QJYつうしん 112号

         きゅう・じぇい・わい       休日は山にいます 1998/8/29

高取から温井ダムまで42.2キロ   108人の徒歩の旅 山県郡加計町にて



 

高取駅の集合

  たくさんの参加者がアストラムの高取駅に集まった。

乗り込む時点から同じ車両に同じTシャツを着た人が何人かいる。Tシャツはかなり前から配布されていた。そして130名の参加者名簿も。従って本日配られたのは修正参加者名簿と取り止め者の名簿だ。22名の敵前逃亡者、いや根性無し。


広大を中心として国立系の機関の馬鹿が、いや根性ある者が108人、アストラムの高取駅から加計町の温井スプリングスまで「徒歩の旅」と銘打って、42.2キロの歩行だ。

マラソンで走った経験はあるが歩行となるとちょっと想像がつかない。

8:30、予定通りのスタート。アストラムに沿って大原まではぞろぞろと歩道を進む。住宅地の崖にアキノノゲシがたくさん咲く。

リュックをいかに軽くするかで歩行ペースが決まるのでは無いだろうか。中にはカメラを2台ぶら下げた人も。重いだろうな。

若い女性の参加が多い。大学の先生とその教え子達。大学病院の看護婦さん。もちろん年配の職員や教授も。

久地通り

手には事務局特製のハンドブックを携えて歩いた。地図に歩行ルートが明記してあり、今朝は通行止め箇所の訂正もあった。「幸の神」経由のこのルートはある意味では難所だろう。歩道も無く交通量も多いから。実際我々の歩行がちょっとした交通渋滞を起こしてしまった。

しかし歩くと言う事は実に単調な運動だ。せめて走るのならランナーズ・ハイや追い抜きの喜びを味わう事ができるが。だがこれからやっと植生豊かな山道歩行となり、自然観察をしながら歩けると思うと少しは嬉しいものだ。

久地通りの川沿いには実を付けたエゴノキ、クワやアカメガシワと普段なら目を向けない植物が

目に付く。センニンソウやボタンヅルも。黄色い穂を長く垂らしたカエデドコロは至る所で出会う。ヘクソカズラやヤブガラシ、クズなどどうしてこうもツル性の植物が巾を利かすのだろう。

幸の神あたりではネナシカズラが黄色いネットを一面に張っていた。ミズヒキ、ヤマゴボウ、コマツナギはこのあたりの定番か。

タラノキやネムも目に付く。

足元にはチカラシバ、ツユクサ、キツネノマゴ。それにしてもクズの花は美しい。

最初で最後の強制休憩地である西正寺に2時間後の到着だ。ここはブランチをとる場所。麦茶とお弁当のサービスを受ける。出発は11時40分、ここまで10.4キロ来たことになる。

宇賀峡あたりで

歩道が無く交通量の多い久地通りではつい愚痴も出た。

危ネエナ こぼれるグチは クチ通り

トラックの行き交う久地通りをやっと脱出できたのは大川橋。木陰も多くなり右手下に見る大田川には落ちアユを狙った釣り師たちが川に入っている。今更ながら感心する、大田川の風景は実にすばらしい。

スギ林もあり、イヌビワの木もある。

左手に久地冠山の登山口だ。

正午になると中天で陰も無くなった。植栽のブッドレア、クリがある。季節をはずしたヤマブキとイノコヅチやイヌタデの田舎道だ。

宇賀峡を過ぎると先は通行止め区間、土砂が崩れているらしい。つり橋の宇賀大橋では給水車が待っていてくれた。冷水を頭の上から注ぎ込む。ヒー!冷たい、でも生き返る。

秋風と 麦茶サービス うれしいネ

ここの道なら車は確かに通らない。陰の箇所のほうが多くなってきた。ニラの花が多く咲く。この辺りの空気はとてもおいしい、何時の間にかそんな田舎道を歩いていた。

残念だが対岸は交通量の多いR191、つり橋を渡ってその危険な道を歩くことになる。通行止めでは仕方が無いか。

でも、そのお陰でガードレール越しにオニグルミの青い実が手に取れるところにあった。まったく思いがけない樹木だ、サワグルミやノグルミなら分かるがオニグルミが採れるなんて。

