰

大きく下りまた上がり、右手の景色に吉和冠山が入ってきた。右手下には渡ノ瀬貯水池の青い水がきれいだ。

登り切ったピークは7号峰、看板に標高を書いていてくれるといいのだが。

風が無い今日はまさに小春日和だ。

向こうに6号のピークが待っている。

6号峰

連山だからアップダウンは当然、でも7号峰から5分で着くのだから、このあたりは楽な山歩き。標識に三県一望之地とある。

足元の紅葉した草はミヤマママコナらしい。もう花は無いが夏の代表花。

シャシャンボ、ヒサカキ、シキミが目立つ。振り返ると7号のピークがそそり立つ。

5号峰

続いて先に進むと今日初めてのすれ違い人に出会った。登り口で圏外だった携帯電話もここまで上がれば旗が二つ立つ(受信感度を示す、NTTドコモ・デジタルにて)。

連山最高峰、河平山の山頂は男女4人が先客、先程から続くアカマツやソヨゴ。周囲の山々が手に取るように見えるのもここの特徴。

4号峰

風も無いのでリュックの下は汗ばんでいる。

11月とは思えない陽気につい「ビールでもあれば…」と、ちょっと悔しい。

555mの大岩が見えた。4号峰の頂きは水神釜という昔からの雨乞い岩だ。大岩が二つに割れて昔は祭壇があったのだろう。

アップダウンは厳しいがとても楽しい。

3号峰

どこのピークでも休憩や食事の場所となり得る。360度の展望を持つ山は登山者の人気が高いわけだ。山道にホオノキの大きな落ち葉が並ぶ。

2号峰

下って右にトイレ、左に松ヶ原に下りるT字路が現れた。札木峠に下りる道だ。ミヤマママコナが少し咲いている、ツルリンドウ、サルトリイバラの赤い実がきれい。

 

 

再び登り、振り返ると岩山が多いのに気づく。足元注意の札やロープ、トイレなど地元山岳会のこの山に対する努力が嬉しい。

たくさんのハイカーとすれ違い、今日が休日であることを実感する。2号峰のピークに狂い咲きのヒメヤマツツジが一輪。少し下って岩の出っ張りもあり本当に休息場所には困らない山だ。

看板に宮島大鳥居の展望とある。

双眼鏡で確認、弥山の山並みも手に取るようだ。続いて馬ヶ峠に下りるT字路が現れた。帰りはここを下りるつもり。

サカキに黒い実がなり、ソヨゴは赤い。

1号峰

左前方天狗岩とある、がここは直進しすぐ右下の林間にある道を下りる。浅田砲兵大尉記念碑だ。山道をはずれ2分で石碑に着く。ヤブコウジの実、コアジサイの黄葉した葉がある。

大正12年7月17日の飛行機墜落は前方にある0号峰の名前を飛行機山と変えてしまった。

0号峰

ガイドブックに無い0号峰まであるのだからこの連山のピークの数は九つということになる。

最後の急登を上り詰める。ロープまであり、本格的山岳派にはちょっぴり楽しめる山だ。

こんな山を歩いていると、山歩きは知的なスポーツだと思うのは私だけだろうか?

迷わないように赤テープを捜し、下山のために道順を覚える。つまづかないように注意を配り、時間への気配りや天候、仲間への配慮も必要。山頂での爽快感、植物の歓迎を受け感激する。

0号のピークから更に50m進めば、大岩のある本日の昼食の場所に出る。三倉岳や羅漢山に大きく近づいた。なおも青く広がる空、風は無く快適。汗に濡れたシャツを乾かす。

ソヨゴの赤い実が「おつかれさん」と語りかけてくれるようだ。アカマツと九つのピークを持つ花崗岩の連山、稜線山歩きの醍醐味はやはり展望が良いことにつきる。

だからこの日は最高だ。

下山

往路を返して車まで戻るのもいいが、この山の目玉は天狗岩だから、是非馬ヶ峠の登山口へ下りることを薦める。

もちろんこちらから登れば正規ルート、連山のピークを昇順でたどる。

そしてこのルートから見る今にもころっと落ちそうな天狗岩は、大地震でもあればひとたまりも無い。そして登り道とまったく異なる林間の山道を楽しく下りるのも一興。

落ちる前に一目見ておいてくれ。

常緑広葉樹はサカキ、シキミ、ソヨゴ、アラカシなどか。イノシシの掘った跡を見ながら水場を過ぎ、明るい広い道へと続く。グランドが見えてきたらもう反対側の登山口だ。

民家の間の道を通り、駐車した場所まで歩く。春のホトケノザ、ナズナも咲き秋のゲンノショウコ、ベニバナボロギクが咲く。おやタチツボスミレまで季節を間違えている。

獅子岩経由で駐車場所までの平地のウオーキングもまた楽しいものだ。