焼尻島から天売島に来た。
500人の人間と1000000羽の海鳥が暮らす島。
まず集落を歩く。
真新しい家。
修復を重ねた家。
朽ちてゆく家。
それらが混然と立ち並ぶ。
特に手を加えながら住んでいる家がチャーミングだ。
カラフルな色で塗り直し、見ているだけで楽しい気分になる。
子供を遊ばせるお母さんに話しかけた。
「島の人口は、毎年、減っていますよ。
それでも焼尻と比べたら、若い人が多いですけど」
焼尻島と天売島は、すぐ近くにある。
どちらも同じような大きさと地形と人口の島だ。
しかし、焼尻が寂れた印象だったのと比べて、天売には活気を感じた。
オロロン鳥の恩恵なのだろう。
実際、島にある旅館の数は、焼尻の4軒に対して、天売には17軒だ。
天売島は、絶滅寸前のオロロン鳥(ウミガラス)が、唯一繁殖をする島として知られる。
海鳥が孵化を始める6月には多くの人が訪れるらしい。
島のシンボルは北側にある赤岩だ。
海から垂直に立ち上がった48メートルの岩。
かつてオロロン鳥をはじめ、たくさんの海鳥の営巣地になっていた。
しかし最近はずいぶんとその数が減ってしまったそうだ。
赤岩のオロロン鳥を写真に収めようと、たくさんのカメラマンがやってきた。
カメラマンは岩に向かって石を投げた。
海鳥が飛び回る姿を撮りたいからだ。
その結果、海鳥は赤岩に寄り付かなくなったのだそうだ。
赤岩は、ひっそりとしていた。
2003年8月14日 天売島