旅の中の旅のような日々だった。


素晴らしい景色。


素朴で物静かな人々。


連綿と流れる生活。




7月28日。


タキーレ島からプーノへ戻ってきた。


電気が点く。


水道が出る。


食事に選択肢がある。




鏡で自分の顔を見るのも久しぶりだ。


伸びすぎたボサボサ頭。


一年でこんなにも伸びるものなのか。


積み重ねの大きさと可能性。


日々の一歩一歩。


振り返ると道が出来ていた。





ふと思う。


1ヶ月前は何処にいたのだろう。


パソコンを開きながら思い返してみる。


キトか。


エクアドルにいたのか。



そのひと月前は、グアテマラのケツァール・テナンゴ。


37歳になり、スペイン語学校を2日で辞め、南米に飛ぶチケットを買った日だ。



そのひと月前は、メキシコのサンクリストバル・デ・ラスカサス。


サパティスタの文献を読みながら、先住民の村を訪ねる毎日だった。



その前は、キューバ!ハバナ!


石田さんに会い、ロジェリオが詩をプレゼントしてくれた日だ。



その前は、コザ(沖縄市)


登川さんにばったり会った日じゃないか!



その前はバガン(ミャンマー)


その前は南房総(千葉県)


その前は与那国島(八重山)


その前は足摺岬(高知県)


持望先生、えりこちゃん、アンリちゃん、神田くん、高橋くん、フミヤくん、


写真屋のオッちゃん、翼ちゃん、サトリさん、小作くん、太陽くん、さくらちゃん・・・


みんなみんな元気かな。


それぞれに、いろいろなことがあった。



そのひと月前は、函館の今井ファミリーに別れを告げて本州に渡った日。


そのひと月前は、釧路。好きだったなあ、釧路の町。ラーメンも美味かった。


心地良くも軽い眩暈を伴いながら、過ぎた時間を思う。


日々の一歩一歩の大きさと可能性。


道だなあ。




今日はペルーの独立記念日だった。


各家々が国旗を掲げ、町中、赤と白のストライプの旗で溢れていた。


その昔、日本も祝日には無邪気に国旗を揚げていた時代があった。


あの頃、今よりも、もっと空が青かったように思う。




今日は母親の誕生日でもあった。


時々、メールをくれる母。


旅に出て、初めて母親の文章を読んだ。


日々のことが淡々と綴られていて、なかなか味がある。


生まれた町は、今日、夏祭りの真っ最中のはずだ。




タキーレ島の広場には各都市までの距離が書かれていた。


リオ・デ・ジャネイロまでは2867キロ


東京までは16335キロ


遠くまで来た。


この旅も一年を過ぎようとしている。


時が流れてゆく。


明日にはボリビアに入る。


道は何処まで続いてゆくのだろう。












               2004年7月28日 プーノ