船は揺れていた。
この季節はミーニシ(北風)が吹き、海が荒れる。
鳩間島への航路は外海を通るため、就航出来ない日も多い。
フェリーかりゆし号。
週3便、石垣島と鳩間島を繋ぐ。
12月4日、7名の乗客を乗せ出帆した。
古い船体に、数名の乗客。
なんともローカルなのんびりした空気が流れる。
かりゆし号に客席は無く、木で出来た荷台に腰掛けた。
周囲の旅人に泡盛を振る舞い、しばしの船旅を楽しむ。
竹富島を過ぎ
石垣島が遠ざかり
ひらべったい黒島を遠くに見て
小高い小浜島を過ぎ
海に浮かぶジャングル西表島を左手に進む
上下左右
だんだんと揺れが大きくなる
カラカラ カラッ
突然、空き缶が鳴った。
船は急に速度を落とした。
船員がバタバタッと船室から出てきた。
「おっ、きたのか」
かりゆしは釣り糸らしきものを引きずっていた。
まさかとは思っていたが、本当にトローリングをしながら運行していたのだ。
やってくれるなあ。
50センチほどのシイラが釣り上げられた。
すかさず解体され刺身でいただいた。
どこからか三線の音が聞こえてきた。
船室からだった。
与那国のまーやーぐゎー
舵の横には工工四(くんくんしー・三線の楽譜)も広げられている。
船長は三線を弾く合間に舵を取っている。
良いなあ。
こんな船旅。
何ともおおらかだ。
限りなく沖縄だ。
遊びのある仕事は嬉しい。
時代は川よ
歴史は海よ
人は小船に
かりゆしの旅
彼方に鳩間の島影が見えてきた。
2003年12月04日 鳩間島