10階の声

 

(1)10階の声

 英次と恭子は、結婚してまだ2ヶ月という、いわゆる新婚夫婦である。2人は、 結婚して間もなく、都心から約1時間半というところに12階建てのマンションの10階の1室を 愛の巣として築き上げた。なぜならば、2人とも 仕事を持っているせいか、通勤に支障のないこの場所を選んだのだ。
 ある日のこと。英次は食事が終わると、英次はすっと立ち上がり、いつものように ベランダへ向かった。普通の夫婦であるならば、食事が終わってもイチャイチャ・ベタベタとするのであろうが、交際期間の長かった2人 にとって、そう言った時期はとうの昔に過ぎ去ってしまったのである。
「おーい。恭子。ちょっとこっち来てみろよ」
 夜の11時を少し回っていただろうか、ホタル族をしていた英次が興奮した面持ちで声をひそめながら、遅い夕食の後片付けをしている 恭子を呼んだ。
「どうしたのよ?」
 恭子は水道の蛇口を止め、洗い物の途中にもかかわらず、英次の異常なまでの興奮度にUFOでもでたのでは ないかと思っていた。
「シッ。聞こえるだろ」
 英次は恭子の口を左手であてがい、そして、右手の人差指を自分の口元に持っていった。
「何が?」
 恭子も小声で聞き返した。
「何がじゃないよ。アレしている声だよ。な?」
 耳を澄ませるまでもない。恭子自身もすぐに気づいた。それは、ベランダの右斜め 下のほうから聞こえてくる声だった。
「あっ。うぅぅぅぅ〜。だめ。いっちゃう。もうだめ」
 その激しさに、恭子は顔を赤らめた。
「どこでやってんのかなぁ?」
 英次はベランダから身を乗り出し下を覗き込んだ。だが、ベランダでSEXをして いる様子ではないようだった。
「よしなさいよ。あぶないわよ」
 恭子は、英次のパジャマの裾を引っ張り止めた。
「窓を開けっ放しにしているからじゃないの?いやらしい」
 道路を隔てて向かい側に同じようなマンションが建っていることから、 そこに反射して、余計に声が響いているに違いなかった。
 そして、恭子がベランダから台所に戻ろうとすると、英次は恭子の手を「ギュッ」 と掴むと自分の方へ引き寄せた。
「もうちょっと一緒に聞いていようよ。御前だって嫌いじゃないだろ」
 そういうと、英次は掴んだ恭子の手首を自分の股間に導いていた。
「ば・ばか。こんな所じゃいやよ」
 英次の股間は、さっき飲んだ酒の宵も手伝って、すでに勃起していた。
「静かにしないか。そうしないと御前の声も近所にきこえちゃうぞ」
 そう言いながらも、英次は恭子のスカートの中に手を伸ばしていた。
「なんだよ。御前も感じているじゃないか?」
 恭子としては、全くそんなつもりはなかったのだが、恭子の秘花は熱くなり 、愛液が溢れ出ているのを恭子自身感じ取っていた。
「何するのよ。向かいの人に見られたらどうするのよ」
 恭子は一応、英次の手を払い退けようとするのだが、自分の意識と自分の身体 の反応は違っていたのか、英次の手を払い退ける力はなかった。
「こっちにくれば見えないさ」
 明かりの漏れる窓だとそれがシルエットになって見えてしまうが、明かりの漏れない 窓の前ならば、ただの暗闇である。
 そして、まだ下の階では、はしたない女の牝声が聞こえていた。それに合わせるかのように 英次の2本の指は、恭子の秘花・肉芽を容赦なくいたぶっていた。
「あぁぁぁっ・・・。そんなことしたら・・・。私まで恥ずかしい声が出てしまうわ・・・」
 恭子は、英次の指攻めから逃れようと腰を振ってしゃがみ込んでしまった。
 すかさず、英次は困惑している恭子の秘花・肉芽を容赦なくいたぶっていた。
「じゃあ。声が出ないようにフェラしてくれよ」
 恭子は驚きながらも、「ばか」と小さく甘えるような声で返事すると、テカテカ に光った英次の亀頭を頬張り、濡れた舌で波打たせた。
 

