QJYつうしん 150号 休日は山にいます 平成12年10月14日

秋の日の草原ハイクを楽しむ   色とりどりの山の花たち

弥畝山(964m) 島根県弥栄村

朝、広島を出発する時の気温は18度だった。車のエアコンの設定を25度にしていたから、暖房となって暖かい空気が出ていた。涼しくなったものだ。

それでも統計的に10月のお天気は、真夏日もあり氷点下の朝もあるという、一年で一番着替えに苦労する月なのだそうだ。

10月中旬の山の花といえばリンドウ。

県内は雲月山、道後山、吾妻山などリンドウの名所はたくさん知れ渡っている。QJYつうしんでも何度か報告しているので、今日はひとつ新しい場所へ行ってみようではないか。

弥畝山(やうねやま)、牧歌的な山歩きは秋の花々と日本海まで見渡せる展望の良さがハイキングの楽しさを教えてくれる縦走路だ。
弥畝山(ふるさと体験村方面から)

木束峠

R191を八幡高原方面に向かうと191スキー場そばから島根県に抜ける細い道がある。木束峠と言い、渓流、湿地の豊富な隠れた花の名所でもある。

昔ながらの赤いポストを通り過ぎ、点在する農家の畑(たぶん減反の転換作物としてだろう、ランや切花の栽培をしている所が目につく)の中にカキツバタがきれいに咲いていることに驚かされる。

知る人ぞ知るカキツバタの二毛作、この時期にも立派に咲くのだ。そして田んぼのあぜにオタカラコウやゲンノショウコ、ノコンギクなどが咲き乱れる。

紅葉とカキツバタ

そして最後の民家を過ぎると県境の看板。

この道路はトラックの進入は禁止している。つまり相当狭いと言うこと。と言うより、ヘアピンカーブがあって曲がりきれないからだろう。普通の車はトラックが来ないからゆったり走れる。

県境から1キロでT字路、ここを右に曲がる。

心配しなくてもほとんど車が向こうから来ることは無い。窓を開けておいしい空気を入れながら優雅なドライブが楽しめる。広い場所や砂防ダムの堰堤などで車を停めてみるのがいいぞ。

カモが水面で遊んでいた。

アキチョウジの群落が続く。キバナアキギリも多いぞ。ヌルデが赤く紅葉している。もう秋なんだ。

T字路から2.8キロの場所では「弥畝牧場」への標識が出ていた。それに向かって左に曲がる。今度は明るい広い林道が登山口まで連れて行ってくれる。

標識から3キロ、分かりにくいが登山道はそこにある。車が一台置けるスペースだが、付近に広い個所があるので心配は無い。

行き過ぎると、北が下に向いた分かりにくい案内図を見つけることになる。この絵を見ても分かるが、「弥畝山」という地名は地元には無いようだ。あくまで国土地理院発行の地図上での名前。

また、割と新しい山のガイドブックでも登山口にトイレがあるようになっているが、実際には無いので気を付けよう。

この「林道笹目原線」の最も高い位置(峠)が登山口だということを認識しておこう。

今日は他に車は無いようだ。


展望台まで

何箇所か停止しては写真を撮っていたので、登山開始は11時になってしまった。ヤクシソウの明るい緑の葉と黄色の花。足元には可愛いセンブリ。

オタカラコウ、マアザミ、ヨシノアザミなど多い。
展望所
登山口からいきなり木の階段が始まる。

ここを一気に登るのはホネが折れるが、登りきれば、あとは草原のハイキングが待っている。

もともと「弥畝山」という独立した峰は無いようで、この高原一帯、尾根筋歩きを弥畝山と言っているらしい。つまり山塊としての弥畝山なのだ。

ちょうど芸北町の雲月山を思い出す、クロマツの尾根筋を歩くこと自体、良く似ている。

スギ、ヒノキの植林の階段道だが、センブリやヤマシロギク、アキノキリンソウなどが次々と現れて苦にならない。ツルリンドウも咲いているぞ。

20分で階段が終わり、最初の展望地に着いた。

ここから尾根筋歩きのハイキングだ。

視界が開けるということはこんなにも快適なのか。日本海が見える。背の低いササ原、足元に秋の主役のリンドウが咲いている。

さらに10分で避難小屋があり、ここの展望は最高だ。日本海からの爽やかな風、ヤマラッキョウ、ヤマシロギク、休憩のお茶がうまい。
リンドウ

床板が壊れているのが危ないが。あれ、塩が盛ってあるのは何かの神事か?

