8月2日。


曇り空に、だんだんと青空が広がってきた。


日差しには昨日までとは違う強さがあった。


やっぱり今日だな。


荷作りのピッチを上げる。




今年は夏が遠かった。


ぐずついた天気が続き、7月が過ぎても梅雨は明けなかった。


「俺の出発と同時に夏がくるよ」


親しい友人には、そう吹聴していた。


予定では本日、8月2日が旅立つ予定日。


ひさしぶりに良い天気。




午後1時、汗をかきかき荷作りが終わった。


テントが荷台に乗らず、持ってゆくのを諦めた。


これから、どこまで行けるだろう。


今の想いを静かな振動にアップした。




午後2時過ぎ。


左足でギアを入れる。


右手でスロットルを開く。


ガソリンは満タン。


旅の始まりだ。









都内を抜け、国号4号線を北上する。


焼けたオイルの匂い。


大きく緩やかなカーブを左にハンドルを切る。


眼下に鮮やかな緑色をした田圃が一面に広がる。


皮のつなぎのライダーがピース・サインで追い抜いてゆく。


左手の親指を目の前で立て上等サインで答える。


焼けたオイルの匂いに、夏草の匂いが混ざる。


やっぱり今日だったな。




午後6時。


太陽が地平線近くの雲に姿を隠す。


走る車がヘッドライトを灯し始める。


国道4号を離れ、宇都宮市街に向かう。


駅前の安宿に空き部屋を見つけチェックインする。




宇都宮は餃子で有名な街だ。


餃子を食べよう。


シャワーを浴びて街に出る。


雲の合間から細い三日月が姿を現す。


浴衣の女の子とすれ違った。


遠くから鐘と太鼓の音が聞こえてきた。


街には祭り特有の華やいだ雰囲気がある。




ありがちなラーメン屋のカウンターに座った。


水をゴクゴク飲んだからか、おばちゃんが団扇を持ってきてくれた。


テレビのニュースが関東地方の梅雨明けを告げる。


まずはビール。


旅立ちと梅雨明けに祝杯を。










                2003年8月02日 宇都宮