知識として出会ったサパティスタに、実際に会って来た。


みんな素朴で優しいごくごく普通の人々だった。


自治区に流れる空気は平和そのもの。


しかし、それは本当の平和ではない。


彼らは常に軍隊に囲まれた中で生活をしている。


常に命を脅かされながら生活をしている。


あんな普通の人々が武器を持たなくてはいけない世界は間違いなく病んでいる。


彼らが武器を捨てられる日が来ることを願うしかない。


そう言いながら、俺は恵まれた自分の命を生きる。


貴重な経験をしたと彼らの自治区を離れる。


なぜなら俺は俺であるからだ。


俺は彼らではない。


きっと日本に生まれた命としての役割があるのだ。


そして、同じ命として彼らのことを忘れてはならないのだ。


俺は俺のやり方で民族、宗教、文化など多様性が尊重される世界を求める。


俺は俺のやり方で全ての命があるがままに存在できる世界を求める。


俺はこの地で得たたくさんのものを解き放つ。


それらは、きっと世界を巡ってゆくだろう。


そして、俺の中に微かに残った小さな光が、これからの道を照らしてくれるだろう。


答えは未だ見えない。


誰もが揺れ動く時代と価値観と相対性の中で精一杯生きている。


全ての命の生きるさまが世界が幸福になるプロセスだ。


改めて、サパティスタ達が、武器を持たずに済む時代の訪れを心から願う。


すべての武器を楽器に。


すべての基地を花園に。


すべての心に花を。


花が花として心から笑えるように。


改めて友人の言葉を思い出す。


知識は、他者の痛みを想像し、痛んだ心を減らすためにこそ使われるべきだ。


噛み締める。


噛み締める。


刻み込む。


声が聞こえる。


想像してごらん。









闇に閉ざされた部屋。


ピアノの旋律が強く静かに聞こえてくる。


想像してごらん


意志を持った穏やかな男の声が歌い始める。


想像してごらん


立ち上がった女が窓を開け放つ。


白い部屋にやわらかい光が射し込んでくる。


闇に光が満ちてゆく。


想像してごらん


男が白いピアノを弾き歌う。


窓が次々と開け放たれてゆく。


想像してごらん


全てが眩しい光に包まれてゆく。


想像してごらん


想像してごらん 


国境のない世界


殺しあったり 死ぬ理由もなく


宗教さえもない世界


想像してごらん


すべての人たちが 平和に暮らす世界


想像してごらん 


物を持たない世界


欲も飢えもなく みんなが兄弟でいる世界


想像してごらん


すべての人たちが 分かちあう世界


想像してごらん 


いつか君も この夢を追えば


世界は1つに結ばれるよ


想像してごらん 


世界は1つなんだ


想像してごらん


想像してごらん