(2)翌日

 次の日、英次と恭子は又もベランダに足を運んでいた。もちろん、下の階のいやらしい牝声 を聞くためではない。
「部屋の電気は消してあるし、御前の声はこれで大丈夫さ」
 英次は、恭子にガムテープを張ろうとしていた。
「いやらしいのはイヤ」
 と、恭子はもちろん抵抗したのだが、「1回だけお願い」と両手を合わせて頼む姿に 「本当に1回だけよ」と約束をして同意してしまった。しかし、本当にイヤなのであるならば、 何が何でも抵抗したはずであるのに、恭子はそれをしなかった。なぜならば、恭子自身 昨日のスリルと快感が忘れられなかったのである。
「さぁ。脱いでごらん」
 英次のこの言葉に恭子は自分の意思とは反対にスカートとパンティを1枚1枚 ゆっくりと下ろしていった。
 恭子は、これが「脱げ」という命令語であっても「脱いでください」と言う敬語であっても 恭子は感じないのであった。この英次から発せられる「脱いでごらん」という言葉に 異常なまでに感じるのであった。
 そして、英次は昨日のお返しと言わんばかりに恭子をベランダの手すりに両手 をつかせると、お尻の下からクンニをし始めた。
「む・むんんんん」
 ガムテープで塞いだ恭子の口からせつなげな喘ぎ声がこぼれていた。 英次は、まずいなと思いながらも恭子と同じスリルを味わっていた。
「大丈夫。全然声はもれていないから」
 と英次はウソをついて、さらに激しく恭子の秘花を舐め・吸った。「じゅぶじゅぶ」 とねちっこい音を立てて下品に舐めていた。
 ベランダの手すりにしがみつき、恭子はクンニだけで昇天しそうになっていた。 そっと、うっすら目を開けて増したの路上を眺めてみると、恭子の目には車のライト がチカチカと眩しく映り、また向かいのマンションの部屋の灯かりが人の視線 に感じていた。
 それは、1度だけ経験した公園のベンチでした青姦よりも強烈なものであった。 なぜならば、顔も名前もしらない人の前でするのと、顔も名前も知っている人の 前でするのとでは、緊張感や恐怖感・恥じらいの度合いのレベルが違い過ぎている からである。
 英次のしつこいクンニがようやく終わり、恭子も絶頂に達しようとしていた感覚から 解放されるのかと思っていたが、英次はすっと立ち上がり、ズボンのチャックを下げ パンパンに膨れた肉棒をむんずと取りだし、立位のままで恭子の後姿に参合した。
 後ろから突き上げる英次の腰使いは、恭子が今まで味わったことのない激しさ であった。「パンパン」英次の腰と恭子のケツ肉が激しく当たり、結構物凄い音が 鳴り響いていた。その音が英次の感情を高ぶらせ、いつもより英次を激しくさせていた。
「む・んんんんん。スースー」
 恭子がそれが分かっていたのだろうか、その腰使いに合わせるかのように喘いでいた。 しかしそれは、恭子が英次に合わせていたのではなく、口をガムテープで塞がれ鼻でしか 呼吸ができないこと、そして後ろから突かれることが、レイプされているような感覚 であることが、恭子の感情を高ぶらせていたことを恭子自身この時は気付いていなかったのである。
 刺激と感情の高ぶりが強烈であったためか、この日のセックスは3分程度で発射してしまった。 しかし、2人にとってこの時間は1時間にも2時間にも感じられた。そしてしばらくの間、2人はその場 にしゃがみこみ恭子は英次の肩に寄り添い、英次は恭子の肩をそっと抱いていた。
 それからというもの、2人はこのベランダでのセックスが病みつきになっていた。そして、 いろいろな試行錯誤の結果、他の家庭がテレビをつけている夜8時から9時の早い時間のほうが、 恭子の淫らな牝声やハメ肉音がテレビの音に紛れて気付かれにくいという結論に達した。
 その後、2人の行動は段々エスカレートしていき、英次は恭子を縛り上げる喜びを知ってしまった。
「私ってマゾっけがあるのかしら」
 この時、初めて恭子自身あの時の感情の高ぶりの理由に気付いたのである。
 そして、この2人の行動を気付かれていないと思っているのは本人たちだけであった。

お  わ  り 

 

1997作 SUGAR F