道端のクズが「裏見草」の異名どおり、葉の裏を見せて暑い夏の陽を避けている。

ルートは安野の岸辺を通らずに国道のトンネルを歩かされる。最悪、主催者唯一のミスか。

ツルボ咲く道

津都見の集落に入り、可部線に沿ってまた田舎道を歩く。なにやらほっとするから不思議だ。アゼムシロの咲く田んぼはもう稲刈りをしているところもあった。イノシシ避けの電気柵が設けてある。

ツクツクボウシが元気良く鳴き、足元にはピンクのツルボ。マルバルコウソウの鮮やかな赤。

もう一度通行止め区間があり、国道に沿って歩く。坪野から可部線に沿って橋を渡り、田之尻まではまた田舎道、こうして緊張とリラックスを繰り返す。主催者の微妙な意図が読めて来た。

ナガミノツルキケマン、ヤマブキ、ヤブラン。路上のどんぐりはアラカシのようだ。

快調に歩行を続けるが、立ち止まることはしない。仲間とのおしゃべりもだんだん口数少なくなってきた。もっとも前後の人影がまばらだが。

加計町のコンビニ

田之尻の砂瀬橋の下には、5羽のアヒルがガアガアと隊列を組んで大田川を泳いでいた。大水の時にはちゃんと避難しているのか。

国道に戻り加計バイパスの長い加計トンネルに向かう。トンネルはどうも苦手だ。車で通ればあっという間のバイパスも、歩けば相当遠い。

今日一日はうす曇りで、歩く分には丁度良い気候だ。大田川に沿って心地よい風を受ける。

加計大橋を渡った、山崎の交差点ではR186に国道が替わる。深山峡からの小川では子どもがハヤを釣っていた。それにしてもお腹がすいたなあ。時刻は16:43、ポイントごとにハンドブックに通過時刻を記入するようになっている。あと5.5キロの道程。これから登りのきついファイナル。

右手に滝山川の流れを見る。

加計中学を過ぎるとコンビニが一軒あった。昔と比べると自販機やコンビニは適度にあって、手ぶらで歩いても問題無い。

コンビニで 買い食い 童心に返りけり

  確かに買い食いのアイスのうまいこと。

ゴールの温井スプリングス

最後の給水ポイントはちょっと悩む。なにしろゴールしてすぐに宴会のビールが待っているのだから。ちょっと我慢すべきか、でもそれが我慢できるほど、いい状態では無かった。

これから辛い登り道、すぐ後ろにY子さんらが私を抜こうとしていた、など考えてもなかった。

温井スプリングスより先は大雨で通行止めになっている。お陰で交通量も普段より少ない。

自然と歩き方もだらだらとして、自分でも疲れているのが分かる。すると、Y子さんら3人がさっさと追い抜いてくれた。その歩調の早いこと。

すると、人間悔しいもので、そうされると不思議なくらい活力が甦る。

トンネルを出て抜きかえし、ちょっとした満足感を味わう。ダム工事の警備の人も声を掛けてくれる。ありがたい。

警備のおじさんの ご苦労さんも 又嬉しい

到着したのが丁度半ばの51位だった。

時刻は17:55、宴会まで30分だ。到着すると体重計が用意されている。もう、どうでもいいが。

入浴、到着順の席で宴会、ぐでんぐでん……。

「来年はもういやだ。」と、皆言うのだそうだ。でも、また同じ顔ぶれが揃うらしい。

収容車に拾われて到着した人14名、スタッフも親切だ。いや、宴会に遅れたくなかったからとか。

翌朝は6時から自然観察会を開いた。


大学病院の友人からすすめてもらった企画。

歩行中、転んで手首を骨折した人もいたそうだ。整形外科の看護婦長さんとのこと。患者さんからギブスの苦しさが分かったか、と言われる始末。それでも休まず仕事をしているそうだが、当分は「看護不調よ」と名札を変えるそうだ。