QJYつうしん 休日は山にいます 第146号 2000年5月7日
近くの山でも花いっぱい・・シロバナウンゼンツツジが咲く 広島市安佐南区 岳山(521m)
出発前のテンプラ鍋
午前中いろんなことを済ませていたら、登山口で昼になってしまった。本日ここに集まったのは連休中遠出しなかった「安・近・短」志向の十数名。
車の数だけでも林道を埋めてしまう。もっともここが林道の終点であることと、本日他に登山グループが無かったことで、それも許されるか。
岳山(たけやま)はその標高と知名度の低さで、それほど人気のある山ではないが、手軽に山歩きのできる家族向きの半日ハイクの場所である。
車を停めた場所には沢があり、きれいな水と木陰やたくさんの花をつけたヤブツバキが、はやる心を落ち着かせてくれた。
昼食は皆が持ち寄った山菜。
これをテンプラにしたり、煮て食べようと言うわけだ。評判の良かったものは、タラ、コゴミ、ウド。タカノツメ、コシアブラ、ヨモギ、アケビ、ワラビなど非常に標準的。でも、悪ふざけでイチゴやあんころ餅まで揚げられてしまった。イチゴはジャムになったと言う。
フジやツバキの花も悪くは無い。クロモジやホオノキは油に入れた瞬間、とても良い香りがするし、ドクダミはそれなりに利きそう。
シュンランなどは遠慮して誰も摘んで来なかったところは、自然観察派のこの仲間らしい。
そんな訳で山への出発の時刻は1時半になってしまった。
いきなりシロバナウンゼンツツジ
歩き始めると「南無阿弥陀仏」と書かれた仏様が並ぶ。看板にここの水のありがたさを説明してある。確かにきれいな水が流れてはいる。
そして小さな白いツツジ、5本のおしべのシロバナウンゼンツツジが待ってたよとばかりに姿を見せた。時期的にはちょっと遅かったかと思うがまだまだたくさん咲いているぞ。
ツツジと言えばコバノミツバはもう散っているがヒメヤマツツジが今を盛りに咲いていた。赤紫のちょっと小ぶりな春の使者である。
やわらかな日差しが木々の間からこぼれ、歩き出した皆はじっとりと汗ばんでくる。ひとりがモミノキのはるか上方を指差し、カヤランが有ると言う。なるほど高い場所を双眼鏡で探すとうす黄色の花が見える。
すごい!と思ったのは、カヤランの存在より、それを見つけた「眼」!
さて、凡人たちの目の高さにはウスギヨウラクのかわいい花たち。足元にはチゴユリがたくさん咲く。
山道がだんだん登りになって、右手の沢が下に遠のいていく。左手にはマツタケ山特有のテープが張られているから、秋には入山出来ないかもしれない。
ほとんどが植林のスギ・ヒノキ林である。おかげであまり直射日光を受けずに済む。そう言えば、今朝の新聞では午前中の雨の確立が60%、午後30%、曇り時々雨となっていた。
空を見る限り晴れていて、気持ち良く吹く風にハイキングはとても爽やかだ。
イロハモミジの幼木が目立つ。
地面にはヤブコウジ。その上にヤブツバキの赤い花が無造作に落ちている。5月だと言うのにツバキだ、シロバナウンゼンは絶え間なく姿を見せるが、盛りの時期はちょっと過ぎているか。
ウスギヨウラクは本来もっと水気の多い場所のものかと思うが、山道に適当な間隔で現れてくれる。
姫路峠(ひめじだお)から山頂へ
この山にはいくつか登山ルートがあるのだそうだが、代表的なのはこの姫路峠からのルートだ。
それでも山道の踏み跡などから、この山がそれほどメジャーな山では無いことはすぐに分かる。無粋な木階段は無いし、ちょっと道を間違えそうな分岐もある。
看板など一切無いので、樹木に巻かれた赤テープはそれなりに役に立つ。
姫路峠は丁度風の抜け道になっているようで、稜線に沿って登り始めると風が心地よさを通り越して、ざわざわと不安をかきたてる。それは時折聞こえてくる雷の音のことだ。ジェット機か何かの音のようだったが春の嵐が吹き付けるのだろうか。
登り道も徐々にきつくなり、速度も落ちておなかの重さを実感しながらの登山になってしまった。
昼食を済ませての登山は確かにしんどい。
