QJYつうしん104号        休日は山にいます 98−7−4

高原の縦走路 イブキトラノオの咲く 岡山県真庭郡川上町 中蒜山(1123m)〜上蒜山(1202m)

蒜山三座

  朝から強烈な陽射しの歓迎を受けた。        

ジャージー牛達は列を組んで牧場に走り出てくる。彼らは曇空より、少々暑くてもいいお天気の方が似合うようだ。

出発時にお弁当を受け取り、下山路である上蒜山の山麓「百合原牧場」近くのスキー場に車を置く。その後、休暇村の車で中蒜山の登山口まで運んでくれるわけだ。ピストン登山をしなくていいし、暑いアスファルト道を歩かなくても済む。登山のパックというのはこういう事。

蒜山は上・中・下と三座あり、もちろん三つを縦走しても良いが距離は相当になる。明日大山があるだけに中・上で十分だ。

この蒜山の山歩きのベストシーズンは知る人ぞ知るカタクリの季節。丁度連休の頃、または直後か。なにしろ尾根歩きが長く、暑い夏場はバテてしまう。

登り口は「塩釜の冷泉」と呼ばれる泉のそばから始まる。水温10度のおいしい水だ。ここで見送りの青年と別れ、水を補給して歩き始める。この辺りに多いバカ直登だが、八合目までは樹木の中の木陰道だ。

草刈りをしたばかりの笹原と落葉樹林が続く。コナラ、クヌギ、クリ、ガマズミ、ヤマハゼ、コシアブラと確認していたら首が痛くなってしまう。樹木が高いのだ。あ、しんど。

レンゲツツジは花の頃、良く咲いていたらしい。

チゴユリは終わり、ナツハゼはこれから実る。

10分たって一合目がやってきた。やっと山道らしくなった感じ。
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祠のヤマボウシ

と言う事はこの山は0合目から始まっているのかナ。8時半から歩きはじめたので、余裕のスタートだ。クロモジ、ミズナラ、ヤマザクラ、リョウブ、ダンコウバイと優しい樹木が多い。

ちょっとした沢を渡る。

キンミズヒキ、アキノタムラソウ、ヤマジノホトトギスがもう咲き始めていた。

二合目からぬかるみが続き、そのぬかるみの上に刈られた笹が撒いてあって歩きやすい。各合目ごとに10〜15分とすると10時半には山頂に立てるか、とつまらぬ計算をしてしまう。

坂がじわじわときつくなるのが分かる。

ヒノキ林になり直登になった。滑りやすいいわゆるコテコテの地面を歩かされる。いつも思うが樹木の横根に助けてもらっている感じだ。ここを踏みつけて歩くのは申し訳ない。

四合目では丸木段も現れては消える。

開けた場所にはノギラン、ノアザミ、ヤマツツジが咲く。そろそろ休憩しなければ続かなくなる。ここまでが一時間の行程。

まだクリの花が観察できる。五合目にあるのが「日留神社」又は「蒜神社」で、ひるが神社と呼ぶのだそうだ、山の安全と豊かな収穫を祈る。私の場合、収穫とは花の山歩きが楽しめること。

その祠の上に覆い被さるようにヤマボウシが咲いていた。

オオカメノキはもう赤い実を付けているぞ。ヤマツツジもとてもきれい。

六合目では二つ道があるが10mですぐ一緒になる。夏鳥ホトトギスの声、ウグイスも調子良いぞ。またヒノキ林の急坂が始まる。当然横根に足を掛けるような歩き方になり、ヒノキに「ゴメン」。

陰では、湿度が低いためかとても涼しい。冷たく冷えたお茶もおいしい。

クサリ道もあり野趣豊か、と笑っている余裕は余り無い。右手の木の間に下蒜山がちらりと見える。

辛い山道

山道は辛い。

今に始まった事では無いが、このバカ直登め!

ここで一人に追い越される。急坂は辛いが、この辛いと言う字が幸せと言う字に似ているから、もうちょっと頑張るぞ。

つぼみのホツツジ、イワカガミの葉、ブナにカラマツ。ほらだんだん面白くなっていく。気が付けばヒノキは終わりミズナラなどの落葉樹ばかり。

八合目で視界が開けてきた。空が近づき風が心地よい。おかわりまでした朝食もすっかり忘れ、腹が軽くなっている。タテハチョウが腕にとまり、頭にはアカトンボが。

二時間かかって稜線に出た。

方角を示す立て看板が嬉しい。アカモノの赤い実、イカリソウの葉、オオバギボウシの花、おや、イブキトラノオだ。しばらく見ないと思ったらここにいたのか。

笹原にイブキトラノオ首を出し      せつお

と、余裕が戻ってきたぞ。低いカラマツ、何故かノウサギの死体。避難小屋を過ぎて、九合目を飛ばして山頂がやってきた。

先客は絵を描いているカップル。次々と登山者が登って来る。昼まで少々間があるがここで中学時代を思い出す「早弁」、全部食べずにおにぎりを一つだけ口に入れる。

上蒜山の老夫婦

シモツケ、タニウツギが終わりオタカラコウがこれからのようだ。避難小屋の裏に回り上蒜山までの尾根筋ササ原道を楽しもう。

日本海、東伯方面が見渡せる。ギボウシが咲きオカトラノオ、相変わらずのイブキトラノオが嬉しい。アクシバ、ウツボグサ、トチバニンジンの実。

強い風がササ原を撫でて走る。

大山に多いエゾアジサイが見え始めた。クサリ道もある。すれ違った人が「人が多いですね。」と感心している。


中蒜山が背後に遠く低くなってきた。気分はいいぞ、しかし頂上はもう少し先。カッコーの声とノリウツギの白い花がちらほら。

見事に草刈りの済んだ山道にオトギリソウがつつましく咲く。これは随分草刈りでオカトラノオなどの首が切られているぞ。


やっと現れた上蒜山の山頂にはブナ、ナナカマド。うるさいエゾゼミの声がするが、これでやっと弁当にありつける。

ここに老夫婦が休んでおられた。一見して草刈り作業をしていたのはこの人達だと分かった。本心とは裏腹にひとまず、ねぎらいの言葉をかける。


「お陰でとても歩きやすかったですよ。」

「朝の3時から始めて中蒜山山頂が7時だよ。」

すごいものだ、暑かった事だろう。

下山も楽しいね

ここからはまだ草刈りされていない道だ。だから、と言う訳でも無いだろうが、ササユリがとても多いぞ。イブキトラノオ、オカトラノオ、ヨツバヒヨドリ。笹が伸びているから、かき分けながら下りる。

ヤマジノホトトギスの花、アカモノ、スノキのおいしい実。渡り蝶のアサギマダラや気性の荒いキアゲハが舞う。

上蒜山の八合目(通称、槍ヶ峰)から大山、烏ヶ山の雄大な姿、勝田ヶ山、矢筈ヶ山の印象的な姿は素晴らしい。

カワラナデシコが満開だ。六合目では太陽に向かって下山する。暑いよー、クラクラする。晴天がうらめしい。カッコーまでがアッホーアッホーと。

蒜山高原センターの大観覧車が見える。

「今、行くからねー。かき氷やーい。」と声を掛ける。三合目もなだらかな尾根歩き、ウツボグサと秋のリュウノウギクを確認。

ヒノキ林をくぐって牧場を抜ければ、車が待っている場所だ。男女三人のパーティーと話しながら下りていたら明日は大山に登ると言う。宿舎も同じだ。日曜日の夏山大山はすごいラッシュだぞ。