QJYつうしん 147号 2000/7/21
休日は山にいます

県北の避暑地の山をめぐる旅 コウリンカの色が嬉しい 吾妻山〜池の段〜竜王山


吾妻山

この時期の吾妻山は私にとって避暑地の別荘なのだが、ここの休暇村は昨年「吾妻山いざなぎ友の会」に入会していながら利用したことが無かった。

10〜20%の割引がある。

曇っていれば高原の草原で涼しい風を受け、晴れていれば森の中の木陰を歩く。夏の吾妻山は大好きな場所。

この日は猛暑の日、ピーカンに晴れた市内34℃を超える真夏日だとラジオで言っている。

ヤマアジサイの青い花が涼しげに森の中で歓迎してくれる。いつもは持ってこない鯉のエサになりそうな袋菓子を森の中の池でばら撒いて、ちょっとでも長い間木陰の涼しさを満喫した。

それでも直射を受ける芝生広場に出てもちっとも暑く感じないのはここの標高のせいだろう。カワラナデシコがピンクの可愛い花を咲かせている。林縁ではタンナサワフタギの実、ゴマギは赤っぽい実をつけている。

カワラナデシコと吾妻

すごい数の赤とんぼ、小型だからナツアカネだろう。ヒョウモンチョウ(ウラギンヒョウモンとオオウラギンスジヒョウモン)もヒヨドリバナに群がっている。

ハンカイソウの大型の黄色い花、コバギボウシの紫色の可愛い花、ノアザミ、ウツボグサとバラエティ豊かだ。

秋の準備、マツムシソウ、ワレモコウ、ウメバチソウ、キキョウやリンドウが花芽を付けている。イブキトラノオが群生を作りネジバナが背を伸ばしているぞ。

相変わらず吾妻山は植生豊かだ。

休暇村の宿舎の池にはサンカクイ、イ、ハンゲショウが花を付けている。

夜になると涼しさも一段と増し、満点の星空を見上げる最高の演出が始まる。久しぶりに見る「天の川」、夏の大三角形と北の空にはカシオペア、南の空にサソリ。

芝生が乾いているから寝転んでもいい。牧童になった気分で星空を眺める。世間のつまんないもめごとなんかここでは無関係、別世界とはこんな場所をさす。

帰りに宿舎の水銀灯の下を捜すと、大きなクワガタが見つかった。

翌朝もういちど草原を一回りして朝露に濡れたネジバナやワレモコウの葉をじっと観察。何故かカワラナデシコはブッシュのそばで群生するクセがあることを発見。

誰かに寄りかかっていないと寂しいのかなあ。

秋の草花が葉っぱだけでも確認できるぞ。アキノタムラソウ、タムラソウ、アキノキリンソウ、ツリガネニンジン。

昔はここの名物だったウマノアシガタが少ないけれどまだ見られる。少なくなった訳は、牛を放牧しなくなったためだ。今は牛に代わって人間が草刈をしている、だからウマノアシガタ(有毒)を残して草刈と言うわけにはいかないのだ。難しいもんだね。

カッコー、ホトトギスの朝の挨拶を聞きながら散歩するのはとてもリラックスできる。

地面を這うチドメグサさえ可愛い花をつけている。

キバナノカワラマツバはこれから咲くのかな。オオカニコウモリ、ウバユリも準備中。

トチバニンジンやマムシグサ、ドクダミ、ヤマジノホトトギスは名残の花を見せる。


南の原

普段、南の原に行くにはキャンプ場を経由するが、今日は南の原駐車場を利用してみた。

まだ咲いていないがホソバノヤマハハコが崖っぷちに見られる。ユキザサが青い実をつけ、多くのスミレ類が山道を飾っているぞ。この駐車場から南の原までは10分で行けるのだが、今日のように暑い朝は木陰の山道が嬉しい。