落ちているヤブツバキやチゴユリのかわいい花を見ながら、それでも休まず登りつづけていると、サンヨウアオイの独特な模様の入った葉を見る。山頂が広いとギフチョウでもいるかも知れない。
最初のピークを越えると、下って鞍部になる。先に見える山頂の高そうなこと。「高い山、たけえ山じゃ!」と言うわけで「岳山・たけやま」は二番目のピークで山頂となる。但し、見晴らしは聳え立つ植林のスギで良くない。南側に海の見える、開けた場所もあるが、三等三角点の山頂はちょっと期待はずれ。
もちろんギフチョウの飛び交う余裕は無い。
さらに東側へ5分進めば、城跡らしき岩に囲まれた展望台がある。展望台と言っても四方が見渡せるわけではなく、東側の沼田高校方面が見えるのだが。
ザイフリボクが白いフサのような花をつけ、スノキやウスギヨウラクもある。
イノシシのヌタ場となっている井戸の跡、ここで昔から伝わる埋蔵金の話を聞けばちょっと胸が高鳴るのだが。
それは、白南天の木の下に眠ると言い伝えられる。
白南天だろうが赤南天だろうが、どうも有りそうも無いのだが。
下山時の雨
下りは今の道を折り返すこととなるが、急坂の下りは樹木に掴まりながらのあわただしさだ。それは姫路峠を過ぎたあたりで、音を立てて現実のものとなった。初めはむしろ涼しくていいくらいの雨だったが、仏様のおられるあたりでは更に雷も加わって本降りに変わっていく。
うっそうと繁る植林の中ではむしろ傘の役目もしてくれるスギ・ヒノキだが、置いた車が目の前に見えているのだから走ったほうがいいだろう。
一人だとこんなことでも何やら不安になるものだが、大勢いると笑いながら走って帰れるから不思議。
祠があって、のこぎりが飾ってあるなどとこの地を知る人の話も耳にしたが、ゆっくり探す余裕も無く車の中に飛び込んだ。
それでもたくさんの花に出会えた山歩きだった。
【編集後記】
★この度の登山に先立って、山ろくのエビネの自生地を見た。昨年土砂崩れがあり、全滅した一部の自生地を復活させるため、自然観察会のひとりが移植させる試みを計画したのだ。
ヒメヤマツツジやミヤマガマズミの花が咲き、春から初夏へと移行の頃だが、一方でヤブツバキが多く見られるのは遅い春を見ているようで、不思議な組み合わせに思う。
花をつけたウラシマソウ。
チゴユリの群落。
木が切り倒され、荒れた山麓に新しく芽吹いたタカノツメやカラスザンショウ。
ミヤマウグイスカグラの小ぶりな赤い花。
ほとんどが植林のため禿山にされ、そのためにもろくなった山の表面が崩れかけている。
山道もひび割れて、次の集中豪雨ではもっとひどいことになりそうな気配だ。
そんな貴重なエビネの自生地も手を加えない限り、全滅の道をたどる。家庭ゴミが捨てられ、倒木が覆いかぶさり、きれいな花が咲く環境で無くなってきているのに、ほおっておくことは出来ない。
それでもいくつかの株が花芽を付けて並んでいた。この場所から株分けされたエビネを戻してやる。とりあえず、今回植えたエビネの花は摘み取っておこう。
咲いて欲しいのに咲いて欲しくない。
大きな団地を抱える山麓の隠れた悩み。
★今、東区のJR戸坂駅から登る「松笠山」の頂上は大きな変わりようだと言うことを仲間から聞いた。
良くなった話なら別に取り上げはしないが、幅広い道を通し、樹木を切り倒しベンチを置いて公園化しようとしている最悪の事態なのだそうだ。
ブルドーザが上がり、斜面を削り取っていると言う。どうして、そんなことをする必要があるのだろう。
山頂で汗を拭きながら深呼吸をする時の達成感。
そんな面倒なことはしないで、車で来なければならないのか?
それが「便利」と言うことなのか?
★広島にいつ来るのかと待ちわびていた映画「ナビィの恋」がやっと来た。
沖縄のおばあちゃんが優しいおじいちゃんを捨てて昔の彼氏のもとに逃げていく話。
映画全般に流れる三線(さんしん)の音色とたくさんの歌。
それと映像的に印象的なのは女の子の赤いワンピースと満開のブーゲンビリアの花。
清清しい映画を久しぶりに観た。