QJYつうしん 149

休日は山にいます 平成12年10月1日

市内の縦走ハイキングコース       秋風と木の実がうれしい

岩谷観音(高尾山 425m)広島市東区

前日の雨もあがり、青空が晴れわたったこの日、久しぶりに近郊のハイキングにでもと思った。こんな爽やかな日は瀬戸内海を見下ろしながら、暑い夏には敬遠していた市内の山歩きをしてみたいものだ。

 

私たちボランティアグループで作った、「東区自然発見マップ」を活用してハイキングに出かけよう。

行き先を考えながらマップを広げる。「温品・馬木・福田エリア」の岩谷(いわや)観音がよさそうだ。

 

ルートはマップで紹介されているとおり。もっとも市民からは小さな間違いを指摘され、区役所の担当の方は大変だと思うが。

しかしここで言い訳をさせてもらうならば、所詮ハイキングコースのマップは参考資料であり、完璧な地図では無い。例え今日完璧でも明日はどう変わっているか、誰も分からない。

 

山歩きをする人はこれを参考にあらゆる知恵を絞って山道をある程度模索しながら歩いて欲しいものだ。それこそ老化防止や山に対する自信をつけることになる。そう、山歩きはゲームでもある。人に連れて行ってもらうのではなく、自分の感覚を張りつめさせ研ぎ澄ます事が重要なのである。

だから中高年のスポーツとして登山の意味がある。

 

 

登山口

まず車を置く場所だが、バス停「下温品」にある広島市の温品出張所の駐車場を借りる。これは区役所でも認めて下さっているので、大きなイベントでもない限り利用したい。もちろん「寺分」行きの赤バスを利用してもいい。近所にはユアーズなど大きなスーパーもあり、お弁当なども買えるから。

 

南からのスタート地点、明神橋の下の府中大川にはジュズダマが繁っている。これで遊んだ子供の頃があったっけ。コサギが驚いて飛び立った。

これから山頂までは、太陽を背に尾根筋歩きとなる。その楽しみと言えば、風光明媚な瀬戸内海を見下ろせることだろう。

 

温品バイパスに沿って、時にはガード下をくぐり、道は続く。畑から逃げ出したのだろう、花を付けたスペアミントが多いぞ。ヨメナ、ヤブマメも満開。

山道に入ると、実をつけたゴンズイ、コバノガマズミ、サンカクヅルが目に入る。

ヌルデ、ハゼもそろそろ秋の装い。

 

アカメガシワ、オオバヤシャブシ、シロダモ、ミヤマガマズミなどこの時期の樹木はどれをとっても個性的だ。

イヌザンショウは花と実、そのそばをまだキアゲハが飛び交う。山道はもちろんヤマハギが点々と。

 

 

中腹の休憩所

広島特有のマサ土の山道は滑りやすい。背中から夏に戻ったような日差しを受ける、が木陰に入るととても涼しい。空気が乾いている証拠だ。

木製のベンチが置いてある休憩所に来た。何と美しい瀬戸の風景、宮島や能美がこれほど高い位置から見下ろせるなんて。右手の牛田山や松笠山が低く感じる。

 

周囲はサクラが植えてあり、アカマツやネジキが目立つ。コナラ、アラカシ、クヌギはどれもドングリを付けている。秋の山歩きをしていることに今更ながら納得する。今日は木の実をたくさん見られそうだぞ。

 

クロキ、タカノツメ、コシアブラはこのあたりの定番植物。ウスタビガの繭(まゆ)が小枝にぶら下がる。

おお、前方には荒々しくむき出た岩が登山欲をそそる、岩峰「岩谷観音寺跡」のある高尾山の前峰だ。

  前方に山頂

山道の右手、これはみくまり峡からの登山道だ。ここに車を置けば0.8キロでこの場所と看板がある。手軽に登れるのがここ岩谷観音。

そして今歩いているのが「中国自然歩道」であることに気づくのが親切に立ててある看板。現在地と目的地のキロ数が記入してあるのが嬉しい。

 

コジイ、コナラ、カキノキ、ソヨゴ、コバノミツバツツジ、クヌギ、ネズにヤブムラサキ。

「げんこつ岩」(私が勝手につけた名前)を過ぎて、竹やぶの中に小さな社もある。

市内の山はある程度の急坂がある場合が多く、ここも例外では無い。短い山道の中で、いい汗をかくことが出来るわけだ。

 

