「ぼく、こんどは、どこの星を見物したら、いいでしょうかね」
「地球の見物しなさい。なかなか評判のいい星だ・・・」
地球は、そうやたらにある星とはちがいます。
そこには、百十一人の王さま(もちろん、黒人の王さまもいれて)、
七千人の地理学者と、九十万人の実業家と、
七百五十万人の呑んだくれと、三億一千一百万人のうぬぼれ、
つまり、かれこれ二十億人のおとなが住んでいるわけです。
「きみの住んでるとこの人たちったら、おなじ一つの庭で、バラの花を五千も作っているけど、
じぶんたちがなにがほしいのか、わからずにいるんだ」と、王子さまがいいました。
「うん、わからずにいる・・・」と、ぼくは答えました。
「だけど、さがしてるものは、たった一つのバラの花の中にだって、
すこしの水にだって、あるんだがなあ・・・」
「そうとも」と、ぼくは答えました。
すると、王子さまが、またつづけていいました。
「だけど、目では、何も見えないよ。心でさがさないとね」
ぼくは水をのんで、ほっとしました。
夜明けの砂地は、蜜のような色になるものです。
ぼくはその蜜のような色を、いい気持ちになってながめていました。
苦労するわけなんか、どこにもありませんでした。
(「星の王子さま」より)
2004年3月12日 深谷