QJYつうしん103号

       
休日は山にいます     98/7/3
猛暑の夏に逃避行  鳥取県日野郡江府町 烏ヶ山(1448m)

 

休日は大山

  会社の近くに休暇村の事務所がある。時々寄っては、何かお得なパックが無いか調べることがある。  今回見つけたのは、二泊で蒜山と大山登山があり六食ついて¥15,000−と言う。

  梅雨の最中のお得なパックだ。

六食とは登山中の弁当が付くということ。また、休暇村は蒜山と鏡が成の両方に泊まる。食事でも一人1万円クラスの宿泊だから、普通に泊まるのが馬鹿らしくなるほど。もっとも登山に同行まではしてくれないので、登ろうと登るまいと自由だが。

さて、朝の出発を8時とすると、高速を利用せず「下」を走れば鏡が成には丁度昼に着く。

そう、大山は遠いのだ。

本日の山は「烏ヶ山(からすがせん)」、鏡が成の西に聳える鋭い頂を持つ人気の山だ。こうしていきなり休日に大山の山に登れるのは嬉しい。

猛暑の一日、全国で42人が病院に運ばれたと言う。ここだってちっとも涼しくないが広島よりは随分涼しいか。

烏ヶ山は丁度カラスが横に向いた姿を連想するから、と言うのがその名の由来。なにしろ休暇村・鏡が成のフロント嬢の話だから、これホント。

鏡が成キャンプ場から

登りはじめてすぐ昼食となるのはとても残念。

陽の当たらない杉林の足元にはチゴユリとユキザサが小さな実をつける。

エンレイソウやツクバネソウもありその間にブナの実が落ちている。ウリハダカエデやナナカマドも見かける。タムシバに実がなり、ホツツジのつぼみは早い秋を感じさせる。

しばらくは余り楽しくも無い山歩きを強いられるが、ほどほどに花や実があるのが大山の山塊のいいところか。

ヤマジノホトトギスが咲き始めたぞ。

トチバニンジンが多いのは意外、ホウノキ、トチノキは当然か。スギの植林はすぐに落葉樹に代わった。チマキザサの下にはコナスビちゃんやニガナ。ミヤマカタバミの葉も見える。

登り口で二人の登山客に出合っている。

「ま、二時間もあれば登れる山だが、直登なのできついよ。」と親切なアドバイスも受けた。

この二人は下山を象山側からとしている。登り下りのコースを変えることが出来るのだ。ちょっと距離を稼ぐがそれもいいだろう。

当然、花の山歩きをしていると道草ばかりでもっと時間がかかるはず。特に登山口に花は多いものだから余計時間がかかる。今日も今日とてナンゴククガイソウを見つけたりヨツバヒヨドリもあったりして、なかなか先へ進めない。昨年、伊吹山で見たクガイソウと比べると花軸の毛が見当たらない。それで区別されている。

明後日登る予定の大山ではこのお花畑を見るのが最大の目的だ。

バカ直登

かれこれ一時間登っただろうか。

思いの他急峻な山だ。ちょっとジグザグに道をつけてくれればいいのに、直登で一気登山だからなんとも苦しい。

恐らく今まで登った山でこれ以上のバカ急登は無いだろう。ただひたすら真っ直ぐ登り、休むにも休みようが無い。

林の中の山歩きは終わり、きつい陽射しもおまけに付いて、これで花が期待できなかったらがっかり。しかし、東伯方面の視界が開けると気持良く展望が広がった。ちょっとうす曇り気味だが日本海も見える。

眼下に赤い橋、一向平(いっこんがなる)のキャンプ場も近い。大山滝のある好きな地域でもある。そう言えばまだQJYで報告していなかったっけ。

イワカガミは実をつけ、ヒメオトギリの可憐な花が可愛らしい。残念ながらダイセンオトギリでは無かった。

オオカニコウモリの花はちょっと早いか、この花がいい香りであることをもっと知って欲しいものだ。

ハスノハイチゴも葉を確認。

樹木はいつのまにかブナばかりとなり、青空と三悪鳥の声がしきり。三悪鳥とはカッコー、ホトトギス、ツツドリのこと。ま、これは言い過ぎだが、託卵というちょっと卑怯な手段で子育てを任せる、トケン類の総称。生きるためだから非難しては可哀相だが、ヒナまでが自分意外の卵やヒナを外に棄てる行為は正に「悪魔の申し子」だ。

烏ヶ山のカラス

オオカメノキの実がたくさん。

背後に鏡が成の宿舎の全景、気が付いたら随分高いところへ来たものだ。まるで箱庭の中の風景はこれだけでも楽しい。

クサリを使ってよじ登るのは面白いもので、これも高い山の証。またこの山が修験の山であることの証でもある。バカ直登だからクサリが無いと登れない。

やっと頂上かと思ったらまだ先があった。しかし、山道が平坦になって来たぞ。

ウドの実もたくさん。マイヅルソウの葉もある。

さすがにこの辺りのミツバツツジはダイセンミツバツツジだ。ナナカマドは実をつけ、ノリウツギはこれから。それに何と言ってもアカトンボの多さ、ナツアカネと思うがこんな高山にいるかな。

朱色のヤマツツジが残っているが、咲いているものはとても鮮やか。息の長い花だと思う。ホツツジも多い、がまだまだ咲いているものは無い。同じツツジ科のイワナシが葉のみの確認だが、特徴ある姿で残っていた。

するとピンクの丸い花の玉、シモツケが現れた。

シモツケはシモツケソウと並んで大山を代表する夏の花だ。直径5ミリの花がたくさん集まって丸い玉を形成する。

シモツケは下野と書き、今の栃木県、最初に見つけられたのでこの名がついた。漢名で繍線菊(しゅくせんぎく)と言う。繍線は父親思いの少女の名。

すると十円玉くらいの穂状の花が目立ってきた。カラマツソウだ。花の様子が樹木のカラマツに似ているからというのが名の由来。意外だが普通に見られる花でもある。

もっと前方に突然ハッとする光景が現れた、大山の南壁だ。中国地方最高峰そのままにゆるぎなき男性的な雄姿を見せる。

空は雲の動きが激しく、怖いような様相を見せるが、まず天候の心配は無い。

そしてカラスの頭部にあたる山頂が聳え立つ。所々にヤマツツジの朱色を見せて。

山頂の立て札が双眼鏡で確認出来る。何とここにカラスが一羽とまっているのは冗談みたいだが本当の話。

下山は時間の関係で往路を戻ることとする。

早く風呂に入りたいな。

星の蒜山

休暇村には七夕の飾り付けがしてあった。短冊と筆も用意されて「御自由に吊るして」、と言うことらしい。しばらく子供心に帰って見るのも一興か。

そうか今夜は星がきれいだろう、と思って夜外へ出て見ると、満天の星空。不要な電飾が無い分、きれいに星が見える。

ジャージー牛達も寝屋で夢を見ている頃。

  この分だと明日の蒜山は暑くなるぞ。

[編集後記]

レイチェル・カーソン著「沈黙の春」は昭和49年に発刊された本とは思えない、現代の諸問題を提起している。

ところで、皆さんはこの本の文庫本をご存知だろうか。先日、紀伊国屋書店で\1900-の新潮社の装丁本が並べてあったので文庫本が無いか調べて見た。

新潮社の文庫本のコーナーにぶら下げてある目録の本でこの題名の本の番号を調べる。「カ−4−1」と分かったのでそれを出してもらう。

  文庫本ならこれで\552-で買えるわけだ。

  豪華な装丁本を買わなくてすむ。