 

もう1時間以上過ぎた。大きな「らくがき岩」(これも私が名付けた)でお茶にしよう。秋風が清々しい。前からもう下りて来る人達もいる。結構人気のハイキングコースだ。

らくがき岩から見下ろす市内のビル群。

らくがき岩から松笠山 

登りは絶対、尾根筋歩きに限るよ。

ヤマモモの木が何本かあるぞ。石の上に残るカキの種は人間の仕業ではなさそうだ。見上げるとたくさん実を付けたおおきなカキノキもある。

 

 

岩谷観音寺跡〜山頂

目の前に石段が現れた。

標高約400メートル地点である。石段が残り、屋根瓦などが散乱している廃寺跡だ。もちろんここからの眺望も期待を裏切ることは無い。

 

隅に置かれた仏像などが当時を偲ばせる。周囲にフシグロが咲いていた。ハギのようなマメ科の植物はアレチヌスビトハギだ。帰化植物オオフタバムグラの可愛い花。
オオフタバムグラ

アレチヌスビトハギ 

この階段を白い杖を持った目の不自由な女性が男性に連れられて下りてくる。彼女の明るい挨拶に心が和む。

岩谷観音の開祖は約700年前と言われ、甲斐の国の武士「近藤三郎佐衛門」が海岸で拾った石仏を祭ったことによると言われている。そのような由来を大きな木の看板で読み、さあ上に登ろう。

 

この頂上を越え、高尾山さらには呉娑々宇山や藤ヶ丸山まで次々と高い山が連なる。尾根沿いに山道があるので縦走好きのハイカーにはもってこいの山歩きが楽しめる。

 

 

コウヤボウキが並ぶ山道を上がると演説台のような施設のある岩がある。もっと上には岩に彫られた岩谷観音が奉られている場所にたどり着く。

アカメガシワの木に絡みついたムベがたくさん実を付けていた。周囲にシャシャンボ、アカマツ、ネジキが並ぶ。
ムベの実

頂上の大岩では最高の眺望だ。北側には白木山、西に窓ヶ山、重なるように遠く吉和冠山の姿も。牛田山や松笠山は小さくなっているぞ。この位置から見る武田山の広島経済大学などちっとも山の上にあるようには見えないから不思議。

 

風も適当に吹く。気持ちのいい山だ。

空を行く雲の流れに眠りそうになる。

頂上から宮島 

 

さらに中国自然歩道を北へ

昼食後の下山は丁度木陰になった山道(中国自然歩道)を北へ向かおう。ナツハゼのたくさん実った山道を進むと足元にはカンアオイの葉、目の高さにバイカツツジがもう花芽をつけて準備していた。クロキやアラカシが多い。

 

白いキクはヤマシロギクだ。更に進むと沢があって木の橋がかかっている。岩陰にはキッコウハグマが花芽を付けている。紫色のおしゃれさんはアキチョウジだ。

  後方の高尾山

ずっと木陰なのが嬉しい。

さあ、心落ち着く山歩きもそろそろ終わり、その訳は、聞こえ始めた温品バイパスの車の騒音。現実に戻らなければならない。ここは都市近郊のハイキングコースだ。

 

 

ベンチが用意してある中電の鉄塔をくぐると、ミツバアケビがおいしそうな実をぶら下げていた。

登山時と同様、バイパスの下をくぐり、階段道に差し掛かる。シリブカガシやコガクウツギ。

一時間をかけて上温品4丁目28番地と表示のある「ちびっこ広場」に出た。菰口(こもぐち)いこいの森の入り口あたり。あとは看板が丁寧に場所を知らせてくれる。

 

バス通りでもある「温品通り」には「くるみ幼稚園」のある場所に出た。ここの川でも上り口と同じようにコサギが飛び立ったのは不思議。つまり魚の棲むきれいな流れだと言うこと。

車を置いた場所まで20分歩こう、ずっと下りなので楽なもんだ。タカサブロウの花やクサギの実、歩かなければ見られないよ。

  田んぼに咲くタカサブロウ(キク科)

木の実をたくさん見つけた秋の日の楽しいハイキング、振り返ると、今登ってきた岩峰が「また来いよ。」と言っているようだ。