そろそろ日が暮れてきた。


朝5時に走り出し、300キロ近く走っていた。


無料で泊まれるはずの、ライダーハウスを目指していたのだが


実際に着いてみると、やっていなかった。




「1泊2000円」


道路を挟んで斜め前に看板がある。


白い板に赤いペンキで無造作に書いてある。


駐車場で夕陽を受けながら、親子がキャッチボールをしている。




最近、床の上にそのまま寝ることが多かったので疲れが溜まっている。


そろそろ布団で寝たい。


まあ、良いか。




「すいませーん」


玄関を入ると張り紙があった。


「受付は隣のジンギスカン屋でお願いします」




部屋はまるで一人暮らしを始めた時のボロアパートのようだ。


落ち着くなあ。




南京錠で鍵をかけるのも、良いじゃないか。


砂嵐の向こうに微かに見える色の無いテレビも


破れた網戸でスズメバチが干からびてるのも


息を止めて入るポットン便所も


良いじゃないか。




屋根がある。


布団がある。


言うことなしだ。


ジンギスカンがうまい。


風呂場には水鉄砲がある。


曇った鏡にピューッと撃ち込む。




呼人旅館、かなり満足。












            2003年8月22日 網走