キューバではプライベート・ルームに泊まる。


これは一般の家庭が政府の認可を受けて、自宅の部屋を旅行者に貸すシステムだ。


だいたいハバナで1泊(素泊まり)の相場が15ドル。


ホテルに比べれば、遥かに安いのだが、長期の旅行者には厳しい金額だ。




少しでも節約するために、今回は無認可の部屋に泊まろう思った。


「10ドルで部屋を探してるんだけど」


プライベート・ルームの客引きに聞いてみても、そんな部屋はどこにも無いとの返事だ。


何人かに聞いていると、ペンキを塗っていたオッちゃんが「俺が案内しよう」と近寄って来た。


ペンキが入った缶と刷毛を持ったままのオッちゃんに付いて行った。




その部屋はボロボロの建物の屋上に建て増した部屋だった。


部屋の前に広がる開けた空間が気に入った。


見下ろしたハバナ旧市街の向こうに海も見える。


吹き抜ける風が気持ち良い。




部屋の主のマティードは物静かな黒人女性だった。


実際に暮らしてみて、キューバの生活がより見えてきたのが良かった。


トイレの水は、あらかじめバケツに水を汲んでおいて自分で流す。


お湯は出ないので台所で沸かして少しずつ体を洗う。


始めは不便に感じたが、慣れてしまえば、どおってことはない。




朝陽に照らされてハバナの街並みが色を変えてゆく。


マティードがエスプレッソを持ってきてくれる。


良い香りだ。


朝の空気も一緒に吸い込む。


最高の贅沢だ。