全ての事象は互いに係わり繋がっている。



旅は、ずっと以前から始まっている。



全ては係わり合いながら。



全ては繋がり合いながら。



旅は続いてゆく。









「広報 だいとう」 1996年11月号より

農業委員会だより


9月16日から22日までの日程で、都会に住む青年が農作業体験で大東町を訪れました。

この青年は東京都新宿区に住む金子鉄朗さん(29歳、独身)で、レコード会社のディレクターをしている方です。

岩手県に来たのは初めてということで、大東町の印象はどうですかと質問すると

「稲穂の黄色と、周囲の緑と、屋根の赤のコントラストが素晴らしく、そして花がいっぱいで色彩が豊かです。

住んでいる人が親切で優しく、都会と違って近所付き合いを大切にしていると感じました」と話してくれました。


農作業は曽慶字大畑の足利甚三さんと菅原豊一さんのお宅で、リンゴやトマトの収穫、葉摘み、草刈りなどを体験しました。

以下省略(農作業についての記述が続く)









様々な人々の生活を見る。


普段とは違う時間の流れに身をおく。


自分とは違う価値観に触れる。


それが自分にとっての旅だ。


今思い返すと、数年前、岩手県の農家にホームステイした時から旅は始まっていた。





農作業の合間に、甚三(じんぞう)さんが車で大東町を案内してくれた。


妻の栄子(ひでこ)さんも後部座席に乗る。


「この谷の下にはちいさな集落があり、綺麗な水が流れています。


妻は子供の頃から、その綺麗な水を飲んで育ったので、こんなに綺麗なんです」


当時61歳、どこにでもいるような農家のオジサンは、車を運転しながらサラリと言った。


どににでもいるような農家のオバサンに聞こえるともなく。




感動した。


目からウロコが落ちた。


何てカッコイイんだろう。




その頃の自分は全てにおいて、現状に満足するではなく


今よりも更に良くなるにはどうしたら良いかを常に考えていた。


そのような思考回路しか持っていなかった。




リンゴの収穫を手伝いながら。


歓迎の詩吟を聞きながら。


酒を飲み交わしながら。


「自分は何て幸せなんだろう」といつも感謝しながら生きている甚三さんと


同じ屋根の下で生活した事が最高の旅だった。




長い旅の始まりに、また、あの地で確認したいことがある。






                     2003年8月6日 大東町