国道17号を北上する。
大きな駐車場を持ったホームセンター、ファミリーレストラン。
フロント・ガラスに値札をはさんだ中古車屋。
どさんこラーメンの赤い看板。
排気ガスを浴びる小さな田畑。
地方都市を結ぶ国道沿いには、どこにでもある日本の風景が続く。
荷物を積んだトラックは、バイパスへと右折する。
そういえば、あの時も、この道を通ったな。
ひとり暮らしを始めた十九の春。
父親の車を借りて、トランクに入るだけの荷物を積んで上京した。
深夜に辿り着いた部屋で、まず最初にピストルズのレコードをかけた。
レコード・プレーヤー以外、何もない部屋だった。
テレビもない。
布団もない。
冷蔵庫もない。
茶碗もない。
自分以外に何もなくパンク・ロックのように衝動のまま突き進んでいた。
自動販売機で買ってきたワンカップ大関を飲み干し、コップとして使った。
あの時から数えると、4度目の引っ越しになる。
ずいぶんと持ち物が増えたものだ。
なるべくコンパクトにした荷物を実家に預かってもらう。
これからは決まった住みかが無くなる。
その日その日のねぐらを探しながら流れてゆく。
自分の肉体で運べる物だけを持って動いてゆく。
そんな日々が続いてゆく。
余分なものを削ぎ落としながら、本当に必要なものにフォーカスしてゆく旅になるだろう。
2003年7月24日 深谷