街角で地図を見ていた。


「サノバビッチ!」


耳を疑った。


声が聞こえた方を見る。


屋台で食事をしていたオヤジが、俺の目を見て、もう一度言った。


「サノバビッチ!」


そーかよ、上等じゃねーか。


いつでもやってやるぜ。


ゆっくりとオヤジの前に立つ。


奴の目を見ながら握りこぶしでテーブルをぶっ叩く。




道を聞こうと近づくとポリスは逃げてゆく。


探しあてたホテルは満室。


両替所は全てクローズ。


ステーキが乗った石で火傷。


あふれたビールでテーブルはびしょ濡れ。


犬に吠えられ足を咬まれる。




完全に歯車が狂っている。


気持ちも殺伐としている。


いかん、いかん。


自分でトラブルを呼び込んでいる。


この世界は己を映す鏡だ。




この旅を始めて一年が経った。


ずいぶんと遠くまで来た。


毎日が旅立ちだった。


また明日も旅を続けているだろう。


生きて


転がり


生きて


流れて


旅を続けているだろう。














        2004年7月31日 ラパス 365日目の長い旅の途中