ブラジルに入るとぐぐぐっと温度が上がった。


2005年1月1日 晴れ


コパカバーナのビーチで迎えた2005年。


その瞬間。


シャンパンのシャワーが降ってきた。


その瞬間。


夜空の花火が目の前に迫ってきた。


両手を広げた幸せそうな笑顔。


さあ、2005年。


過ぎてゆく時間が加速する。


まずは俺達から始めようぜ。


この瞬間、俺の体内では何万もの細胞が生まれる。


この瞬間、俺の体内では何万もの細胞が死んでゆく。


破壊と再生。


光の方向を見失わず一歩一歩。


旅を続ける。









2005年1月2日 晴れ 気温32度


リオ・デ・ジャネイロを離れサルバドールに向かう。


P.M.6:00。


バスの出発予定はP.M.5:00。


テルミナールにサルバドール行きのバスは無い。


やっと4時発フロリアーノ・ポリス行きが動き出す。


ブラジル時間。


日本だったら大問題になるような出来事も日常茶飯事。


ずいぶんと慣れた。


心配しても無いものは無い。


いつかは辿り着くだろう。


それにしても、ブラジル人は声がでかい。


こちらが理解してなくてもお構いなく話し続ける。


バスが動き出しても自分の座席に座らない。


初めて会った同士が通路に立ち、旧知のようにしゃべっている。


まるで遠足だ。


大人も子供も関係ない。


自分の好きに生きたもの勝ち。


赤い大地と緑の木々が後方に走り去ってゆく。


前方の風景がたぐり寄せられては走り去ってゆく。


ゆっくりと太陽が大地に近づいてゆく。


白雲が、いつの間にか薄桃色に染まっている。


ほら見なよ。


あの雲が誘うのよ。


それだけのことよ。




2005年1月3日 晴れ


目一杯倒した座席。


やっと静まった車内。


ハイウェイを飛ばすバスは一夜のゆりかご。


夜と朝の隙間。


左の車窓に沈んだ太陽が、今、右の車窓にある。


カフェ、パン、ハム&エッグ。


20分で済ますドライブインでの朝食。


「不良とは優しさのことではないかしら」


2度目の太宰治。


流れ続ける風景。


ヘッドホンをつけたおばちゃんが下手なラップを口ずさむ。


MY GAME JUST BIGINNING.


リズム、リズム、リズム!


下手くそでもリズム!


グラシアスからオブリガード!


エスタ・ビエンからボン!ボン!ボン!


メランコリックからグルーヴ!


モノクロームから原色!


リズム、リズム、リズム!


ボン!ボン!ボン!


時計を1時間戻しバイーア!


サルバドール!サルバドール!


辿り着いたのは4時間遅れ。


自己最長記録、30時間のバス移動。


サルバドール!


この町で。


この町で住処を探す。


この町で仲間を探す。


この町でリズムを探す。


熱い夏が始まる。


そうだろ!