海に突き出た防波堤に寝転ぶ。


雲にうっすらと透けた月の位置が分かる。


月明かりの上を形を変えながら雲が流れてゆく。




風が気持ち良い。


「良い夜だなあ」


思わず口から出た。


今日、船で出会った男3人。


泡盛を飲みながらぽつりぽつりと話す。




対岸には西表島の灯りが見える。


テトラポットに寄せる波音。


ゆっくりと白い雲が天空を移動する。


時折、雲の切れ間から星が見える。


潮が引いてゆく。


白い砂浜が広がってゆく。




月が煌々と姿を現す。


「月明かりで、こんなに影が出来るんだー」


海の青さも見える。


だんだんと満ちてゆく月。




風が吹き抜け雲が流れる。


夜空が広がり次々と星が現れる。


唯一の星が三ッ星になり、やがてオリオン座であることが分かる。




不思議な明るさを持った白い夜。


全てが白い光を帯びている。


いつかの夢の中にいるような不思議。




星々が瞬き、言葉が途切れる。


静かな夜の一部になる。


波のハーモニー。


やわらかな白い光と影のコントラスト。


完全な調和だけがある。


ずっとこのままで。


「幸せだなあ」


言葉にできる素直な感性を素敵だと思う。




風が気持ち良い。


いつの間にか雲が消えた。


全てを月が白く包む。


明るい夜空に星が輝く。




いくつもの夜を越えた。


この瞬間まで、地球には一千億の人間が命を受けた。


この瞬間、一千億の星が銀河系に輝いている。


流れた星は何処へゆくのだろう。








           2003年12月04日 鳩間島