「ブナ林まで1.5キロ」の標識、ツリガネニンジンやキバナアキギリがたくさん見られる。ワラビも多いから春のハイキングもいいだろう。オミナエシ、アキチョウジと豊富な植物の種類は驚かされる。まさに花の山歩きだ、するとマツムシソウの群落が現れた。ホソバシュロソウも実をつけているぞ。

キバナアキギリ
後からラジオの音がうるさい。男性がひとりやって来た。クマが怖いので賑やかにしているのだそうだ。岩国からきた年配の人。「ここは初めてなんですが、土地の人に聞いても弥畝山は知らないって言うんですよ。」と、不思議そうに話す。

ここの本当の山名は何なのか?

島根県の防災行政無線設備、弥畝中継局の大アンテナ施設に着いた。進入出来ないよう鎖で閉めてあるが舗装道路が伸びている。

おや、ここにある看板、川本営林署が建てたものらしいが「十文字山国有林」となっている。うーんそれが本名か?

キクバヤマボクチも一緒に首をかしげてくれた。

相変わらずリンドウとセンブリが忘れた頃に交互に現れる。いい色だ。空も晴れわたり、暑いくらい。
センブリ

ブナ林と山頂の探索

尾根筋歩きはとっても楽だ。日本海側に多いクロマツが並ぶ。本当に雲月山と同じだ。

イノシシのトラクター跡もある。ブナ林まで0.5キロ。森林らしくなってきた。ウラジロノキ、リョウブ、ウリハダカエデが多い。
山道

三角点がある峰の森に着いた。水場があってクリの木が多い、いかにもクマが棲んでいそうだぞ。おや、落ちているクリの実は完全にクマの食べ跡だ。縦に裂いて食べるのが特徴。見上げるとクマ棚がある。
クリ(クマの食痕)

ブナ、ミズナラも多くなった。

チゴユリが多い場所。ミヤマシキミ。山道にクマノミズキの山サンゴが落ちている。すると、赤テープが左の方向に巻いてある。ははあ、この奥が三角点だな。  先ほどの男性が、「結局、はっきりしませんね。」と帰ってきた。赤テープを頼りに奥へ奥へとヤブコギしてみたがとってもしんどい。ヤブコギは春に限る。

ま、三角点を踏破することが目的では無いから、適当に引き返そう。

オトコヨウソメの赤い実がきれいだ。

帰路の舗装道路

引き返して先ほどの無線中継局で昼食にしよう。

陰が無いのだが、少し日差しも弱まってきたので丁度良いぞ。

帰路は山道を返さず、ススキの舗装道路を歩いてみよう。無線施設と弥畝牧場への取り付き道路なのだが、先ほど前を通った時は入り口が封鎖されていたのを確認している。

弥畝牧場は島根県営の牧場で、大規模に運営されているわけでは無い。現に牛や牛の糞を一度も見ないのだから。

アキグミが赤い実をいっぱい付けている。リンドウも相変わらず多い。ノブドウ、ヨメナ、メドハギ、ヤマシロギク、ブタナが彩りを添える。
アケボノソウ

所々に湿原があり、オタカラコウが見事に咲く。アケボノソウや穂を付けたガマもあった。アキノノゲシ、ノリウツギ。山菜のウド、タラノキも豊富、春の方が楽しいかな?

ヨシノアザミやノアザミ、マアザミがきれいだ。ノイバラの赤い実、イヌザンショウも見る。

前方に犬かな?と思ったがイノシシの子供が歩いている。湿地が多くて、花が咲く楽しい山道だ。
ヤマラッキョウ

ススキの穂が頬を撫でる。

あっさりと40分で車を置いた登山口に出てしまった。オタカラコウ湿原のある場所。

行き帰りに別の道を利用できるのは幸せだ。

花の種類をたくさん見て、気持ちの良い秋のハイキングを終えた。