引き潮を感じた朝



路地に切り取られた細長い空



裏通りのカフェ



グッドモーニング・ナマステ



いつもの握手



ワンラブ・ワンラブ・ワンライト・ワンミルクティ



昨日の壁に寄りかかり



今日も俺は生きている



崩れたレンガ



踏み固められた土の道



地を這う植物



想像する新しい季節の訪れ



どんな花が咲くのだろう



くすんだカトマンズの空を鳥達が横切る



茶運び坊主の鼻歌



ミルクティを飲み干し思う



もう2カ月以上俺は雨を見ていない









感じ続ける引き潮



明るい午後の光



いつか辿り着く



永遠の青空



悪戯な幻影の落し物



ジミー・ヘンドリックスのブルースが聞きたい



空よりも高い山々



白銀の連なりの向こう側



黄金の草原でチベタンが歌っている



神への憧れが



宇宙に向かい手を差し伸べている



右回りで輪廻がスピンする



寝転んだノスタルジーの花畑



人間の営みは慎ましい自然の一部



他愛無き生活に込められた祈り



少し泣いた









冬が訪れる



なのに思うのは次の季節



産声をあげる命を数えながら



乾いたシャッフル・ビート



まだ見ぬおまえと次の春へゆきたい



めぐる宇宙は爆発する空想



あの日の明日は何処にあるんだ



さあ、もっと吸い込め



世界を吸い込め



さあ、もっと触われ



世界に触われ



中心に触われ



まっすぐに



おまえの人生に向かえ



受け取った贈り物は、いつか世界に返せ



降り注ぐトレモロ



季節は巡り



思いは律動を繰り返す



クィーカの音が聞きたい



三線の音が聞きたい



ああ、スティールパンの音が聞きたい



そう、俺はおまえの心臓の音が聞きたいんだ



魂の焦げる音が聞きたいんだ



おまえの中心で呼吸がしたいんだ



















夕暮れは悲しい



寂しさは懐かしき友



気難しく優しい友



季節は甘美に巡り



無関係に寄り添う



道は続く



立ち止まり



彼方の明日に思いを馳せ



落日に向かってゆっくりした一歩



終わらない徘徊



シンプルな言葉



愛しさの速度



嘆きの壁



迷いの門



無口な石畳



おまえの願いごと



引き潮



空を飛ぶ鳥たちの憧れ



変えられない河の流れ



台所から立ち上るゴスペル



両手からこぼれた思いを拾い集め



夕闇に差し出し



家路に向かう



インディゴ・ブルーの飲んだくれ



指先の香り



スローダウン



今日も陽炎の一日









古いロード・ムービーに迷い込んだような夜



引き潮が過ぎた時をぬぐい去ってゆく



バビロンがスイングしている



青白い光が徘徊する



ガンジャ?ハシシ?ガンジャ?ハシシ?



窓の外まで溢れた満月



深夜のチキンオムライス



犬の毛皮の三角帽子



はみ出したマークボランの子供たち



ルーム・ワン・オー・セブン



借り物のステップ



銀河へダイブ



黙ったままの木星



夜の底には眠らない魚たちが住んでいる



ダイスが転がる



満ちるのを待つ



風のごとく



炎のごとく



世界が満ちるのを待つ



水のごとく



魂のごとく



律動を繰り返す命の祝宴



やがて満ちてゆく



俺は世界で満ちてゆく



命にも



自由にも



生活にも



翼がある



俺は世界で満ちてゆく















           2005年12月04日 カトマンズ