冬来たりなば
オレンジの光が斜めに差し込んでくる。
木の葉がコンクリートの上を舞う。
P.M. 04:15
冬至間近の東京。
やがて辺りは急速に闇に包まれる。
沖縄での日々を思い出す。
あちらだとまだまだ日が高いはずだ。
明らかに時差がある。
東京の日暮れは、こんなにも早いのか。
沖縄だと5時くらいの暗さだな。
どうも感覚的に沖縄を中心に考えてしまう。
そろそろ夕日を見る頃だ。
旅の始めには意識して夕日を見る場所を探したが
最近はその時自分が居る場所から眺める。
様々な場所で夕日を見た。
浜辺には自分の足跡だけが残っていた。
てっぺんから見下ろした。
湖面が黄金に輝いた。
空いっぱいに羊がいた。
虫の音だけが聞こえていた。
強い風に地平線はざわめいた。
隣の人は呟いた。
「夕日なんて何年振りに見ただろう」
少しずつ
少しずつ
変わってゆく
色
形
ある瞬間
色が浮かび上がる
雲が迫ってくる
赤く燃え始める
姿を変え続ける
二度と繰り返すことのない大空のキャンバス
ふと思い出す。
走って帰った懐かしい夕暮れ。
戻れない時間は淡い痛み。
二度と繰り返すことのない時流に明日を決意する。
俺は永遠の忘却にカメラを向ける。
闇がすとんと訪れる。
星が瞬く。
背中をまるめた男が立ち止まる。
煙草の火が闇の中に赤く灯る。
冬の訪れ。
同時に昼間の時間は少しずつ長くなってゆく。
太陽は次の季節に向かって動き始めている。
春遠からじ
2003年12月20日 東京