滑走路に埋め込まれたライトが灯り、等間隔に何処までも続いている。


此処ではない何処かへ向かう道が、まっすぐに伸びている。




この気持ちは何だろう。


目の前は輝いているのに、そこに行くのが怖いような。


子供の頃、知らない町まで、ひとり歩いたことを思い出す。


心もとなく、後ろを振り返りそうになった。




時は何ものをも待たず通り過ぎてゆく。


やがて満ちる。


おぼつかない足元が空に浮かんだ。


オーケー、良いよ。


何処にでも連れてってくれ。




窓の外には、まっすぐな海岸線が見える。


灰色に霞んだ夕方の空気。


美しくもなんともない、最後の風景だ。


今度、あの地を踏むのは一体いつになるのだろう。


見納めだ。


眩しい。




やがて空気は深い群青に変わってゆく。


機体は夜に向かい、夜が迫ってくる。




オーケー、良いよ。


何処にでも連れてってくれ。


きっとまた朝がやってくるさ。




子供の頃、知らない町まで、ひとり歩いた。


知らない町は、いつしか俺の遊び場になった。


俺は俺の旅をする。






           2004年3月17日 此処ではない何処かへ