そして10分で明るい南の原。

ドルフィンバレーのスキー場が見える。風があって快適だ。空気もおいしいぞ。

そして日当たりの良い山道にひときわオレンジ色が際立つ花が目に付いた。

コウリンカ

コウリンカだ。

紅輪花と書く、細い舌状花が字のごとく輪になって、成熟したものでは反り返って下に垂れ下がる。

独特の個性豊かな夏のキクだ。図鑑では必ず載っているのだがそれほどひんぱんに目にする花では無い。何と言ってもこの「色」は素晴らしい。

へたくそなウグイスの鳴き声、ホトトギス、朝早いとこんなにも鳥が多いのか。

もう咲いているのもあるワレモコウやオミナエシ。

そしてこの道も「ナデシコロード」だ。

南の原のナデシコロード

ピンクの花びらが風に揺れて明るい道がさらに明るくなる。いいなあ、どうしてこんなに野の花は可愛いんだろう。急いで歩いて行くさっきの登山者はこの可愛い花が目に入らないのかなあ。

ヒヨドリバナにしても良く見るときれいだぞ。

紅葉し始めたコマユミ、ヒグラシの声の下でマツカゼソウの緑の葉。


池の段(1280m)

池の段は一年に二度くらいは来るだろうか、私にとってここは「お花畑」、こんなに晴れわたった日の池の段は最高に気分がいい。時刻は10時ちょうど、「立烏帽子駐車場」はすでに数台の車が停まっていた。ナツアカネの群れに杖を差し出すと必ず一匹がとまろうとする。トンボと自分に信頼関係でもあるみたいで嬉しいものだ。

池の段の上り口までは15分の木陰の涼しい山歩きだ。キクバヤマボクチ、ニガナ、ウツボグサ、タニソバ、ヤマアジサイ、コバノフユイチゴなど。

おやホツツジも花芽を付けている。ユウスゲやイブキトラノオ、ゲンノショウコも普通にある。

目の前が明るく開けると、そこは風の良く通るホツツジやウラジロハナヒリノキの群生場所。イブキトラノオやユウスゲが見える。ピンクのササユリが一本だけあった。ヤマツツジも残っている。シロバナニガナ、オトギリソウ、ネバリノギランとノギラン。ワレモコウ、オオバギボウシ、キュウシュウコゴメグサ。

池の段の頂上はすぐにやって来る。石に刻まれた四方の山の名前を確認する。なにしろすべての山がはっきり見えるのだから。

遠く大山もそびえ立つ。

アカモノがおいしい実を付けているので、ちょっとずつ拾いながら口に入れてみよう。甘い山のおやつがいろんな思い出を運んでくるよ。大山でも食べたっけ、四国の山でも、九州の山でも。

イブキトラノオと向こうは池の段

オカトラノオもまだ咲いている。が、ここ池の段の主役はイブキトラノオ。本当に多い。

イチヤクソウも実になったばかり。

湿原に来ればハンカイソウの大型美人の鮮やかな橙色の花が待っていてくれた。モウセンゴケの白い花、チダケサシの淡いピンク。

竜王山(1256m)

池の段に立つと360度の展望、その中で「あそこに行ってみよう。」と、思わせるのが竜王山だ。アマチュア無線のメッカとして有名。

この山は本来熊野神社からのルートが正規コースなのだが、なにしろ車で近くまで行けるものだから、こうして楽ができるわけだ。

頂上へはほんのちょっと歩くだけ。

竜王山のオオバギボウシ 向こうは池の段

それでもその短い山道にツノハシバミの実をたくさん見つけたり、ヤマボウシの木を見て季節を代えた山歩きを想像して登る。

草原状の山頂は驚いたことにギボウシの大群落だった。ホソバシュロソウも咲きそう。

向こうに池の段、先ほどまでいた岩が確認できる。

下山は熊の神社道を利用。ブナが実をたくさん付けているぞ。締めくくりの青いヤマアジサイの花がとても涼しかった。


【編集後記】

出発は昼からだった。広島北IC手前の幕の内トンネルは新しくなった。その手前、勝木台を過ぎた所にイタリアレストラン「トスカ」がある。大田川方面(安佐動物公園)への道が延びているところ。

以前コーラスをやっていた女性がイタリアで修行し夢を実現して開業した。

花の多い店内。オペラがBGMで流れ、時々演奏会も開かれる。赤い窓、緑の屋根、この人の夢がかなった店なんだと思うと、スパゲティのおいしいこと。