アイヌ=人間


アイヌ ネノアン アイヌ=人間らしい人間(りっぱな人、精神の良い人)


チセ=家


プ=蔵


ノンノ=花


シンタ=ゆりかご


イカンカラプテー=こんにちは


イヤイライケレー=ありがとう


ピリカ=良い


ポロ=大きい


ポン=小さい


シカリトンピ=光り輝くもの


アナナワ=よく見る


カムイノミ=神への祈り


ウトムヌカラ=結婚(お互いに見つめあう)


アイヌプリ=先祖から受け継いだ知恵


チャランケ=とことん話し合う









二風谷(にぶだに)はアイヌの聖地。


豊かな恵みをもたらす沙流川のほとりで今も暮らしている。




アイヌ特有の家屋の中に入ると女性が織物をしていた。


あつし織と言い木の皮から作った糸を編んでゆく。


「糸はオヒョウの木の皮から作るの。


木を枯らさないように、ちょっとだけ剥いで、紐でしばっておくのよ」




アイヌの考えでは、全ての命は何らかの役割を持って天から降臨している。


意味ある存在。大切な命。


どんな生き物でも、奪い合う事をせず、分け合って生きてきた。


恵みの鮭は、必要以上に獲ったりせず、漁が終わると


キツネやカラスの分も、川のそばに残してくるのだそうだ。




「文様は魔除けのため」


女性は織物の手を休めずに言った。


天井から下がった着物には、うずまきのような文様があった。


囲炉裏を中心とした座敷には、鮭をくわえた木彫りの熊も置いてある。




アイヌの男にとっては、刃物を巧みに使えることが重要であった。


狩りに必要な弓矢や罠は全て自分で作る。


木彫りが上手だということは、狩りが上手だということでもある。


好きな女には、彫り物を贈った。




求愛を受ける女は、自分が刺繍した装身具を男に贈った。


一人前の妻としてやってゆけるという証だ。


狩りに出てゆく男を守るため心を込めて文様を縫ったのだろう。




結婚式は、いっぱいに盛った御飯を新郎新婦で半分づつ食べる。


新居は村中から人が集まって一日で建てあげる。


文字を使わないアイヌは出来事や歴史を口伝えに語り継ぐ。


大人たちから子供たちへ。


生きる知恵や生きてきた歩みが語り継がれる。




同じひとつの星でそれぞれのやり方で生きている様々な命。


私たちは、これから生まれてくる子供たちへ何を伝えよう。


私たちは、これから生まれてくる子供たちへ何を残そう。


繋がってきた命として、耳を澄まして、未来へ受け継ぐべきこと。




これまで。


これから。




「旅を続けて」


顔をあげて女性は言った。


一瞬、川の流れが止まり、水面に全てが映った。


旅が始まる。


また、ここから旅が始まる。






(二風谷で聞いた話とアイヌ文化博物館でいただいた資料を基にしています)







        2003年9月11日 二風谷